第12話 失踪

フェイは部屋に戻ると紙を開いて読んだ。


ケイからの手紙

「調子はどうだ?問題なくやっていけているか?


こちらの調べによると救世院に入っている人の数は意外と多いらしい。


その中の少なくない人数が消えてしまっているそうだ。


フェイ、お前も用心してくれ。


追伸-シルバは元気でやっているよ。

先日は果物を差し入れしておいた。

そちらは心配せずやってくれ。」


フェイは手紙を読むと、ロウソクの火を紙に着け、皿の上で燃やした。


死神の因果、か。


ここにいる人達は死神の因果に囚われた人達、死に呼ばれる、死に近い人達。


死神の因果を断ち切らなければ生き延びることは難しい。


失踪者が増えているのは死神の因果によるもの?


考え事をしているうちに夜は更け、いつの間にか眠りに着いていた。


そして翌日。


コンコン


ドアを叩く音でフェイは目が覚めた。


宮仕「もうじき朝礼が始まります、準備ができたら食堂までお越しください。」


宮仕に起こされるとフェイは朝の準備を済まし食堂に向かった。


食堂に着くといつもと同じくらいの人数が椅子に座っていた。


イドニス「みなさんおはようございます。


今日も新しい朝を迎えました。


新しい一日に感謝し、過ごすことができるよう祈りましょう。


辛い方、苦しい方は無理をなさらずに自分にできる方法で楽になる事をして下さい。


では今日を始めます。


皆様によい一日を。」


食堂の一堂「よい一日を。」


朝礼を終えると、各々が自分の生活を始めた。


フェイは荷物を取りに行くために1度自室に戻ろうとした。


自室に繋がる通路を歩いている時だった。


先日声を上げていた女性の部屋が空いている。


そこには女性の姿はなく、さっきまで居たような形跡と荷物を残すだけだった。


女性の部屋に宮仕がやってくると言った。


宮仕「おや、フェイさん、今日はどうお過ごしでしょうか。」


フェイ「ああ、私は…。」


言葉を詰まらせるとフェイは宮仕に聞いた。


フェイ「あの、先日の女性はどこに行ったのでしょうか?」


宮仕は少し間を置くと答えた。


宮仕「あの女性は、この救世院でお世話することが出来ませんので救世院の別院へと移動になりました。」


フェイ「別院、そういうものがあるのですね。」


宮仕「はい、重篤な方はそちらで過ごすこととなっておりますので。」


フェイ「そうなのですね。


先日の女性の事が心配になってしまって。


別院への移動という事だったのですね。」


宮仕は「はい」と答えると、女性の部屋を片付け始めた。


気になったフェイは以前いた人達が今もいるか確かめようと思った。


しかし、宮仕に見つかるとまずいので今日はそのまま生業をして過ごすことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る