神様誕生

「別の世界で神様が力を失って大変なんだって。それで代わりを務める人材をルディアリア様が探してて、こっちのウィルツーがスカウトされたんだ。」


「話が突飛過ぎて理解出来ませんよ!」

「さすがはウィル様です。」


「それで、ウィルツーはやってみようかな~って言ってるし、私には直接の影響は無いから、やってもいいかな、って思ってる。

でも、私と深いつながりを持つ存在が神様デビューするのをみんなに事前に報告しておこうと思って、みんなには集まってもらったんだよ。」


「「「・・・・・・」」」


「神様になる、なんて報告を受けた時のリアクションは何が正解なのかしら、、、」

「普通なら信じないが正解でしょうけど、ウィルだしね、、、」

「女神様も、お2人もいらっしゃいますし、、、」


ざわざわとする中、ヘンケンが質問をした。

「ウィルツー様が神様になられることでウィル様及びその周辺に何か影響は出ますか?」


女神ルディアリアが答えた。

「直接の影響は無いと思います。

ですが、魂を2つに分けて、その1つが別の世界で神様を務めるということ自体が初めてのケースです。

想像も出来ないことが起こる可能性も排除出来ません。」


「人生は予想外の連続だからね。

何が起こるかは事前にはわからないよ。」


ウィルの発言に対してミルが、

「ウィル様の行動は常に予想外の連続です。ですが、どのような決断でも私は支持致します。」


「そうですね。ウィルのやりたいことを反対する気はないわ。」

クラリスも賛同した。


他のみんなも同意を示す。


「ありがとう。

まあ、今回は直接私が何かやる訳ではないからウィリアム=ドラクロア家には何も変化は無いから心配しなくていいよ。」


「ありがとね。

私は今日がはじめまして、もう異世界に行くから、今後会うことはないんだけど、でも分かれる前のウィルの記憶は共有しているからね。

ウィルが愛し、ウィルを愛してくれているみんなと短い時間とは言え、会えて良かったよ。」


「ではウィルツーさん、行きましょうか。」


「そうだね。

新しい世界に連れて行ってよ。」


「それではみなさん、失礼します。

このケーキを作った方に美味しかったとお伝えください。」


「わかりました。

さよなら、ルディアリア様。

ウィルツー。」


「じゃあね。」


ルディアリア、エルカレナ、ウィルツーの姿が消えた。

そして部屋全体を覆っていた神域は解除され、もとの椅子1つ分の神域に戻った。


「凄い経験でしたね。。。」

「女神様の上司がいらっしゃった、なんて教会が知ったらパニックでしょうね。」

「今回の話は全て他言無用、でしょう。」

「普通なら誰も信じない話だけど、ウィル様がからむと信じる人も多いでしょうね。」


「みんなの胸にしまっといてくれたらいいよ。ごめんね、みんな仕事中なのに急に集めちゃって。もう戻って大丈夫だよ。」


みんな順次仕事に戻っていった。





情報量の多さにみんな、軽くパニックにはなっていたけど、特に日常生活に変化はなかった。

忙しくとも、平穏無事に毎日が過ぎていく。


人間でウィリアム=ドラクロア家に喧嘩を売る者はよほどの愚か者しかいない。

喧嘩を売った瞬間に秒殺されるだけだ。

それは個人的にも、軍事的にも、経済的にもだ。圧倒的な勢力となっている。


邪神も手を出してこない。

小神族の影響なのか、ウィルが力を失ったからなのか、単純に飽きたのか、、、

とにかく平和に時間が流れていった。



10人の妻たちはそれぞれに子を産み。

一族は爆発的に広がった。

産まれた子どもたちをウィルが溺愛し、妻に叱られたりしたのは別の話。


その子どもたちが大きくなり、成人する頃には組織としても徐々に整理されていった。

ウィリアム=ドラクロアを始祖とするドラクロア家はその権能を分割することでバランスを取るようになっていった。


ウィル本人は早々に表舞台からは姿を消し、趣味に生きていく。政治、経済、軍事、全て妻や子どもたちに任せていく。

本人は直接関与しない。

ただ、みんながウィルの意思を尊重する姿勢は変わらなかったため、バランスは取れていた。

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