褒められるのは
一学期の成績はクレイとレックスのワンツーフィニッシュ。3位とは開きがあった。
さすがはドラクロア家。
ドラクロアに敵無し。
そして、、、
「さすがはウィリアム=ドラクロア様。
あの出来損ないのレックスをここまで成長させるとは!」
「ウィリアム=ドラクロア様の秘術でレックスが強くなったらしいぞ。」
「ウィリアム=ドラクロア様にかかれば、誰でも優秀な成績を残せるようになるらしい。」
学校ではそんな話が真しやかに語られていた。
褒め称えられるのはおじいさまばかり。
確かにおじいさまの手を借りた。
でも、頑張ったのは僕なんだ!
死にもの狂いで努力したんだ!
おじいさまの秘術でいきなり力を手に入れた訳じゃない!
おじいさまは特訓の場を用意してくださっただけなんだ!
僕は頑張った!
なのに何故!
みんな口をそろえて
「さすがウィリアム=ドラクロア。」!
どうすれば僕の努力は認められるんだ!
・・・この悶々とした気持ちは何にぶつければいいんだ。
僕がどれだけ努力したかを声高に叫んだところで、誰の耳にも届かない。
どうすれば色眼鏡無しに僕を見てくれるんだ?
僕は何を頑張ってもおじいさまのおかげなのか?
憂鬱な気持ちでレックスが1人、教室で沈んでいると、
「一緒に異世界を目指さない?」
「えっ?」
声をかけてきたのはムーニー。
クラスメイトの女の子だ。
無口でいつも1人でいる。
あまり話したことはない。
そんなムーニーがいきなり話しかけてきた。
「何の話?」
「レックスが何もかもが嫌になったって顔をしてたから、誘ったの。」
「ちょっと落ち込んでただけだよ。
ムーニーなりの励ましかな?
ありがとう。」
「そうやって自分自身を誤魔化すの?」
「誤魔化してなんか、、、」
「嘘よ。
解決出来ない悩みがあるんでしょ。
だから、そんな顔をしてたんでしょ。」
「それは、、、」
「別に私はレックスがどんな悩みを抱えているかはどうでもいいの。
でもね、
私は私の悩みを解決するには異世界に行くしかないの。
異世界に行けば、全て解決するの。
それを実現するために力のある協力者が必要なの。」
「ムーニーは何に悩んでるの?」
「よくある話よ。
うちは弱小貴族だからね。
兄の嫁取りに裏金を使い過ぎて借金作って、借金の穴埋めに私は成金商人の息子に嫁がされるのが決まってるの。
全てを捨てて逃げ出したいけど、どこに行ってもどうせ捕まって連れ戻されてしまうだけだからね。
だから、異世界に行きたいの。
全てのしがらみから抜け出したいの。」
確かに貴族としては珍しい話ではない。
親の都合で結婚相手を決められるのは良くあること。ただ、学園のトップクラスにいるのに成金商人の息子に嫁がされるのは嫌だろうな。
「事情はわかったけど、どうして異世界なんだ?」
「どうせ現実逃避するなら、現実離れしている方が面白いでしょ。
それにこの本見て。」
差し出された本には、
ディアッカ=インク著
『異世界考察』
「この人、
本気で異世界に行く方法とか、
異世界がどんな世界かを研究しているの。
王都にいるから、今日の放課後会いに行かない?」
・・・異世界か。
本当に異世界に行けるんだろうか?
この世界にいる限り、おじいさまの名前はついてくる。
逃れることは出来ない。
おじいさまのことを誰も知らない異世界なら自由に生きられるかもしれない。
現実逃避とは言え、その考えは魅力的だった。ムーニーが言うこともわかる。
「ディアッカさんの話を聞きながら、異世界に思いを馳せるの。
気分転換にはなるんじゃない?」
「確かに。。。」
「じゃあ決まりね。
放課後、門のところで待合せしましょ。」
ムーニーは勝手に決めて去って行った。
まだ行くとも言ってないのに。
放課後、門のところでムーニーが待っていた。
「さあ、行きましょ。」
仕方ない。
諦めてムーニーについて行く。
途中でパン屋と屋台の料理を買うムーニー。
「ディアッカさんの研究がお金になると思う?」
「難しいだろうね。」
「そう、
いつも金欠でお腹を減らしているの。
これは差し入れよ。」
そして王都の片隅にあるボロ家に到着した。
「ここがディアッカさんの家よ。
ボロボロでしょ。」
こんなところにまともな研究者がいるとも思えないが。
ムーニーがノックをした。
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