スクナビコナとおむすびころりん⑥―スクナビコナとアマノジャクついに出会う!切っても切れない腐れ縁の始まり!!―

「ふう、やっと着いたぞ」

『みんな大丈夫かな……』


 アマノジャクたちを追うスクナビコナとチュルヒコは、ようやくネズミの穴の入り口へとたどり着く。


「さあ、早く中に入ろうぜ」

『うん、…って、うわーっ!』

「なっ!」

「ギャーッ!」

『ギョエーッ!』


 スクナビコナとチュルヒコが穴の中に入ろうとしたとき、突然見知らぬ一人の小鬼と一匹のネズミが中から飛び出してくる。


「な…、なんだお前ら!」

「それはこっちのセリフだ!」


 その全く予期せぬ出会いは双方を驚かせる。


「…ひょっとしてお前ら…、アマノジャクとドブヒコか!」

『そうか、こいつらが、クエビコ様が言っていた……』

「ふん、その通りだ!俺の名はアマノジャク!この辺りを縄張りにしている小鬼だ!」

『俺の名はドブヒコ!アマノジャク一の子分のドブネズミよ!』

「お前たち!なんでさっきこの穴から出てきた!」

『そうだよ!もしお前たちがネズミたちに変なことをしてたら承知しないぞ!』


 スクナビコナたちとアマノジャクたちはたちまち険悪な雰囲気になる。


「俺がネズミたちに…、ハンッ!」

「しらばくれる気か!」

「しらばくれる?俺が?言っておくがな……」


 アマノジャクはその言葉に怒りを込めながら言う。


「俺は〝カガイシャ〟じゃない、〝ヒガイシャ〟だ!」


 アマノジャクが叫んだ言葉の内容に意表を突かれたスクナビコナとチュルヒコはあ然とする。


『全くその通りですぜ!ちなみに俺は〝ヒガイシャ〟ではなく〝ヒガイネズミ〟ですぜ!』


 アマノジャクに続いてドブヒコも自分は被害を受けた側だと主張する。


「…えっと、…つまりお前たちはネズミをやっつけた側ではなく、むしろやっつけられた側だってことか……?」

「その通りだ!」

『その通りですぜ!』


 スクナビコナの言葉をアマノジャクとドブヒコは異口同音に肯定する。


「…そ、そうか……」

「もっとも俺たちがこんな目にあったのは全部お前たちのせいだけどな!」

『全くその通りですぜ!』

「…僕たちのせい?」

『…なんで?』


 スクナビコナもチュルヒコもアマノジャクたちの言おうとしていることの意味がわからず、呆然とする。


「とぼけるな!俺たちがこんなに酷い目にあったのはこっちがお前たちのやり方をまねたからだ!」

『その通りですぜ!お前たちは俺たちがわざと失敗するように罠にはめたんだ!』

 アマノジャクたちはスクナビコナたちに怒りをぶちまける。

「…なあ、チュルヒコ。お前にはこいつらが何を言いたいのか意味がわかるか?」

『…いいや、わからない……』


 スクナビコナもチュルヒコもアマノジャクたちの言葉にただただあ然とすることしかできない。


「ふん、どうやらお前たちはあまりにも頭が悪すぎてこちらの話が通じないみたいだな」

『まったくだ、こんなバカどもとこれ以上話をするのは時間の無駄ですぜ』


 アマノジャクとチュルヒコは自分たちの話が通じないことをスクナビコナたちのせいにする。


「いいか、お前たち。このアマノジャク、この身に受けた恨みと屈辱は永遠に忘れん!必ず復讐してやるからおぼえておけ!」

『ですぜ!』


 アマノジャクたちはスクナビコナたちに捨てゼリフを吐くと、すさまじい速さでこの場から走り去る。


「…なんか僕たち、自分たちでもわからないうちに恨みを買っちゃったみたいだぞ」


 スクナビコナは去っていくアマノジャクたちを見送ったあと、つぶやくように言う。


『…そうだね。っていうかそもそも僕たちここにわざわざ急いで来る必要もなかったよね』

「ああ、でもせっかくここまで来たんだからネズミたちに会っていこうぜ。今の僕たちにはまだ住む場所もないから、できればここに住ませてもらえると嬉しいしな」

『うん、確かにそうだ。ハツカさんにそう頼んでみようよ』

「よし、じゃあ決まりだ。さあ、ハツカ殿たちの元へ行くぞ」

『わかった』


 こうしてスクナビコナとチュルヒコは穴の中のハツカノミコトの元へと向かう。

 そして彼から穴の中に一室を与えられ、そこに住むことを認められるのだった。

 なお、アマノジャクたちによって盗まれたおむすびはクエビコの心づかいによって、結局ネズミたちの食料になったとのことである。

 めでたし、めでたし。

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