ウィルのトレーニング
「心配いらないよ。
ちゃんと考えているから。
まずはこれを装備して。」
ウィルがチョーカーを渡してきた。
不安はあるけど信頼して装備した。
すると、
「えぇっ!?」
レックスが2人になっていた。
「「どうなってるんですか!?」」
2人のレックスの声がハモる。
「これはね、『分け身のチョーカー』。
装備すると2人になれる。
大幅にステータスは低下するけど、一度に2つのことが出来る。
レックスには実践的トレーニングと勉強などの座学を同時にやってもらう。
装備を解除すれば、2人の経験が残るから、倍速で成長出来るからね。」
「勉強はわかります。
でもステータスが低下するんですよね。
実践的トレーニングっていうのは何をするんですか?」
「ドーピングで無理矢理能力を上げる。
私の作った『英雄の薬(偽)』を飲めば、2時間ぐらい、レベル50~60の勇者ぐらいには戦えるようになるよ。
後は装備で補正すれば大丈夫だよ。」
「飲むだけでそんな力を手に入れられる薬なんて、、、」
「もちろん、作るのには珍しい素材が必要だし、飲むと少しだけ副作用があるけど、すぐに私が回復するから問題無いよ。」
「ちなみに副作用って、、、?」
「凄く不味くてね。
気絶、混乱、麻痺、猛毒のステータス異常になっちゃうんだよ。しかも混乱だけ、解除に必要なスキルレベルが格段に高く設定されていて、麻痺や気絶を解除すれば混乱して暴れだす極悪設計の薬だ。
でも飲んだ瞬間に私が全て回復するから、心配なし!」
まずはおじいさまが用意してくれた装備をつける。どれも超一級品だ。
最後に、
激烈にヤバそうな薬。
普通なら飲めばパーティー全滅のトラップアイテム。それを平然と孫に飲ませようとするおじいさま。
やはり感覚が普通じゃない。
でもここは信じて飲む!
一瞬クラっとしたけど、すぐに異常はなくなる。嘘みたいに体が軽い。
信じられないぐらい体が動く。
これならなんでも出来る気がする。
準備が出来ると転移。
四方八方モンスターだらけ、、、
一斉に襲ってくる。
前言撤回!
ヤバい!
ヤバ過ぎる!
全てのモンスターが格上。
パワー、スピード、防御力、どれも非常に高い。薬でドーピングしても格上だ。
2、3発の攻撃を受ければすぐに瀕死になってしまう。
下手をすれば、
一撃で腕が吹っ飛んだり、
一撃で足が粉砕されたりする。
ただ、おじいさまの的確な回復で次の瞬間には戦えるようになっている。
いや、強制的に戦わされる。
モンスターはひっきりなしに襲ってくる。
何度も何度も何度も何度も死にそうになりながら戦い続ける。
途中、薬が切れそうになるとおじいさまが結界を張って飲む時間を作ってくれる。
しかし、飲んで状態異常を回復した瞬間、モンスターとの戦いが再開する。
ぶっ通しで約6時間。
最後はどうなったのか、ほとんど覚えていない。知らない間に気を失って眠っていた。
朝、おじいさまに起こされる。
小さな丸薬を渡されて飲む。
「これで1日飯抜きで大丈夫だ。
よし、始めるぞ。」
スパルタを超えている。
疲労感という言葉すら出てこない。
いや、肉体的な疲労はおじいさまが強制的に回復していく。
しかし、精神的な疲労は魔法では回復出来ない。常に死と隣り合わせの状態で戦い続ける。
怪我は回復してくれるけど、痛いものは痛い。激痛だ!
1時間に何度も瀕死の重傷を負う。
あり得ない状況だと思う。
新手の拷問と言っても過言じゃない。
おじいさまからはアドバイスと回復魔法は飛んでくるけど、手助けはない。
戦って、戦って、戦って、戦って、、、
精神的な限界を向かえて気絶するまで戦い続ける。
気絶から目が覚めると、おじいさまはニッコリ微笑んで、モンスターの集団に僕を投げ入れる。
朝から夜まで続く、地獄。
夜に気を失うまで続き、朝を迎える。
そして丸薬1つ飲んで、モンスターに突撃。
逃げ出すことは出来ない。
おじいさまから離れれば死が待つのみ。
僕に許される選択肢は目の前の敵と戦い続けることだけ。
そんな生活が10日間続いた。
人の感覚は麻痺するものだと知ったよ。
体がこの生活に慣れてきた。
回復してもらう回数がどんどん減ってきた。
おじいさまは
「気配を感じろ。
体に力を巡らせろ。
集中力を研ぎ澄ませ。」
そんなアドバイスだけだったけど、なんとなくだけど、言っている意味はわかってきた。
これなら頑張れそうな気がする。
そんな甘い考えは、おじいさまに一瞬で破壊された。
「今日から薬のランクが落ちる。イメージとしたら、レベル5下がる感じかな。
それでも最初の頃よりは戦えると思うよ。」
地獄再開でした。
急激に体が重くなり、思ったように体が動かない。行動が遅れればモンスターの餌食だ。またもや瀕死の連続になってしまった。
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