第5話 世の救い

イドニス「ここには病に冒される者、迫害を受けた者、非道を受けた者、あなたのように事情を抱える者、様々な理由でこの世から追いやられた方々がたくさんいます。


フェイ、世の救いとはなんだと思いますか。」


フェイ「分からない、自分ではどうにもできない死の闇を覆すことができない。」


イドニス「そう、光の潰えた死の闇に落ちた。

ただ苦しみによって死に呼ばれる、死を待つだけとなった者達。

その者らの悔恨と無念はまた苦しみとなって彼等を襲う。


人はいつか死ぬ。でも光なき死の闇にも慈悲と僅かな光を持って添い遂げるのが私達。


それがこの暗き世を照らす私達なりの世の救いであり使命なのです。」


フェイ「マザー、俺もそう思う。死の闇に向かう人間に俺達は無力だ。

死ぬしか解決のない苦しみもある。


だけど生きている、受け入れられない死を抱えながら苦しんで生きているんだ。」


イドニス「そう、生きているうちには死の波はやってくる。


でもその波を超える力も持っている。


でも死の波にさらわれ溺れてしまったものもいる。


光も潰えて、襲い来る死の闇にせめてもの慈悲と希望を与える所、それがこの救世院です。」


フェイ「ああ、何となく分かったよ。」


イドニス「今日は来たばかりです。


荷物を整理したり落ち着いたら救世院の中を散策してみるといいでしょう。


ひとまずは部屋に戻っておやすみなさい。


困った事や分からない事があったら私や宮仕に聞くといいでしょう。」


フェイ「ああ、ありがとうマザー。そうするよ。」


そう言うとフェイは自室へと向かった。


整えられたベッドに座るとフェイはイドニスに言われた事を考えた。


動機は分かる、この救世院がどういう所なのかも。死苦を受けるものの最後の砦、か。


フェイは靴底の中からノートとペンを取り出し、救世院の教えとイドニスの考えを忘れないうちに書き記した。


バッグから荷物を取り出し整理するとフェイは少し横になった。

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