第23話「化身具現の戦い」
魔力の体調を気にしながら、時々は夜遊びに繰り出した。空を飛びながら森の中に降りたりして、剣の使い方を学ぶ。練習、練習。
腰の剣を抜いて構える。そして何度か振る。ピンクの猫は少し離れたところに座り僕を見守った。
ん?
体にピリピリと走る、この感覚は何?
振り返るとピンク猫は、周囲に首を振ってから空を見上げた。
『魔導反応を感じたのか?』
これが?
『そう。近くで魔力戦闘が起こっている。それもかなりの規模であるな』
行ってみよう。
『あまり目立つような行動はとるべきでないが』
それはそうなんだけどさ。
僕は好奇心旺盛な中二なんだし、少しは考慮して欲しいなあ。
『まあ、勉強ではあるな』
飛び上がりホースを細く絞る。スキル【魔導飛行】。魔力は力。魔導は使う型、との意味合いみたいだ。
森の先に点滅する光が見えた。
よーしっ。暗黒騎士の強さ。試させてもらうぞ。
魔獣発見。相手はたかが一体。対する人間側は兵隊十数に騎士ふうが二名。
まあまあの苦戦、って感じかな?
ここは颯爽と
僕は間に降り立ち割って入る。
「おわっ!」
いきなり後ろから攻撃を受け前につんのめる。相手は人間勢力だった。
「新たな敵だ!」
「魔人だと?」
「攻撃だ」
ち、ちゅっとちょと――。
バリバリ魔力攻撃を加えられる。これじゃまるで魔獣の前衛だ、ピンク猫は木の上に避難してこっちを見下ろしている。
自分だけ逃げた~? しゃーないな。止めんかっ!
剣一閃で攻撃全てを薙ぎ払う。兵士たちはビビって腰が引けた。引け引けいっ! 僕は強いよ。悪いけど。
「ええいっ。怯むなっ!」
「攻撃の手を緩めるな!」
新人っぽい若い騎士二人が後方で気合いを入れる。
いやいや。あなたがたが立場上前に出るんでしょ。ほら、来なさいよ。カモ~ン!
「うわっ! とっと……」
またまた後ろから攻撃された。振り返ると。魔獣の両手からは凶悪な五本爪が伸びている。腕の長いゴリラと狼が合体したような魔獣だ。
たいして圧は感じないけど、連続爪攻撃に防戦一方となる。後ろから攻撃される心配があるからだ。
「あれ――」
「味方なのか?」
「やられているぞ」
敵の敵は味方。兵士たちは状況に戸惑いながらも、僕を味方だと思い始めてくれた。
「ヤツら仲間割れを始めたぞ」
「こちらも攻撃だっ。殲滅せよ!」
この、おバカ騎士め。状況把握って知らないの? くそーっ。いい加減に――、しやがれっ!
怒りの剣一閃。魔獣の胴は真っ二つ。ついでに木も数本ぶっ倒れた。
やったー。すごい攻撃だ。でも……
「あの黒いのも敵なのか?」
「さっ、さあ……」
兵士たちは動揺して謎の僕を味方と思い始めてくれたが――。
「敵に決まっている」
「もうすぐ応援が来る。何とか足止めするんだ!」
あらら、だめだなあ。騎士の質が悪すぎる。最初に間違って敵認定したら、何が起こってもずっと敵なの? こりゃ、逃げるが勝ちだな。
とりあえず兵士や騎士とは反対の方向へ向け、森の中をひたすら走る。
うしろの気配から察するに、彼らもどうやら追いかけて来ているようだ。距離が離れたので空に飛びあがる。とりあえず木々をかすめるように低空飛行しながら、王都へ向かって飛んだ。
けっこう街の近くで戦ったりしているのか……。
『夜の森は危険である。街壁に迫っているゆえ、討って出ている』
つまり危機だと?
『魔獣の脅威には波がある。対処が必要であるが……』
「まだ見極めには時間がかかるかあ……」
それにしても人間の騎士や兵士に追い回され逃げるなんて、これってキャラ立てとしてどうなの?
あーあ。ヒーローからは程遠いよなあ……。
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