ウィルのちょっとした訓練

慣れてくると『英雄の薬(偽)』の効果を下げられる。

それを繰り返すこと2回。

それで戦えるんだから、戦闘技術はかなり向上したと思う。

もちろん、回復無しではすぐに死んでしまうけど。それでもトレーニングを始める前とは雲泥の差だ。


トレーニングを開始して3週間。

既に学校は始まっている。

完全に無視しているけど。。。


「明日から違うトレーニングをするよ。

分身とも合体してもらうからね。」


そう言うと、僕のチョーカーをおじいさまは外した。

頭に一気に記憶が流れ込む。

軽くパニックになってしまう。


僕がモンスターの集団にボコボコにやられている間に、もう1人の僕は地獄の勉強監獄にいたようだ。

凄まじい量の知識を叩き込まれたようだ。

僕は元々学校でも勉強はトップクラスだったけど、たった3週間で3年分相当の知識を習得したようだ。学校で習うことだけでなく、実践的な用兵術など多岐に渡る知識だ。

肉体的なダメージは無いが精神的に追い込まれるのは同じらしい。


レックスが頭を押さえていると、


「分身して別々のトレーニングをすると、軽いパニック状態になるけど、少し時間が経てば落ち着くから。

明日からは分身無し、薬無しで戦ってもらうからね。」


どんなトレーニングなんだろう?

考えようとしたけれど、疲労からか、あっという間に眠ってしまった。


翌朝、連れて来られたのはウィリアム騎士団の訓練所。もちろんレックスも知っている場所だ。


「悪いね、ハリソン。」


ウィリアム騎士団の団長を務めるハリソンさん。初代団長のリクソンさんの弟子で、自分にも部下にも厳しい人として有名だ。


「いえ、ウィリアム様のご指示通り、腕の立つ団員を10名集めました。」


10名の団員が立っている。


「ありがとう、ハリソン。

団員のみんなもありがとう。」


団員たちが敬礼をする。


「今日はレックスのトレーニングに付き合ってもらいたいんだ。

殺すつもりで全力でやって。

死なないようにするから心配しないで。」


「レックス、

まだ対人戦の経験が無いから、今日は対人戦を鍛えるよ。

モンスターとは全然違うからね。

まぁ、戦いながら学んでいこう。」


早速、1人目。

ウィリアム騎士団は世界中の猛者が集まり、切磋琢磨している、世界最強の集団だ。

12歳の少年が勝てる相手ではない。

確かに見捨てられた地のモンスターよりも遅い。しかし緩急をつけた攻撃はモンスターとは全然違う。


レックスが隙を突いて攻撃を仕掛ける。

しかし、罠だった。

誘い出されて体勢を崩される。

騎士が横をすり抜ける。

脇腹を一薙ぎされる。

強烈な痛みが走る。


「グハッ」


えっ??

背後から妙な声が。

振り返るとおじいさまがいた。

騎士の頭を鷲掴みにしている。

そして、その騎士は両腕を切り落とされている。


「私は、

殺すつもりで全力で戦え、

と言ったよね。

何故、手を抜いて脇腹にした?」


「も、申し訳ございません、、、」


「初めてだからこれぐらいで許すけど、次はないよ。みんなもわかったね。」


ウィルが両腕を拾い、騎士に引っ付ける。

たちまち傷跡が消える。


「さぁ、次々いってみよう。」


次の騎士は目の色が変わっていた。

ここに常識は無い。

孫の首を狙わなかったことを理由に両腕を切り落とす。そんな祖父は世の中におじいさましかいない。


ウィリアム騎士団の騎士にとって、おじいさまは生きる伝説、憧れの存在。

そのおじいさまの不興を買うことを必死で避けたい。

騎士たちが本気で殺しにくる。


何度も何度も首をはねられそうになる。

おじいさまのおかげで死なない。

でも死にそうなぐらい痛い。


ボロボロに負け続ける。

丸1日戦い続けた。

騎士は順番だけど、レックスは休憩無しで戦い続けた。

でも、少しは慣れてきた。

勝てないながらも戦えるようになってきた気がする。


翌日も休憩無しで戦い続けた。

まだ勝てないけど、少しは粘れるようになってきた。


3日目。

まさかの2対1ルールがスタート。

圧倒的にぼろ負け。

1対1でも勝てない相手だから、勝てる訳がない。


4日目。

今日も2対1。

ボコボコです。

でも少しは慣れてきた。

勝てないながらも戦える時間は伸びてきた。


その日の夜。

「明日からは別のトレーニングするよ。」


「何をするんですか?」


「楽しみに待っててよ。」


いやいや、無理ですよ。

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