対クレイ戦

模擬戦の相手はオーランだった。

オーランは上級職。

しかもレベルが高い。

腕利きの冒険者を雇ってガンガンレベルを上げている。パワーやスピードはレックスよりも上だ。


模擬戦では指定の武器を装備する。

安全重視の武器になっている。

防具やアクセサリーは装備不可。

先生の合図で開始。

勝敗はポイント制。

有効打は1ポイント。

致命打は2ポイント。

10ポイント先取で勝利となる。


「本命はクレイだ。

準備運動がてら倒してやるよ。」


「好きに言ってな。」


「始め!」先生が合図を出す。


オーランが一気に迫る。

そこから鋭い一撃!


レックスは受け流す。


ウィリアム騎士団の攻撃に比べれば、

雑過ぎる、

見え見え、

簡単に予測出来る。


速いだけのモンスターの攻撃に近い。

回避は簡単だ。


攻撃と攻撃の間にも隙がある。

レックスはオーランの動きを的確に捉え、確実にヒットさせていく。


「チョロチョロと逃げ回るな!」


「そんなことを言えば敵は止まってくれるのか?」


「偉そうに!」


怒りが如実に動きに出る。

そして、それはレックスには十分な隙だ。

致命打を当てる。


「それまで! 勝者レックス!」

ポイントは10対0の完全勝利。


パチパチパチパチパチパチパチパチ


「レックス、凄かったよ!」

クレイが誉めてくれる。


「いかさまだ!!」

オーランが叫ぶ。


「レックスがこんなに強いはずがない!

不正をしているとしか思えない!」


「不正はしていない。

特訓をしたからだ!」


「レックスだぞ!

無職はどこまで行っても無職だ!

俺に勝てる訳が無いだろ!」


「負け惜しみか。」


「嘘だ!

俺は強いんだ!

レックスごときに負ける訳がない!

不正に違いない!」


しつこく繰り返すオーランに対して、クレイが怒りを示した。


「オーラン、いい加減にしろよ!

勝負は時の運、勝つ時もあれば、負ける時もある。これ以上の暴言はドラクロア家への侮辱と受け取るぞ。」


「くっ!」


オーランが黙りこむ。


「レックス、凄かったぜ。

去年とは別人みたいに強かったよ。

俺もレックスとやりたいな~。

先生、レックスとやらせてよ。」


「確かにな。

クレイ、レックス、

やってみろ。」

先生の許可が出た。



そして、

「楽しみだな!」

本当に嬉しそうにしているクレイ。


クレイは強い。

同学年では断トツだ。

去年は一度もポイントを取られていない。

全て完勝している。


「いくよ、クレイ。」


「おう!」


クレイの槍は凄まじい勢いだ。

オーランとは桁違いである。

しかし、レックスはさっと受け流す。

だがクレイは流れるような動きで連続攻撃。

槍は止まることはない。


強い!

ウィリアム騎士団よりも上だ。

だが、ギリギリしのげる。

必死にさばき続ける。


防戦一方になるが仕方ない。

無謀な突撃はしない。

先の先を読む。

クレイの動きを誘導する。

ほんの少しの隙を逃がさない。


粘り続けて勝機を探る。

完全な集中。


強いけど、荒さもある。

ステータス頼りの強引さも見える。

おじいさまに比べればアラはある。

必死にさばき続ける。


すると、


「それまで!」


「「えっ?」」

レックスとクレイの声がハモる。


「時間だ。次の授業がある。」


「そんなに戦ってたっけ?」

「集中していてわからなかったな。」


「ポイントは4対1。

クレイがリードしていたが、

引き分けだな。」


「俺、久しぶりにポイント取られたよ!

やるな、レックス。」


「さすがにクレイは強いな。

あれだけ特訓したのに、ついていくのがやっとだった。」


「また、やろうぜ。」


クレイはまだ消化不良のようだ。


「また、当たればね。」


「さぁ、次の授業の時間が始まるぞ。

急いで移動するんだ。」


先生に急かされて、レックスたちは訓練場を後にした。



レックスの大躍進は模擬戦だけではなかった。勉強でも、特訓の成果を遺憾なく発揮した。

一学期が終わる時点でレックスの成績は2位まで上昇。1位のクレイともほとんど差がない成績を獲得した。

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