報告会

夕食は久しぶりのウィルの帰宅に喜んだムラーノが張り切って料理を作った。


メインディッシュにローストビーフならぬ、ローストグレイトドラゴンが提供された。

溢れる旨味、とろける口当たり、最高だね。


そして、ブドウのタルトと紅茶を飲みながら報告会が始まった。



「まずは私から。」

ウィルからスタートした。


「魔神は倒したよ。

それと、女神様も神域に戻られた。

魔神との戦いは決着したってとこかな。

ただ、私は力をかなり失ったんだ。

以前ほどのことはできないようになったから、そう思ってて。」


カシム

「弱くなられた、ということですが、具体的にはどれぐらい弱くなられたのですか?

場合によっては護衛なども考える必要がございます。」


ウィル

「護衛とかは大丈夫だよ。

カシムになら、どう戦っても負けないぐらいの力は残ってるから。

前ならカシムと同レベルの分身を5~6体作れたけど、今はディーンレベルを2~3体が限界かな。」


リクソン

「カシムさん5人から、

ディーンさん2人、、、

おそろしく戦力ダウンですね。」


ディーン

「比べる相手が悪過ぎるだろ!?

って言うか、まったく護衛なんていらねぇ強さだな。」


ウィル

「まあね。

本当はもう少し弱くなる予定だったんだけど、魔神倒したら、予想してたより強くなっちゃったんだよね。」


リクソン

「『弱くなる予定だった』とはどういうことですか?」


ウィル

「邪神がさ、私のことを狙ってたんだよね。

戦って勝てる相手じゃないからさ。

それなら力を封印して、邪神に狙われないようにしたんだよ。」


カシム

「邪神とはそれほどの存在なのですか?」


ウィル

「そうだね。

邪神と私が本気で戦ったら、1秒生き残る自信は無いよ。」


「・・・」

一同が絶句する。


「とりあえず、力を封印したことで、すぐに襲ってくるってことは無いと思うから安心してよ。

さてと、こっちの報告はこんなとこかな。

みんなの状況を聞かせて。」


タチアナ

「ウィリアムの街には被害はございません。ただ、フィガロウィリアムが崩壊しました。再建には時間が必要です。

それと騎士団と警備隊にそれぞれ1名の死者が出ました。

負傷者は多数出ましたが、そちらは全て回復済みです。

ウラドラ商会は持ち出しが多く、多額の損失が出ていますが、すぐに取り返せる見込みです。

各国の軍はかなり消耗しております。

回復には時間がかかるでしょう。

以上になります。」


「騎士団と警備隊の死者の家族には手厚い対応を頼む。

妻子持ちなら、その生活が安定するようにしてやってくれ。」


「承知しました。」


この世界では戦死に対する補償など無い。

良くて見舞金が少し出る程度だ。

しかし、ウィルの指示により、高額な見舞金の支払いと仕事の斡旋が行われた。

その噂は広がり、警備隊や騎士団の人気は更に高まった。



「フィガロウィリアムは明日様子を見てくるよ。

フィガロ王国も戦災で大変だろうから、復興の手助けになるように、急ピッチで再建しよう。」


ヘンケン

「エール国王が論功行賞を予定されております。日程は参加した将校の帰還後に決定するとのこと。

論功行賞の前に報告を貰いたいと国王陛下から要請されております。

ウィル様のご都合の良い日時をお教えください。それに合わせて予定を組んで頂きましょう。」


「助かるよ。

兵士たちの帰還はまだまだ先だろうし、、、

その前にやりたいこともあるから、

1週間後でいいかな?」


ヘンケン

「承知致しました。」


「そんなとこから。

細かい打合せは明日の夜にやろう。

フィガロウィリアムの再建を優先したいから、必要な人と物の準備を進めておいて。」


「「「承知致しました。」」」

内政担当チームが返事をした。




そして翌日の夜。

夕食にはマッシュが参加していた。

マッシュはウラドラ商会に所属する商人であり、フィガロウィリアムの代官を任されていた男だ。

もっとも、街として機能する前に破棄されたため、代官としての仕事はほとんど何もしていないが、、、


「ウィリアム様、

お久しぶりです。

今日はお招き頂きありがとうございます。」


「久しぶり~。

今回は大変だったね。

無事で良かったよ。」


「お気遣いありがとうございます。

モンスターが到達する前に避難しましたから大丈夫ですよ。

今日は復興についてお話があるんですよね。」


「急いで復興させるよ。

人間は何度でも立ち上がるってことを示したいんだ。

みんなに希望を見せないとね。」

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