かつあげ
翌日も朝からいっぱいモンスターを倒していった。
オークからついに武器をドロップ。
質素な作りの手斧だ。
スキルストーンを1つセット出来る。
これでどれぐらいの値段でチェック売れるのかな?
徐々に上に戻りながらモンスターを倒して行く。昼ごはんはコンビニで買ったお弁当。
昨日の昼と夜もコンビニ弁当だった。
ちょっと栄養バランスは気になるかな。
なにせ育ち盛りだからね。
順調にダンジョンを戻っていった。
今日はもう1つスキルストーンを手に入れた。
『ストーンパレット 使用回数5』
5回使うと壊れてしまうようだ。
これは売却かな。
おそらく岩をぶつける魔法だろうけど、あまり使い道はなさそうだ。
そして地下3階で事件が起きた。
地下3階まで戻るとダイバーが多くなる。
僕にとってはなんのメリットも無いので、さっさと通過しようとしていたら、
10人程度の集団に道をふさがれた。
全員若い。
20歳にはなってなさそうな感じ。
「良さそうな武器持ってんじゃん。
ちょっと貸してよ。」
金髪の大柄の男がニヤニヤしながら言ってきた。
「大事な剣なんだ。
貸せないよ。」
「俺たちが有効活用してやるって言ってんだから、さっさと差し出せよ!」
手に持つこん棒を見せつけながら威圧してくる。
いやいや、素人が睨んできても、なんの恐怖もないよ。たかがこん棒だし。ウィリアム騎士団たちの威圧感に比べれば、ゼロに等しい。
「悪いけど、早くダンジョンから出たいんだ。他をあたってよ。」
僕は無視して歩きだす。
すると、
「テメェ!
なめてんのか!」
いきなり武器を貸せって言う方がなめてると思うよ。
仲間の1人が僕の肩を掴もうとしてきたので、さっとかわす。
「なめんなよ!」
全員で襲いかかってこようとした時、
「何をしている!」
遠くから大声が響いた。
「ヤベ、プロダイバーだ。」
「クソッ!」
「行くぞ!」
集団が逃げ出した。
そして代わりに先ほどの声の主がやってきた。6人のグループ。
ヘッドギアみたいなのを装着し、体にもプロテクターを装備している。
さっきの若者グループとは装備の本気度が全然違う。
先頭を歩く40歳を少し過ぎたぐらいのおじさんが声をかけてきた。
「大丈夫か?」
「ありがとうございます。
何も取られていません。」
「気をつけろよ。
地下3階ぐらいまで降りると周囲の目が減ってくるからな。
犯罪行為を行うような連中も少なからずいるんだ。」
「ご忠告ありがとうございます。」
「ダンジョンには1人じゃなく、グループで入るようにしなさい。
ああいう連中もそうだし、モンスターを相手にしていても不測の事態というのは起こる。
常にチームでカバーするようにしないと、下手をすれば死にかねないぞ。」
正論です。
でも僕には人に見せられない物が多いから、簡単にチームは組めない。
下手をすると逆に危険になっちゃうからね。
「すいません。」
「まぁ、色々事情もあるだろう。
シングルでダイブするなら地下2階までにしておくのがオススメだな。」
「ありがとうございます。
気をつけます。」
「これからダンジョンから出るのか?」
「そうです。」
「なら私たちについてきなさい。
さっきの連中が戻ってくるかもしれないからね。」
このおじさん、凄く親切です。
むげにも出来ないし、一緒に出口まで行くことにした。
おじさんの名前は『タムラ』さん。
プロダイバー企業『鮫洲潜行株式会社』という会社の社長だった。
零細企業で今いる6人が所属しているプロダイバー全員だそうだ。
タムラさんの奥さんが事務仕事を受け持っているらしい。
せっかくなのでプロダイバーについて質問してみた。
「なんだ、レックスも興味あるのか。
ダイバーは人気らしいからな。
大手はもっと大所帯で動いてるけど、うちみたいな零細はこんなもんだ。
依頼の有無や高値がつく素材とかによって潜る階は変わるけど、だいたい地下20~30階ぐらいが主戦場だな。
大手は地下40~50階前後で戦っているな。
間を中堅企業が埋めている感じだ。
うちだと普通のサラリーマン程度の収入だが、大手のトップチームなら、年収数千万とか、億に届く連中もいるらしい。
夢はあるわな。」
「タムラさんたちはもっと深く潜らないんですか?」
「ダイバーの基準は
『怪我をしないで戻ってこられる階』
が適正階層と考えられている。
大怪我したり、死んだりしたら、どんだけ稼いでも意味無いからな。
毎年多数のダイバーが亡くなっている。
プロは生きて戻ってこそプロだ。」
「なるほど。
勉強になります。」
「まぁ、夜間の見張りを順番にやらないとダメだからな。
後ろに寝ている人間がいて、
半分の人間で安全に守れる。
それをクリア出来ない階層には行かないね。」
やっぱり夜はかなり足かせになるらしい。
「さて、そろそろ外だ。
もしプロダイバーになりたいなら、うちの事務所に来な。
しっかり鍛えてやるからな。
じゃあ、縁があったらまた会おう。」
タムラさんたちと手を振って別れた。
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