新たな主人公

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

主人公が交代します

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


僕の名前はレックス。

12歳だ。


祖父はウィリアム様。

祖母はクラリス様。


その長男キーファ=ドラクロア伯爵。

妻エマ。


僕はその次男として産まれた。


祖母は現国王陛下の妹。

父は大臣を務めている。

次男とは言え、世間が羨む存在だった。


・・・そう、『世間が羨む存在』だったのだ。

8歳までは。。。




僕が8歳になった時、空島で『就職の儀』を受けた。

兄は2年前に『魔剣士』となった。

その後転職をして『双竜の魔剣士』という伝説職になっている。


ドラクロア家では転職は日常茶飯事だ。

皆、子供の間に転職をして、学校に行く時には伝説職になっている。


父からも母からも心配しなくてもいい、と言われていた。

当然だ。

どんな職業になってもすぐに転職して、伝説職になれるんだから。


でも見栄はある。

出来ればカッコいい職業がいい。

そんなことを考えながら『就職の儀』を受けた。

そして、、、

結果は『無職』。


非常に珍しい職業だった。

過去の記録を調べてもまともな資料は出てこなかった。


そして、レベル70まで上がった時に、悲劇的なことが確定した。

転職が出来ない。

レベル30で標準職から中級職、

レベル50で中級職から上級職、

レベル70で上級職から伝説職、

こんな感じで転職が出来る。

しかしレベル70になっても一向に『無職』から転職出来なかった。


しかもだ。

『無職』はスキルを一切覚えない。

職業固有のものだけでなく、一切スキル覚えられないのだ。

更に『無職』は能力が低い。

ステータスの上昇率が標準職と比較しても低い。レベル70でも、下手をすれば伝説職のレベル20に負けそうなほどである。


ドラクロア家では職業に関して偏見が無い。

初代のウィリアム=ドラクロアが不遇職と言われた『フリーター』だったからだ。

一族からは冷たい言葉を浴びせられることもなかったし、みんな温かく接してくれた。


父も、

「女神様が与えてくださった職業だ。

きっと意味はある。

職業など気にせず、

為すべきことを為せば良い。」


母も

「大丈夫。

心配無いわ。

どんな苦境もひっくり返してきたのがドラクロア家です。

レックスも努力を続ければ報われるわ。」



みんな優しかった。

それが当たり前だと思っていた。


でも現実は違っていた。

学校に入ると異常なのはドラクロア家だと痛感した。

職業に対する差別、偏見は非常に強く、悪意に満ちた言葉を浴びせられた。

学校では陰口を言われ、後ろ指をさされ、『ドラクロア家の出来損ない』と呼ばれた。

成績は良かった。

幼少の頃から教育や訓練はしっかり受けている。他の学生には負けない。


しかし、

歴代のドラクロア家の子ども、

同年代のドラクロア家の子どもと比較され、批判される。

批判してくる学生よりも断然良い成績なのに。


僕はショックだった。

勉強も実技もトップクラスの成績だ。

でも異常値ではない。

それだけなんだ。

でも、僕はスキルを覚えず、ステータスも上がらない。今後、どんどん他の子どもとの差はなくなってくる。


学校が嫌で嫌で仕方ない。

でも、ドラクロア家の人間として逃げ出すことは認めてもらえないだろう。

ドラクロア家は困難を打破する存在なのだ。困難から逃げ出すことはドラクロア家の人間としてあるまじき振る舞いとして非難されるだろう。

きっと学校から逃げ出したら、今まで優しかったドラクロア家の人たちも、僕のことを非難し、軽蔑してくるだろう。


それがわかっているから耐えてきた。

学校に入って2年耐えた。

でも限界だ。

きっと学校を卒業して社会に出れば、もっと酷くなるだろう。

限界だ。


でも、どうすれば良いか、わからない。

成績で見返そうと頑張った。

学年でもベスト5に入っている。

でも他のドラクロア家の子どもが2人いる。その2人が圧倒的な1位2位だ。

ベスト5に入っていても平凡とか出来損ない扱いなのだ。

それだけドラクロア家は特別を求められるのだ。


スキルを手に入れようともした。

戦闘系から非戦闘系まで、覚えやすいとされているスキル取得に励んだ。

それでもダメだった。

そして、これ以上のレベルアップも望めない。レベル70にしては弱過ぎる。自分と同レベルぐらいのモンスターには歯が立たない。


もう学校には行きたくない。

もうすぐ新学期が始まる。

僕は進退窮まっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る