ウィルの誤算

ここはキルアのダンジョンの私室。

ウィルとキルアはお茶を楽しんでいる。


「確かに力は落ちたけど十分強過ぎるね。」


「そうなんだよ。

本当はさ、

キルアと互角ぐらいを狙ったんだけど、魔神を倒したことでかなり強くなっちゃったみたいなんだよね。

さすがに、

魔神を倒した後に力を測定して、再度術式を調整するような余裕はなかったからね。」


「なるほどね。

それで、毎朝のダンジョンボスを倒して回るのは継続しているんだろ。

微々たるものかもしれないが、強くなってしまうんじゃないか?」


「それね。

でも対策を見つけたんだ。」


「対策なんてあるのかい?」


「成長した余剰な力を切り離して、女神様の神域に送り込んでいるんだよ。

屋敷に女神様の神域と繋がっている場所を残しているからね。

それを使えば、片道切符で力を送り込むことも簡単に出来るんだよ。」


「そんな状態なら、ボスモンスターを倒すのを辞めればいいんじゃないか?」


「まぁ、ボス含め、モンスターの素材の確保は重要だし、それに何より朝のルーティンだからね。

やっとかないと気持ち悪くて。」


「ふ~、ゲオルグのことを笑えないぐらいに、ウィルも十分戦闘狂ですよ。」


「心外だな~。

本当に戦闘狂なら、力を封印したりしないよ。」


「それは一理あるかもしれませんね。

それでウィルはこれからどうするつもりですか?

いくら力を封印したとは言え、世界最強なのは間違いないですし、戦闘特化の我々と違い、ウィルは物作りにも才能がありますよね。

あなたが何を望み、何を行うのかは、この世界に多大な影響を与えることになりますよ。」


「そこなんだよね~。

軽い気持ちでやったことが大事になることも多いからね。

だから、世界に影響するようなことは止めて、趣味に生きようかな、って考えてる。」


「もう十分世界に影響は与えましたからね~。」


「そんなつもりは無かったんだけどな~。

でも、これからは自重するつもりだよ。」


「自重ね~。

で、これからは何をするんだい?」


「まずは結婚式と新婚生活を楽しむ予定だよ。

その後は今開発中の空飛ぶ島を完成させるつもり。」


「空飛ぶ島ね~。

十分やらかしている気がするけど。」


「ハハハ、誰も立ち入らない場所だから大丈夫だよ。

『空飛ぶ島に眠る秘宝』

ロマンがあるでしょ♪」


「確かに面白そうだね。

でもウィルなら、空飛ぶ島の完成もそこまで時間はかからないだろ?

すぐに暇になるよ?」


「そうだね。

他にもやってみようかな~、って考えていることはあるから、順番に試してみるよ。

それに家族も増えたから、単純に暇な時間は減るんじゃないかな。」


「家族か、、、

真面目な話、ウィルは寿命はどうするつもりだい?」


「寿命?」


「私のまわりはバンパイアだらけだからね。ほとんど寿命という概念は無い。

しかし、人間はそういう訳にはいかないだろ。でもウィルはおそらく寿命で死ぬことはない。しかし、周りの人間は死んでいく。

その事実とどう向き合うかは事前に考えておいた方がいいよ。」


「そうだね、、、

それは自然の摂理に任せるつもりだよ。

妻や子供を無理やり長生きさせるつもりは無い。

それに孫やひ孫、その先の代までも関わり続ける気は無いよ。

どこかのタイミングで隠居しようと思う。

それでやる事がなくなったら、世界に溶け込もうかな。」


「なるほどね。

まぁ、今の考えに縛られる必要は無いよ。

長く生きていれば考えが変わることもある。

ただ、覚悟は必要だって話だよ。」


「ありがとう。

年長者の意見として、胸に刻んでおくよ。」


「強くなり過ぎる、

長く生き過ぎる、

と想像もしなかった問題が起こるものだよ。」


「まあね。

まさか邪神のような存在に目をつけられるとは思わなかったからね。

これからの人生も何事も無く、平穏無事、

ってことはないだろうね。」


「ウィルの人生だからね。

平穏無事って言葉とは縁が無いと思うよ。」

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