論功行賞

エール王国の王宮。

国王とヘンリー王子、宰相が頭を抱えている。


ことの発端は昨日行ったウィルの報告にある。


エール国王はウィルに対し、

「公表もしないし、記録も取らない。

だから、まずは全て包み隠さず報告して欲しい。

その上で、どこまで公表するかを検討する。」


こんなことを言ってしまったのが失敗だった。

ウィルは素直に、

魔神のこと、

邪神のこと、

女神のこと、

自身の力を封印したこと、

全てを報告した。



結果、、、


「ウィルの話は、世界の根本を揺るがすようなものばかりだったな、、、」


「知らない間に女神様が降臨されていたとは、、、」


「女神様を遥かに超える存在がいるなんて、、、」


「「「は~~~」」」


3人のため息が深い。



「どこまで公表致しましょうか、、、?」

宰相がなんとか話を進める。


「あの話のどこかに公表できる要素があったか、、、?」


「まったくありませんね、、、」


「「「は~~~」」」

ため息が止まらない。



「・・・全て忘れよう。。。

我々は何も聞かなかった。

昨日はウィルと世間話をしただけ、、、

そうしよう、、、」


「承知致しました。」


「ウィルの功績はどこまで評価致しますか?」


「ウィリアム騎士団の功績、ウラドラ商会の功績、それらだけでも抜群の功績だ。

魔神の話を抜きにしても、既にその功績は評価しきれないほど絶大だ。」


「おっしゃる通りです。

1位はオデロ様、2位にウィリアム様。

この評価に不平を言う者はいないでしょう。」


「総大将を務めたオデロ卿が1位なのは当然ですね。

ですが、功績が大き過ぎて、それに見合う褒章が難しいですね。」


「それについてはオデロと話をしている。

さすがに領地で功績に応えることは出来ないからな。

オデロには称号を与える予定だ。」


「称号ですか?」


「そうだ。

『天騎士』という称号を創設する。

オデロが最初で最後になるであろう称号だ。世界を救った英雄に与える称号ということにする予定だ。

もちろん、それ以外に褒賞金などは必要だがな。」


「なるほど。

それではウィルに対してはどう致しましょう?」


「ウィルは全てを持っているからな、、、」


「どこか領地でしょうか?」


「あやつの感覚は我々とは違うからな。

何を欲しがるかわからん、、、」


「ヘンケン様を通じて確認をとりますか?」


「そうだな。

ヘンケンなら調整してくれるだろう。」




そして・・・


「・・・で、私に丸投げですか?」


現宰相と前宰相による通信が行われた。


「申し訳ございません。

ですが、ウィリアム卿に直接確認するより安全かと、、、」


「は~、気持ちはわかるが、、、

わかった。

ウィル様に確認しましょう。

その代わり、どんな結果になっても怨まないでくださいよ。」


「ありがとうございます。

あの方のされることはいつも想像を超えています。

どんな回答でも、ヘンケン様を怨みませんよ。」



通信を終えて、ヘンケンはウィルに報告を行った。

なお、ミルとミレーヌ、タチアナを引き連れている。

いざと言う時、ウィルを止めるためだ。


「う~ん、難しいな~。

今はフィガロウィリアムの復興で忙しいから、新しい領地に人をさけないしな~。

お金も貰ってもな~。」


しばらく、考えこみ、、、


「そうだ!」


ウィルが何かを閃いた。


「タチアナ、地図を持ってきて。」


「承知しました。」


タチアナが地図を広げると。

ウィルはそれを見つめて、また考えこむ。


「ここだな。」


ウィルが指差した場所には何もなかった。


「ウィル様、そこに島はございませんよ?」


「だからいいんだよ。

おそらく貿易船の航路からも外れているよね。」


「おそらくは、、、」


ウィルが指差したのは海のど真ん中。

陸地からも離れており、誰も近寄らないような場所だった。


「ウィル様、そんな何も無いところで何をされるおつもりですか?」


前回希望したセイロード島は交易の拠点、海軍の拠点としての使用を目的としていた。

説明を受ければ納得出来る理由があったのだ。


ウィルはニヤリと笑った。

4人の背中には冷や汗が流れ出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る