フィガロウィリアム復興
ウィル
「街として機能させるにはどれぐらいの日数かかるかな?」
マッシュ
「街は廃墟です。
瓦礫の撤去、
街壁の復元、
物資の搬入、
そこまでしてようやく再建スタートです。
この段階まで1ヵ月で進められたら上出来でしょう。」
ウィル
「そっか~。
でもその程度なら明日には終わるよ。」
マッシュ
「えっ!?
えっ!?
明日ですか!?」
ミレーヌ
「ウィル様ですから。
いちいち驚いていては身が持たないわよ。」
ミル
「マッシュ、その後の段取りを。」
マッシュ
「え、あ、そうですね、はい。
物資の搬入が終わりましたら、
そこからは大工たちに家と工場を整えてもらいます。
後は街への移住者を受け入れながら、という感じです。
各商会からの希望者も殺到するでしょうから、順に場所を割り振っていくという流れでしょうか。
ある程度、街としての形を成せば、自然と人は集まると思います。
と言うか、人が集まり過ぎるのを制限することになるでしょうね。
それと並行して周辺の街道整備も必要です。
モンスターの侵攻で街道も修復が必要な状態になっているでしょうから。」
ウィル
「なるほどね。
じゃあ、明日にはある程度街中のことは終わらすよ。
その後、街道もざっくり修復しとくよ。
細かい手入れはリクソンにお願いしていいかな?」
リクソン
「問題ございません。
来週から、街道整備に入れるように人員を準備しておきます。
団員も大きな戦いの後ですので、少し休息を取らせたいと考えております。」
ウィル
「みんな頑張ってくれたからね。
ゆっくり休んでもらってよ。
それじゃ、後の細かい段取りはみんなに任せるよ。
よろしくね。」
「「「承知致しました。」」」
翌日から本格的な復興作業が開始した。
特にカシムと魔神の分身との戦いの傷跡が大きい。街壁は吹き飛び、地面は抉れ、家屋は崩れていた。
しかし、元々フィガロウィリアムもウィルが下地を一瞬で作った街である。
力が落ちたとは言え、ウィルの手にかかれば簡単に仕上がっていく。
瓦礫は瞬く間にウィルのアイテムボックスに納まっていく。
崩れた街壁はニョキニョキと伸びて崩れた箇所が補修されていく。
まるで街が生きているかの如く、急速に傷が癒されていった。
昼過ぎにはほとんど無傷の街の外観が完成していた。
「次は街道だな。」
街道も損傷が激しい。
元々土を固めているだけのものだ。
モンスターが大挙して行軍すれば崩れてしまう。
ウィルが大地に力を送ると地面はすぐに平らに補修されていく。
以前のように分身を作り出して、勝手に作業させるようなことは出来ないが、自分で街道を作るぐらいはお手のものだ。
フィガロウィリアムから広がる街道を順番に手入れしていく。
と言っても端から見ていると、ウィルが高速で街道を駆け抜けていくと、いつの間にか街道がきれいになっているという異常な光景が繰り広げられていた。
ウィルは街道を整地しているだけだ。
より使いやすくする作業はウィリアム騎士団が行う。
全ての作業をウィル1人で行っていては、みなの仕事が失くなってしまう。
だが、おおむね整った。
翌日、転移してきたマッシュが、あまりの街の復興具合に頭を抱えたのは別の話だ。
フィガロ王国の被災地のど真ん中にあるフィガロウィリアム。
カンロウィリアム、ロンムウィリアムと大きな街道でつながるこの街の復興は、フィガロ王国の復興にとっても非常に大きな1歩だ。
フィガロウィリアムには瞬く間に人が集まってきた。
モンスターの被害により住む場所を失った周辺住民が多かった。
そしてフィガロウィリアムは交易の拠点となる街である。
フィガロウィリアムの復興に合わせて、街道の交通量も増えていった。
ウィリアム騎士団の協力もあり、フィガロウィリアムから伸びる街道の周辺を中心に復興が進んでいった。
その影響は非常に大きく、フィガロ王国の北部を語る上では欠かせない存在となっていった。
フィガロ王国内ではウラドラ商会は圧倒的な地位となり、政治的にも、経済的にも、軍事的にも、ウィル抜きでは語れない状況となっている。
もっとも、ウィルがフィガロ王国に干渉するつもりが無いので、直接的な影響は出ていないが、フィガロ王国内では大きな火種となってしまった。
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