第8話 救世院の生業2

宮仕「フェイさん、もし体調が優れるようであれば生業に参加してみてはいかがでしょう。


暇を持て余しても辛いものです。


ここでは生業を行うことで再び自分の生活が出来るようになる者もおります。


特にする事が見当たらないようであれば私が生業の案内をさせて頂きます。」


フェイ「それはありがたいです。是非やらせて下さい。」


宮仕「ではこちらへどうぞ。」


宮仕に連れられると生業の間へと向かった。


5人程が生業の準備をしている。


宮仕「ここではカゴや傘、木の彫刻や小物などを作って街の商店に出荷しております。


フェイさんは何かやってみたいものなどはおありでしょうか?」


フェイ「私は傘を作ってみたいです。」


宮仕「そうですか、ではこちらへおいで下さい。」


そう宮仕に連れられると傘の並ぶスペースに連れられた。


既に傘を作っている修養者がいる。


宮仕「こちらの女性はここで傘の組み立てを行っています。


ですのでフェイさんには今日は傘の張りをして頂きたいと思います。」


そう言うと宮仕は傘の骨組みに糊を塗って、皮を貼ってみせた。


宮仕「このようにしてやっていきます。


フェイさんも手に取りながらやってみましょう。」


フェイは傘の骨組みを手に取り、糊を塗って皮を貼って行った。


宮仕「そうそう、その調子です。出来たものはこちらで乾かして下さい。」


そう言われると傘を干す部屋に案内された。


そこには前の日に干した傘が置いてあった。


宮仕「こちらは完成した物です。これから街の商店に出荷致します。


これから干す物をこちらに下げてください。」


フェイは傘を壁の取っ手にかけると生業の間へと戻って行った。


傘の骨組みを作る女性は黙々と作業している。


手慣れた手つきで傘を組み立てて行った。


フェイ「手慣れていらっしゃいますね、傘作りはもう長いことなさっているのですか?」


少しの沈黙の後修養者の女性は答えた。


修養者の女性「はい…。」


女性は答えると、再び傘作りを始めた。


生業の間にいる人達はみんな黙々と作業をしている。


自分の作った物がお金になったり、作った物にやりがいを感じたり、満足感を得ているようだった。


各々が自分のペースで作業をしながら一日が過ぎていった。


フェイは救世院での一日の過ごし方を知りながら、修養者と呼ばれる人達の生活の一旦を垣間見た。


そこには苦しみ自分と向き合いながらも、現実と折り合いを付けていく人達の姿がそこにはあった。


そして日が暮れかけた頃、終業の鐘がなった。


チリンチリン


宮仕は手に持った鈴を鳴らした。


宮仕「皆様ご苦労様です。


今日の生業は終業となります。


キリのいいところまで出来たら手を休めてお休み下さい。


また夕食の頃になりましたら、食堂までお越しください。」


宮仕がそう告げると、修養者は各自自室などに戻って行った。


フェイも自室に戻って行った。


作業というのも意外と疲れるな、今夜はよく眠れるといいけど。


フェイは机に向かうと再び靴の中のノートに今日の出来事を記した。


そしてベッドで少し横になった。

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