第15話「貴族のスキル」
使用人たちの話しぶり、来客やら周囲を見れば僕にもこの家の状況が大体分かってきた。
お父さんは王政の高官で、お母さんが屋敷に留まり領地経営等の采配を振るっている。
こんな家、こんな親たちを見ていると僕もいずれ何かを目指さなければならないのだ、と思う。
我が家はブラウエル一等伯爵家。王都ハウゼン街壁内にも領地を持つ、名門中の名門貴族なのだ。
上には上級貴族と呼ばれる公爵、侯爵、伯爵、辺境伯があるが、それほど家は多くない。それぞれ一等から三等まで存在する。
下には下級と呼ばれる子爵、男爵、準男爵とあり、この階級がほとんどの貴族をしめている。ここにも一等から三等までの順位がある。
そして毎日見上げている天井の絵。あの壁にかけられていた絵の冒険者たち。
お父さんの赤ちゃん教育がうまくいっているようだ。僕は当面の課題をがんばるしかない。
スキル【つかまり立ち】。椅子の足を両手でつかみ、そして上半身を無理矢理引き起こす。片足を立て、渾身の力を込めた。
あっ……。
ばったりと後ろに倒れてしまう。失敗だ。
大の字になった赤ちゃんの体が勝手に反応し、僕はギャンギャンと泣き始めてしまった。これもまたいつもの仕事みたいなもんだね。
上で魔方陣が回り、すぐにメイドさんがやって来るはずだ。仕事を増やしちゃったなあ……。
でも僕は泣くのが仕事なんだ。
天気の良い日などは、庭でベビーベッドに乗せられる。その傍では母親が書類とにらめっこしていた。
産まれたばかりの時から分かってはいたが、やっぱり我が家は相当な金持ちだ。屋敷は貴族街の中にあっても、かなりの大邸宅。執事、メイドさんや使用人も本当に相当数いるんだ。。
お母さんはお父さんに代わり、領地経営などを頑張っているようだ。見ている限り才能もあるみたい。なかなかの商売人だ。
実家で貧乏暮らしをしてたから、かな?
今日のお客さんは、我がブラウエル家が昔から懇意にしているクラッセン商会の人だ。
「街道沿いに魔獣が出没しております。輸送日数がかかり、少々経費もかさんでおりますね」
「仕方ないわ。長い目で見れば波のある話だし」
「備蓄もありますので、価格はある程度は抑えられます」
「街道の各拠点に、詰める者を増やすそうです。広範囲の警備へと移りますから、そちらの護衛も楽になるでしょう」
「各領地の貴族様たちも、警備のクエストを増やしております。そのうちに掃討されるかと……」
「イレギュラーが出なければいいのですけれどね」
「はい」
「騎士団も待機扱いに入りましたから」
「それは心強い」
何やら雲行きが怪しくなってきた。元いた世界で言えば自然災害のような感じかな?
魔獣が出る出ないは、経済状況にもずいぶん影響与えるようだ。
何もできない赤ん坊としては、ただ歯がゆいばかりです。この世界の冒険者たちは一体何をやっているんだ。話にならんっ!
僕が行けば――。
「ただ心配があります。魔獣の動きが捕捉できないのですよ」
「それはおかしいわよね。冒険者ギルドはそれなりの手練を派遣してると思うけど?」
「どうやら裏をかかれているようです……」
「
「上級貴族様の姿が見え隠れしますな」
「まったく……」
二人は色々とこれからどう対処するか、など話し合う。僕が行けば簡単にやっつけてやるのになあ。
お母さんが話してる相手、クラッセン商会の商売
「主人にも伝えておくわ」
さて、これもまた戦いだ。魔獣もいれば貴族もいる。
僕は空を見ていた。
陰謀の匂いがプンプンするぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます