スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―
スクナビコナとおむすびころりん⑤―アマノジャクよ!お前にははっきりと言っておく!!おにぎりは蹴る物じゃない、食べるものだっ!!!―
スクナビコナとおむすびころりん⑤―アマノジャクよ!お前にははっきりと言っておく!!おにぎりは蹴る物じゃない、食べるものだっ!!!―
『クックックックッ、アマノジャク様、着きましたぜ』
「フッハッハッハッ、いよいよネズミどもがこのアマノジャク様にひれ伏すときが来たというわけだ」
アマノジャクとドブヒコはネズミの穴を目の前にして高笑いする。
「さあ、ドブヒコよ、計画通りにやるぞ!」
『へい!』
そう言うと、アマノジャクは穴の手前に持っていたおにぎりを置き、そのおにぎりからいくらか距離を置いて立つ。
「まずはこのおにぎりをシバキ倒してやる!」
そう叫ぶと、アマノジャクはおにぎりに向かって走り出す。
「くそがああああああーっ!」
そしておにぎりに対してこん身の蹴りを入れる。アマノジャクに〝攻撃〟されたおにぎりは穴の中へと転がっていく。
『それではアマノジャク様、お先に!』
そんなおにぎりに続いてドブヒコも穴の中へと飛び込み、そのまま転がっていくのだった。
『チューッ!』
『やったー!』
『またおむすびが転がってきた!』
『ネズミタケル様からかな?』
穴の奥ではネズミたちが歓声を上げて、昨日に続いておにぎりが落ちてきたことを歓迎している。
『ヒャッハーッ、俺もやってきたぜ!』
おにぎりの次にはドブヒコが叫びながら落ちてくる。
『おい、お前ら、こっちに注目しろ!』
ドブヒコはやってきて早々に極めて高圧的な態度で怒鳴る。その姿を見て、それまで喜んでいたネズミたちはざわつきながらドブヒコのほうを見る。
『ハツカノミコトはいるか?』
『はい、ここにおりますが』
『クックッ、こっちはお前とさっさと話をつけたいんだ』
『なんでございましょう?』
ドブヒコは相変わらずの横柄な態度でハツカノミコトと話をつけようとする。
『クックックッ、さっきお前らの下に落ちてきたおにぎりはアマノジャク様と俺からの贈り物だ!』
『そうでしたか、それはありがとうございます』
『ククッ、しかし何も俺たちはただでお前たちにおにぎりをくれてやろうってんじゃないぜ。当然俺たちにそれなりの〝お礼〟をしてもらわなきゃ割に合わないってもんだ』
『お礼ですか?…しかし残念ながら我々にはあなた方のご期待に添えるようなものは何も……』
『とぼけてんじゃねえよ!』
ドブヒコはハツカノミコトに対してはなはだ偉そうにすごむ。
『俺は知ってるんだぜ!お前たちは昨日おにぎりをここに落としたスクナたちをずいぶんと歓迎したじゃねえか。言っておくが俺たちはあいつらよりも強さも賢さも圧倒的に上だぜ!だからお前たちは俺たちにスクナたちにした以上の〝お礼〟をするのが当然ってもんだ!』
このドブヒコの言葉を聞いたとき、これまで怒りたいのを我慢しながら話を聞いていたネズミたちの怒りがついに爆発する。
『いい加減にしろ!』
『なんて傲慢なヤツなんだ!』
『ハツカ様、こんなやつの言うことを聞く必要はありませんよ!』
『我々には〝ネズミタケル〟様がついてるんだ!』
『黙れ、ネズミども!』
ドブヒコは口々に怒号を浴びせる周囲のネズミたちを強引に沈黙させる。
『俺たちにあくまでなんの〝お礼〟もしないって言うんなら、こっちにだって〝考え〟があるぜ!』
ついにドブヒコの言葉はネズミたちへの〝脅し〟を含んだものに変わる。
『…な、何をするつもりだ!』
『クックックックッ、実は〝お前たちがこの世で一番恐れている怪物〟がこの穴の上には控えているんだ!』
『か、怪物だと!』
『怪物ってなんだ!』
ドブヒコの言葉を聞いてネズミたちはにわかに緊張する。
『ククッ、これからお前たちは〝怪物〟のおかげで全てを失うんだ!〝怪物〟は今からこの穴の中でめちゃくちゃに暴れまわり全てを破壊することだろう!お前たちは全てを失うって訳だ!』
『なんだと!』
『か、怪物ってそんなに凶暴なヤツなのか?』
ネズミたちはドブヒコの言葉におびえ始める。
『クックックッ、今さら許してもらおうったってそうはいかないぞ!俺たちに〝お礼〟をしなかったことを一生後悔しろ!さあ、怪物よ、出番だっ!』
このドブヒコの言葉と同時に穴の上から何ものかが猛然と駆け下りてくる。
『ニャオーッ!』
その〝怪物〟はネズミたちがよく知っている天敵の鳴き声を発する。
『チューッ!』
『ウワーッ!』
『ネコだーっ!』
『逃げろーっ!』
その声を聞いてネズミたちは完全に恐慌をきたす。
『ニャーゴーッ!ニャーオーッ!』
駆け下りてきた〝怪物〟は穴の中を駆け回りながら鳴きわめく。
『落ち着かんか、皆のもの!〝怪物〟の方をよく見よ!』
大声で怒鳴るハツカノミコトの声を聞いたネズミたちは一斉に〝怪物〟の鳴き声がするほうを見る。
『あっ!』
『あいつはネコじゃないぞ!』
『あっ、本当だ!』
『みんなもよく見てみろ!』
〝怪物〟を見たネズミたちは全員その正体に気づく。
「ゲッ、ばれた!」
『エッ、マジで!』
『なんだ、こいつアマノジャクだぞ!』
『お前がネコの鳴きまねをしてたのか!』
『お前たちの悪い評判はこっちまで届いているぞ!』
『せっかく昨日は〝ネズミタケル〟様たちといっしょにごちそうをしてやったのに』
『恩を仇で返すつもりか!』
ネズミたちは〝ネコ〟の正体がアマノジャクであることがはっきりわかると、ドブヒコともども完全に包囲してしまう。
「あ、あわわわわ…。な、なんだ!ネズミごときに何ができる!」
『…ア、…アマノジャク様!話が違いやすぜ!』
今度はすっかり取り囲まれたアマノジャクがドブヒコとともに慌てる番である。
『さあ、皆のもの!この不届きものどもをこの穴から追い出せ!』
『チューッ!』
『かかれーっ!』
『行けーっ!』
ハツカノミコトの号令とともに、ネズミたちが次々とアマノジャクとドブヒコに向かって飛びかかっていく。
「グワワワワーッ!」
『ゲゲーッ!』
こうしてアマノジャクとドブヒコはネズミたちによって見事に〝退治〟されてしまうのだった。
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