結婚式 2
教会の扉が開かれる。
まずはウィルが1人で入ってくる。
タキシード姿で、ビシッと決まっている。
ウィルの登場に盛大な拍手が贈られる。
ウィルはそのまま進み、
ザライドの前で止まった。
続いて新婦の入場である。
新婦が2列に並んで入ってきた。
先頭はクラリスとカレン。
続いてリディアとエリュートロン。
その次がミリアとリンカ。
その後にタチアナとミレーヌ。
最後にミルとメル。
全員が美しいウェディングドレスとジュエリーを纏っている。
その美しさに教会内の人々の目は釘付けだ。
なお、衣装は全てウィルと花嫁が一緒に決めて、オーダーメイドで作られている。
どれもがダンジョン街の職人が作った渾身の自信作だ。
本人の希望に沿いながら、より魅力的になるように職人がデザインしている。
ダンジョン街の職人を超える職人は世界中探してもいないし、また使用する布もダンジョン街産の最高峰の布を使用している。
ティアラやネックレス、指輪などのアクセサリーは全てウィルの手作りだ。
ダンジョンで手に入れた宝石をそれぞれに合わせて加工してある。
なお、その使用されている宝石は全て超希少品だ。ダンジョンの奥深くでしか手に入らないレア物で、1つで大きな屋敷が建つレベルである。
ウェディングドレスとジュエリーを鑑定したミレーヌは、倒れそうになるのを堪えるのが、やっとのことだった。
メルからは「どれくらいの価値なの?」と無邪気に質問されたが、「知らない方がいいこともあるわ。」とだけ答えるに留めた。
花嫁たちはウィルの横に並んで止まった。
ザライドはそれを確認して、
「ウィリアム=ドラクロアよ。
この者たちを妻とし、生涯愛することを誓うか?」
「誓います。」
「クラリス、カレン、リディア、エリュートロン、ミリア、リンカ、タチアナ、ミレーヌ、ミル、メル。
そなたらはウィリアム=ドラクロアを夫とし、生涯愛することを誓うか?」
「「「「「「「誓います。」」」」」」」
「誓約はなった。
この者たちに女神様の祝福があらんことを。」
ザライドは女神様に祈りを捧げた。
すると、、、
女神様の像が輝きだした。
背後の異変に気付いたザライドが振り返る。
「なっ!?」
女神様の像から溢れ出した光の粒子が新郎新婦たちを包み込む。
光に包まれた神秘的な光景が広がる。
幻想的で絵画のような美しさに皆が言葉を失った。
(ウィリアムとその一族に祝福を)
教会内にいた全員の頭の中に優しい声が響いた。
誰もが女神様の御言葉であると、本能的に感じていた。
そして言葉が終わると、光も消えていった。
参列者たちは目の前で起こった奇跡に頭が追いつかない。
当然、ウィルたちは平然としている。
女神様とは旧知の仲なので。
そして、ザライドも先日女神様本人と会話していたので、ダメージは少なかった。
と言うか、この仕事を受けた時点で何が起きてもおかしくないと覚悟していた。
「女神様の祝福です。
ウィリアム=ドラクロアたちにとって、この上無い門出となったことだろう。
女神様への感謝と祈りを忘れないように。」
「はい。」
このザライドの発言は大きな意味を持つ。
教皇が『女神様の祝福』と認めたのだ。
目の前で『奇跡』が起きた。
女神様が直接声を届けられることなど、歴史上、数えるほどしかない奇跡である。
それがウィルの結婚式で起きた。
その衝撃は計り知れない。
なお、この世界の結婚式では指輪の交換や誓いのキスなどはない。
女神様に夫婦になることを誓うだけだ。
ザライド
「結婚式を終了する。」
パチパチパチパチパチパチ
ようやく正気に戻った参列者たちが拍手をし始めた。
『無事、結婚式が終了致しました。
披露宴会場への移動の準備がございますので、皆様、席を立たずに、座ってお待ちください。』
リィナのアナウンスが教会内に流れた。
普通は新郎新婦の退場。
神官の退場。
参列者たちの退場という段取りだが、何故か着席の指示だけが出た。
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