結婚式 1

いよいよ結婚式の日がやってきた。

もはや世界規模のイベントだ。


大国を中心に各国の王族が参加している。

各国の王族及びその随行者、護衛などだけでも凄まじい数だ。


そこに各国の商人もやって来る。

ウラドラ商会と関係の深い商人は招待客として。

ウラドラ商会と関係の薄い商人は関係を作るために。あるいはイベントとしての商機を逃すまいと。

当然、商人たちも護衛を雇っている。


瞬く間にウィリアムの街の宿は埋まった。

その影響はオデロのドラクロア領にも当然および、宿の奪い合いは熾烈をきわめた。

ウィルの指示で、結婚式や披露宴の参加者が優先された為、王様なのに泊まるところが無い、というような事態は回避されたが、それでも大混乱には間違いなかった。



その混乱に乗じて、悪事を働く者も出てきた。と言うより、そもそも窃盗・強盗・詐欺などなどを目的とした者たちも集まってきていた。

ウィリアムの街の近くまで集団で来た愚か者たちはすぐに捕まった。

そもそもドラゴンが警戒して飛び回るエリアに、ノコノコやってくるバカな山賊は捕まりに来ているようなものだ。


しかし、単独犯や知能犯となると簡単には捕まらない。

あちらこちらで事件は起きていた。

しかし、それを防ぐための護衛である。

護衛をケチった商人が被害にあうのはいつものことである。


ウィリアムの街の中心部にある宿は王族で埋まっていた。

王族だらけの宿では異常な緊張感が張り詰めていた。

ディーンたち警備隊の活躍もあり、街の中心部では、人が多過ぎることを除けば、特に問題は起きなかった。




そして、いよいよ結婚式。

結婚式のやり方は簡単だ。

教会に新郎新婦が入場。

神官の言葉に従い、女神様に夫婦となることを誓う。

そして退場。


この流れはウィルの結婚式でも同じだ。

普通と違うのは、

新婦が10人いることと、

来賓が各国の王が座っていることと、

神官が教皇なぐらいだ。



結婚式の時間と近づいてきた。

教会は満員。

最前列は両家の親族。

その後ろに来賓の各国の王族など。

その後ろに新郎新婦の友人や関係者たち。

そして通路や壁際ではウィリアムの街の警備隊が警戒にあたっている。


各国の王族たちが連れてきた護衛は人数の関係上、教会の外で待機をしている。

中に入れろと主張した護衛もいたが、一瞬で気絶させられ、教会の外に放り出された。


それを見たリクソンは、

「ドルマ帝国近衛隊長も不様なものですね。」

と周囲に聴こえるように呟いた。


さすがに護衛たちも主君の前で気絶させられて、放り出されるような恥は晒せない。

大人しく外での待機を受け入れた。



教会の外もお祭り騒ぎだ。

教会には入れなかった人々が一目見ようと集まっていた。

また、その見物客相手の屋台も乱立していた。

なお、披露宴のみの招待客は事前に披露宴の会場となる、街の外に作られた広大な広場に集められている。

街中では入れる人数に制限があるため、街の外に大きな広場を作り、臨時の披露宴会場にしている。

結婚式の間も、披露宴に向けた準備が着々と進められている。



『これよしウィリアム=ドラクロア伯爵の結婚式を開始致します。』

開始を告げるアナウンスが教会に、街中に、流れた。

声の主はリィナ先生。


リィナはウィルにスカウトされ、ウィリアムの街で子供たちに勉強を教えている教師だ。


リィナの声を合図に教会に荘厳な音楽が流れる。オーケストラによる生演奏だ。


1曲終わると、

『ザライド教皇のご入場です。』


教会の扉が開かれる。

そこから、ザライドが教会に入ってきた。

壇上に上がると、

「これより、ウィリアム=ドラクロア卿の結婚式を執り行う。」


『続きまして、新郎新婦の入場です。盛大な拍手をお願い致します。』

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