卒業試験
翌朝、
再び見捨てられた地へ。
「今日から私が相手をする。
ステータスは完全にレックスと同じにする。後は自身の能力をどれだけ引き出せるかと、対人戦のテクニック、集中力、持久力が勝敗を分けることになる。
いいね。」
今回はドーピングは無し。
レックスはコクリとうなずく。
「さぁ、おいで。」
レックスが剣を構えて打ち込む。
おじいさまの動きは速くない。
でも、まったく攻撃が当たらない。
そして、おじいさまの攻撃は何故かレックスの体に吸い込まれていく。
言い訳は出来ない。
スピードとパワーはほぼ同じ。
でも圧倒的な差。
レックスは何度も何度も痛打される。
そして訓練が続き集中力が途切れてくると悲惨だった。おじいさまは疲れを知らない。
常に最高の攻撃をくり出してくる。
今までのように圧倒的な能力差、戦力差がある訳ではない。でも、まったく歯が立たない。
それは夜まで続いた。
勝てない。
どうしようもない経験の差。
ただ倒すだけじゃない。
指導を織り交ぜている。
それでも一度も攻撃が当たらない。
翌日も同じトレーニングだった。
おじいさまの動きに全神経を集中する。
変幻自在な動き。
圧倒的な対応力。
動き出しの速さ。
一撃一撃の鋭さ。
少しでも近づこうと真似る。
もちろん攻撃は届かない。
それでも戦い続ける。
おじいさまの戦い方が僕のステータスでの最高到達点。
今までの特訓は体に刻まれている。
身体中に力を巡らせる。
最高のパフォーマンスを常に発揮し続けるのは最低条件になっている。
相手の動きを目で追いかけていては間に合わない。気の流れのようなものを感じ、即断即決、いや、考える前に動き続ける。その精度を極限まで高める。
ほんの数分の戦いでも疲労感は半端じゃない。それほどの集中だ。
それを1日中行うんだ。途切れた瞬間に的確に叩きのめされる。
おじいさまの化け物じみた集中力、持続力。
そして、翌日。
今日は久しぶりのモンスターとの戦い。
チョーカーを装備して、分身はお勉強タイム。
『英雄の薬(偽)』を飲むけど、明らかに以前より効果が弱いものを渡される。
それでも戦えるようになってきた。
おじいさまに比べればモンスターは容易い。
動きが予測しやすい。
スピードがモンスターの方が高いので、予測出来ても全てを回避出来る訳ではない。
それでも最低限の対象は出来る。
最初は地獄に思えたモンスターとの戦いが少し楽に感じられるようになってきた。
モンスター
おじいさま
モンスター
おじいさま
交互に内容が変わる。
正直、モンスターの日は気晴らしとすら感じられるようになってきた。
おじいさまの日は本当にキツイけど。。。
・
・
・
そして、
「今日は試験だ。」
おじいさまにウィリアム騎士団の訓練所に連れて来られた。
団長のハリソンさんもいる。
「ハリソン、
腕の立つ団員を1人出してくれ。
レックスと勝負してもらう。
レックスが勝てば、レックスは合格。
騎士団は追加トレーニング。
団員が勝てば、その騎士に武器を作ってやろう。
レックスは不合格として、もう少しハードなトレーニングをしてもらう。」
団員たちの目の色が変わった。
おじいさまに武器を作って頂ける。
それは凄まじい褒美。
末代までの宝になるような出来事なのだ。
団員たちは我こそは!とハリソンさんにアピールする。
「アルガス、行け。」
「はっ!」
一番隊隊長アルガス。
長剣と盾を装備した典型的な騎士スタイル。
隊長を任されるだけあり、実力は騎士団でもトップクラス。
レックスは剣を構える。
アルガスに隙は無い。
だが、おじいさま程の隔たりは感じない。
勝つ!
なんとしても!
アルガスの攻撃は鋭い。
盾も巧みに使い、まともに攻撃させてもらえない。
だが、しのげない程ではない。
レックスは持久戦を狙う。
アルガスは格上。
ウィリアム騎士団の隊長だ。
子ども相手に快勝して当然。
粘り続ければ焦りが出るはず。
そこまで堪える。
戦いは膠着状態となった。
確かにアルガスが押している。
しかし決め手に欠く。
ギリギリのところでレックスが崩れない。
しびれを切らしたのはアルガスだ。
隊長として、子ども相手に延々と手間取っているところを見せられないという思いもあった。
いつもより攻撃重視の動きに切り替えた。
その隙をレックスが突く。
浅い。
だが、左腕に一撃入る。
大したダメージではない。
しかし、最初にヒットさせたのはレックスという事実。
アルガスを焦らせる。
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