スクナビコナとろくろ首②―クエビコの秘策!“悪事を働くものたち”にどう立ち向かうつもりなのか?―
『…ねえ、スクナ。お腹すかない?僕、馬に変わる前に団子を食べて以来何も食べてないんだ……』
チュルヒコはクエビコの元に向かう道すがら、歩きながらポツリと漏らす。
「…ああ、僕もここ数日何も食べてないぞ……」
スクナビコナもチュルヒコの言葉に、歩きながら応じる。
『…着いたね……』
そうこう話をしながら一人と一匹が歩いているうちに、クエビコの姿が見える場所までたどり着く。
「…実はなあ、チュルヒコ。僕がクエビコ様の元に行きたかったのは、あいつらを倒す相談をする以外にも、もう一つ大事な目的があるんだ」
スクナビコナは立ち止まって遠くクエビコのほうを見ながら言う。
『…もう一つの目的って何?』
「…じきにわかるさ……」
スクナビコナはチュルヒコの質問をはぐらかしつつ、一人クエビコのほうに向かって歩いていく。
『…あっ、待ってよ!』
そんなスクナビコナのあとをチュルヒコは慌てて追う。
「…クエビコ様、また来たよ」
『お久しぶりです。クエビコ様』
スクナビコナとチュルヒコは揃ってクエビコにあいさつする。
『おお、チュルヒコ無事だったか』
『はい、スクナに助けてもらいました』
『そうか、そうか。それは何より……』
クエビコもチュルヒコが元気に自分に会いに来たことを喜ぶ。
『…ところでわざわざこのクエビコの元まで訪ねてきたからには何か用事があるのではないのか?』
「…うん、そのことなんだけど……」
スクナビコナは少し言いにくそうに話を切り出す。
『…なんじゃ?言いたいことがあるならはっきり言わんか』
「…実はまた〝それ〟が欲しいんだけど……」
そう言いながら、スクナビコナはクエビコの〝足もと〟を見る。そこには例によってクエビコに供えられているおにぎりが三つ。
『…また欲しいのか……?』
スクナビコナの言葉にクエビコは呆れ返りながら言う。
「うん、そうなんだ!実はまたここ二、三日、チュルヒコともども何も食べてないんだ!だからクエビコ様、頼むよ!僕たちにおにぎりを食べさしてよ!」
スクナビコナはクエビコに対して両手を合わせながら頭を下げて拝み倒す。
『クエビコ様!僕からもお願いするよ!もう腹ペコで死にそうなんだ!』
スクナビコナに続いて、チュルヒコも必死にクエビコに頭を下げる。
『…ふう、…しょうがないのう…。…いいじゃろう……』
クエビコはすっかり呆れ果てながらも、おにぎりを食べることを認める。
「やったー!クエビコ様、ありがとう!このお礼は倍返しで、いや十倍返しで必ずするよ!」
そう言うやいなや、スクナビコナはおにぎりに近づいて食べようとする。
『あっ、ずるい!僕も!』
スクナビコナに続いて、チュルヒコもおにぎりに近づく。
そして一人と一匹はあっという間に三つのおにぎりを平らげてしまうのだった。
「…ぷはーっ、久しぶりにまともなごはんを食べたよ!」
『うん、僕も!』
スクナビコナとチュルヒコはそれぞれ一つと半分のおにぎりを食べて満足する。
『…ふん、〝埋め合わせ〟のことはちゃんとおぼえておくからな』
「わかってるって。後で必ずおにぎりをいっぱい供えるよ!」
『…うむ、ところでまだ何かあるのではないか?まさかおにぎりを食べるためだけにここに来たわけでもあるまい』
「うん、そのことなんだけど……」
スクナビコナはチュルヒコとともに体験した、ここに来るまでに起こった出来事の一部始終をクエビコに語って聞かせる。
『…ふうむ、このクエビコがおぬしたちに言った〝悪事を働くものたち〟は相当な強敵のようじゃな……』
「うん、あいつらは一筋縄じゃいかないやつらだよ。だからクエビコ様に相談しに来たんだ。どうやったらあいつらを倒せるのかを……」
『…そうか…、おそらくあの者たちは普通の人間ではあるまい。妖怪のたぐいじゃろうな……』
「…ヨウカイ…?やっぱりまともなやつらじゃなかったか……」
スクナビコナはクエビコの言葉に深く納得する。
『…ふむ、このクエビコがあの者たちの弱点を割り出してみるとしよう……』
「うん、お願いするよ」
『…それでは、…アアアアアアアアアアーッ!』
クエビコは激しく体を揺らしながら〝交信〟を始める。
『…ムウウウウウウウウウーッ!…わかったあ!』
クエビコは何かを〝理解〟したときの叫び声を上げる。
「…わかったんだね……?」
『…うむ、…まずはあの者たちが何者かじゃが……』
クエビコはゆっくりと話を始める。
『…あの者たちの正体は妖怪の一種、ろくろ首じゃ』
「ろくろ首?」
『うむ、ろくろ首とはな……』
このあとスクナビコナとチュルヒコはろくろ首の特徴と弱点についてクエビコから詳しく説明を受ける。そしてそのうえでろくろ首とどうやって戦うかについて話し合うのだった。
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