結婚準備
ウィルが空飛ぶ島の製作で楽しんでいる最中。
タチアナから呼び出しを受けた。
「どうしたの?」
「結婚式の準備のことでご相談です。」
「あれ?前に相談しなかったっけ?」
「前回の打ち合わせでは、
ウィリアムの街で結婚式を行うこと。
各国の王を招待して盛大に行うこと。
その他の招待客の人選や日時の調整は私に任せる。
という内容でした。」
「そうだね。」
「日程と参加者リストが決まりましたので、ご確認をお願い致します。」
タチアナが差し出したリストを確認する。
各国の王族、及びその随行貴族。
エール王国内の貴族たち。
ウィルや花嫁たちの関係者。
なかなかの顔ぶれだ。
「さすがだね。
バッチリだよ。
後、孤児院のモンド院長はミリアの親みたいなもんだから、新婦の父として扱って。」
「承知致しました。
それと結婚式を執り行う神官ですが、ウィリアムの外街にいらっしゃるオロゴン司祭でよろしいでしょうか?」
「ちょっと待ってね。
1人、やってくれそうな知り合いがいるから、頼んでみるよ。」
「承知致しました。
挙式は街の教会で行い、
披露宴は街の外に特設会場を設置する予定です。
披露宴は、ダンジョンの中街の住人やウラドラ商会の関係者、ウィリアム騎士団のメンバーなども集めて盛大に行う予定です。」
「オッケー。
みんなに喜んでもらえるように、最高のおもてなしを用意しよう。」
「ムラーノさんも張りきっておりますので、そちらの心配は不要かと。
問題は警備です。
各国の王族が参加されます。
万が一にも何かあれば、国際問題になってしまいます。
ディーンさんと打合せをしておりますが、ウィル様も後でご確認をお願い致します。」
「了解。
ディーンが胃に穴が開きそうって言ってたよ。
一応、周囲の警戒にドラゴンたちを出動させるから、大人数の不届き者は対応できると思うんだけど。」
「・・・
ディーンさんの心中をお察し致します。
最終段階に入ってきましたので、諸々の準備にご協力をお願い致します。」
「もちろん♪」
その後、、、
「いきなり私の執務室に現れて、何の用件かな?」
不機嫌な顔をしたザライド教皇がいた。
「悪いね。
手続きをするとさ、教会ってやたらに待たせるんだよ。
すぐ終わる話だから、お願い。」
ニコリと笑うウィルに諦めたように、
「は~、わかった。
悪いが少し席を外してもらえるか。」
ザライド教皇は部下たちを退席させた。
「で、何の用だ?」
「今度、結婚式をするんだけど、神官として参加してもらえないかと思って。」
「・・・結婚式をするのは聞いて知っている。
だが、何故私なんだ?」
「参加者は知り合いで固めたいからね。」
「ふ~~~。」
こめかみを押さえるザライド教皇。
結婚式の格を高く見せるために、高位の神官を招くのはよくあることだ。
逆に、ただ『知り合いだから』という理由で教皇を呼ぼうとするなどあり得ない。
教皇を呼びつけるというのは暴挙に近い。
過去には某国の王子が結婚式をする際に教皇を自国に招こうとして教会が拒否。
教皇に頼みたいならビダン神聖国にて式を行うことが条件だと、突っぱねて戦争一歩手前まで揉めたこともあるぐらいだ。
ただの伯爵の結婚式に教皇が出向くなど、本来はあり得ない。
だが、相手はウィルだ。
ザライド教皇は各国の王族が参加することも知っている。
更に言えば、問題は女神様だ。
ザライド教皇はウィルの屋敷に女神様が降臨していたことも知っている。
その男の結婚式だ。
何が起こってもおかしくない。
超例外的対応が必要だ。
「わかった。参加しよう。
但し、2つだけ条件がある。」
「どんな条件だい?」
「1つ目は、私の移動手段を用意して欲しい。
悪いが私も忙しい。
2~3日程度なら空けられるが、エール王国まで普通に往復している時間は無い。」
「そんなことなら、全然いいよ。
当日の朝、呼びに来て、式の翌日にここまで届けるよ。
随行者の人数も事前に教えておいてくれたら、一緒に連れて行くよ。」
「助かる。
最低でも20人弱は連れて行きたい。」
「けっこうな人数だね。」
「当たり前だ。
教皇が1人でフラッと行く訳が無いだろう。
それ相応のお供を従えるものだ。」
「そうなんだ。
まぁ、問題無いよ。
で、もう1つの条件は?」
「女神様が参列するようなことは止めてくれ。
後々の影響が大き過ぎる。」
「それも大丈夫だよ。
さすがにホイホイ女神様を神域から連れてくることは出来ないから。」
「わかった。
では、そちらの結婚式の担当者から連絡を寄越してくれ。
詳細を事前に打合せする必要があるからな。」
「それはそうだね。
うちのタチアナから連絡を入れさせるよ。
よろしくね~。」
ウィルの姿が消える。
数分後にタチアナが強烈なめまいに襲われたのは言うまでもない。
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