第4話 救世院の教え
部屋が並ぶ廊下を進むと、ひとつの部屋に入った。
イドニス「まずはあなたの部屋から。
あなたにはこの部屋で生活して頂きます。
荷物などおありでしょう、貴重品などはこちらの鍵付きの引き出しに入れて保管して下さい、これがその鍵になります。」
フェイは鍵を受け取り、荷物を部屋に置いた。
イドニス「では次に向かいましょう。」
そう言うと通路を進んだ。
イドニス「ここが書庫、街で買った図書の他に救世院が出版している書物もあります。本が読みたくなった時にはご利用下さい。」
更に通路を進んで行くと炊事場に着いた。
イドニス「ここは炊事場、救世院にいるみなさんの食事を作っています。
炊事の得意な修養者がみなさんの食事を考えて作ってくれています。」
そう言うとまた通路を進んだ。木のテーブルと椅子の並んだ広い空間に出た。人がまばらにくつろいでいる。
イドニス「ここは多目的室、ここで読書をしたり、話しをしたり、食事もこの部屋で行います。」
また少し通路を進むと、何かの作業をしている音が聞こえてきた。
イドニス「ここが生業の間、ここでカゴや傘、木彫りの彫刻など作って院を運営しています。
あなたにもしていただく事になりますので、自分に合ったものをしていくといいでしょう。」
イドニスは居室の方に向かった。
居室の扉を開けると、修養者と呼ばれる中の司祭が、寝たきりになっている修養者に水を飲ませていた。
痩せた寝たきりの女性は天井の方を見ながら時々何かを呟いている。
イドニス「ここにいるのは苦しみを背負う者ばかり、私達はここを訪れる方々の苦しみに寄り添い、添い遂げる事でこの暗き世の灯火になろうとしています。
私達が彼等彼女らの最後の救いとなるのです。
聖堂に向かいましょう。」
そういうとイドニスは聖堂に向かった。
イドニス「おかけ下さい。」
聖堂に着くと、フェイは祭壇の前の椅子に腰かけた。
イドニスは話し始めた。
イドニス「この救世院の背負った使命は人の世を救う行いをすること。
この世は暗い。
苦しみ弱った人間を救う者はいません。
光の潰えた、無間の闇に生きる者たち。
彼ら彼女らの苦しみと嘆きを、少しでも楽にする慈悲を与える事でこの世界の苦しみを背負い、僅かな光となろうとしています。
この救世院で生活をしている内に自分と光を見つけここから出てゆく者もいます。
しかし、1度落ちた闇から這い上がるのは難しい。絶望の闇の中で苦しみを味わいながら暮らしている者も少なくありません。
私達はその絶望の無間の闇に生きる者達と寄り添い、慈悲と共に僅かな希望の光となろうとする者、それが救世院に仕える宮仕なのです。
あなたもこの救世院を必要とした者。
世の闇に光を奪われても、ここにいる間に僅かな灯火かもしれませんが、希望の光を見つけられるといいですね。」
フェイ「ありがとうございます。ここでは院長の事はなんと呼べば?」
イドニス「ここにいる者たちは私の事を愛称を込めてマザーと呼びます。
あなたもそれで呼んで頂いて構いませんよ、フェイ。」
フェイ「分かった、ありがとうマザー。落ち着ける状況にはないけど自分に出来ることをやってみるよ。」
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