第13話 失踪2
夕食を終え、自室に戻り一日を終えようとしている時だった。
フェイは女性が居なくなった事が気になった。
そして来た時に寝たきりになっていた女性がまだいるか気になった。
自室を出て、寝たきりになっていた女性の部屋に耳を当て、誰かいるか確かめる。
中は静かだ、誰もいないようだった。
フェイはドアを開けて部屋を覗いた。
中にはまだ女性はいる。
眠っているようだった。
女性がいる事を確かめると、フェイは救世院を歩き回った。
食堂、生業の間、書庫と一通り周り、聖堂を抜けた所だった。
救世院に来た時にイドニスと話した部屋に人がいる。
話し声が聞こえる。
フェイはそっと聞き耳を立てると声が聞こえてきた。
「あの女性ももう長くありませんでした。」
「そうですね、私も何度も確かめましたが致し方ありませんでした。」
「私達は【慈愛】を行ったのです。」
「彼女を無間の苦しみから楽にしてあげることができたのです。」
「マザー、私達も苦しいです。」
「そう、私達も苦しいけれど。
私達は苦しみを取る慈悲を与える慈愛を行ったのです。
苦しみは付き物だけど、耐えるしかありません。」
「そうですね、私達は彼女達を苦しみから救ってあげたんだ!」
「そうです、死ぬまで続く苦しみから解放してあげたのです。」
「マザー、今寝たきりの状態になっている女性も回復の見込みはありません。」
「そうですね、苦獄の生から救ってあげるのも私達の務め。
私も彼女の状態をよく見て見ます。
それから【慈愛】を施すか決めましょう。」
話を聞いていたフェイは疑問に思った。
あの女性?慈愛?解放してあげた?
ここにいる人は別院に行ったと言っていたはず。
苦しみから解放してあげた?
マザー達の行っている事に嫌な予感を覚えつつ、フェイは見つからないうちに自室に戻りノートに書き留めた。
いなくなった女性、慈愛を与えて苦しみから解放してあげたと言っていた。
あの女性はまだ救世院のどこかに?
フェイは不安を抱えながら眠れぬ夜を過ごした。
そして数日が過ぎた。
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