第24話「王都局地戦、開戦」

 深夜だと思う。僕はスヤスヤと寝ているが、なんだか苦しい。

 苦しい、苦しい。これが金縛りか? うーん。はっ。目が覚めた。

 うわっ! ピンク猫が上に乗ってる。

 も~。今は夜だよ。

アバター化身具現を出せるであるか?』

 今からあ? 僕寝てるから。

 まだ頭は寝ぼけていた。でも、この猫って重いの?

『重さを具現したのである。王都が大規模進行を受けている。深夜ゆえ騎士団の動きが鈍いである』

 なんだって!

 目が覚めた。

『教団聖女連のほとんどは現在地方なのである』

 それは初めて聞くけど、聖女の集まりかな? いや、それは後回し。今はアバター化身具現だ。出せるか?

「うえーー」っとーー。

 白い液体が口からほとばしる。完了!

「ばふばふーっ!」アバターッ!

 渾身の魔力が黒騎士に具現化した。子猫が肩に乗る。よし、出動っ!

 僕アバター化身具現はそのまま壁を通り抜けから垂直に上昇した。空の上からは、遠くの森にいくつかの閃光が見える。

 あそこかっ!

『私が誘導するである。戦闘は複数カ所。優先順位から処理していく。まずは右である』

 了解。

 言われるままに全速力で飛ぶ。

『一体の魔獣が街壁を越え、街中に侵入している。まずはそれを叩くである』

 まずいじゃん……。王政は何をやっているんだっ!

 そう、気安く批判してみた。お父さんの苦労が忍ばれるけど(たぶん誤用です)。


 貴族街を抜け、壁の向こうの庶民街、広い通りにその魔獣がいた。

 大型の四つ足で変なライオンみたいな姿。しっぽが三本あり、それぞれ蛇のような口がついている。後から攻撃にも対処できるように不気味進化をした魔獣だ。

 これはゲーム等でよく見掛ける獅子蟻の変形。ミルメコレオ?

 十数人の兵士が槍を持って取り囲んでいる。騎士ふうの人は誰もいない。

 よかった。これで邪魔されないなあ。でもなんだかなあ。魔獣よりもバカ騎士出現を心配するなんて。

 お父さんの仕事関係では、揉めたくないんだよね。時間がない。さくっと退治しちゃうよ。

 直上まで飛んで垂直降下。そのまま上段から切り付け地面に着地。

 哀れ魔獣は真っ二つだ。

 剣を水平に振って、ギャラリーを見てからわざとらしく鞘に納める。僕なりにポーズを決めた。

 どうかな?

 周囲の兵士たちは槍を構えたまま、あっけにとられてこちらを見ているだけだ。こんな時間にもかかわらず、騒ぎに飛び起きた野次馬たちも大勢こちらを見ていた。しかし――。

 拍手や歓声がないね。残念……。

『そんなことは後回しである。次に行くである』

 はいはい……。

 もう一度上空まで飛ぶ。

『そのまま真っすぐ森へ向かうである』

 はいはい。了解、了解……。

 称賛がないとモチベも今一つである。

 街壁のすぐ外。森の中が点滅していた。誰かがハデに魔力を撃っている。

『もっと先に降りるである』

 えーっ……。また仲間割れと思われちゃう。

 このまま進めば群のど真ん中。そこで戦うのは悪くないけどさ。乱戦は楽しいし。

 でも騎士や兵士に攻撃力されるのはなあ。

『そんな心配は後回しで頼むである。上空で【照明光球】を作るである。手のひらを広げ、光をイメージして魔力をためる感じである』

 できるかなあ。でも、できるか。現代兵器の照明弾だな。

 それをイメージした。言われたとおりにすると、小さいけど強烈な明かりの魂ができた。それを森の上に投げる。木々のあいだに脅威が照らし出された。

 へー。狼の群れか。

 小型中型ばかりだけど、とにかく数が多い。そいつらが威嚇するように口を開くと。次々に魔力弾が発射される。

 兵も騎士たちも善戦しているようだけど……。よーしっ、降下!

 その群のまっただ中。敵中に暗黒降臨っ!

 ふふっ、天空が呼んだ。大地が呼び寄せた。人々の涙が、この僕の助けを――。

『早く戦うである』

 ちぇっ! じゃあ――。

 細く長く、細く速く。それをイメージしながら右に左へ後へと素早く体を滑らせる。そのまま、じりじりと群を攪乱した。魔獣たちはパニックになり、狙いもなく魔力弾を乱射。同士討ちが始まる。

 やっぱり動物は、動物なんだな。

 剣を抜いて切っては引き、肉薄しては切る。バッタバッタと群を討伐する。

 すごいなあ、僕って強い。しかし……。順調かと思ったが、厄介な連中が急接近してきた。騎士たちだ。

「デビルフェンリルだけを狙うんだ。あの黒騎士は無視しろ。味方だ」

「「「はっ!」」」

 団長みたいな人と、それなりの騎士数名に若手は少し。命令すると全員が一斉に動く。

 今度はちゃんとした騎士さんが来てくれて良かった。

 僕のことも分かってくれてるみたい。

『また一体侵入した。脅威である』

 忙しいなあ。

 けっこう倒したし、ここは彼らに任せて王都に戻るか。

 僕は再び飛ぶ。森のあちこちに光が見えた。ヤバいじゃん。

『真っ直ぐである。急げよ』

 よーし、トップスピードで行くぞっ!

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