新世界編

祝勝会

戦いは夕方まで続いた。


その後、

動ける兵士たちが周辺の残党の討伐を行い、

日暮れまで走り回った。


負傷兵の治療、鎮魂などなど。

戦いが終わった後も忙しく、あっという間に夜になった。



翌日。

ウラドラ商会主催の一般兵士向けの祝勝会が開かれることになった。


各国でも祝勝会は開かれるかもしれないが、今回の戦いは各国の損失も大きい。

おそらく、規模は小さくなるだろう。

なにせ、生きるためには必要な戦いではあったが、得る物は何も無い、そんな戦いだった。


それを見越して、ウィルが手配を指示したのだ。

当のウィルはまだ女神の神域いるのだが。



連合軍の本陣。

オデロを中心に各国軍の将軍が集合していた。


オデロ

「兵士たちに祝勝会を開いてくれるそうだな。」


ミレーヌ

「ウィリアム様のご指示で肉と酒を大量に用意しております。

十分行き渡るかと。」


オデロ

「ありがとう。

命がけの戦いの後だ。

兵たちも発散したいだろう。」


ミレーヌ

「では、昼には用意が完了する予定です。

しばらくお待ちください。」




そして昼頃。

昨日の戦場は宴会場に変わっていた。

各所に大量の焚き火が用意され、肉の焼ける香りが充満していた。


用意されたのは、

グリーンドラゴン、大陸牛、ギガントボア、クジラ鳥。

どれも巨大なモンスターであり美味しいお肉だ。

ただ、討伐は並の冒険者には難しい為、滅多に市場には出回らないご馳走だ。

なにせ、最低でもレベル50は無いと倒せないようなモンスターばかり。

口に出来るのは王族ぐらいな食材だ。


ステーキ、串焼き、ソーセージ、唐揚げなどの料理が用意されている。

タレや下味はムラーノが行っている。


普通の兵士では一生食べることの出来ない、最高の逸品だ。


それを知らずに食べた兵士から、

「うめぇぇぇ!!」

「なんだコレ!?」

「なんの肉かわかんねぇけど、人生で一番うめぇ!」

「止まんねぇ!」


各所で悲鳴があがっていた。


お酒もウィリアムの街の特製品だ。

まだまだ世の中には出回っていない。

それがキンキンに冷えている。


一般兵が安い飲み屋で飲む、ぬるいエールとは全然違う。


「すげぇ~!!」

「こんな旨い酒飲んだことねぇ!」

「なんで戦場にキンキン冷えた酒があるんだよ!?」


兵士たちは浴びるように酒を飲んでいる。


最高のご馳走と最高のお酒。

兵士たちは全てを忘れて、宴会を楽しんだ。

酔っ払った兵士たちは国を超えて肩を組み、一緒に笑いあった。


ここでもウィリアムメイド隊は大活躍であった。

と言うか、本来、給仕等が本職である。

凄まじいスピードで動きながら、サーブをしていた。


宴会は夕方まで続いた。

途中で大量の兵士が飲み過ぎ、食べ過ぎでダウンしていった。

ある意味、昨日よりも倒れている人数は多いかもしれない。


これだけのご馳走とお酒を用意出来るウィリアムの街への憧れは世界中に広がった。


その結果、

ロンムウィリアムとカンロウィリアムへの移住希望者が増えたのは別の話。




翌日。

各国の軍は移動を開始した。

非常に人数が多いので、簡単には終わらない。

全員の移動が終わる頃には日は傾き始めていた。


ウィリアム関係者だけが煙のように消えていた。

元々の人数が少ないのと、ポータブル転移陣があるため、移動には時間がかからない。



みんながウィリアムの街へ戻った後、、、


「ただいま」

ウィルの声が屋敷に響いた。


ウィルは『女神の間』に現れた。

みんなが部屋に集まる。


「お疲れ様でした、ウィル様。」

「魔神討伐、ご苦労様でした。」

「連合軍も無事勝利しました。」


口々に皆がウィルの帰還を喜び、

また不在の間の報告をした。


「みんなの協力のおかげだね。

ありがとう。

まずは風呂でゆっくりしてくるよ。

それで、夕食後にみんなの報告も聞くし、私からも状況説明をするよ。

さすがに今回は疲れたね。」


ソニアが一礼しながら、

「風呂はいつでも入れるように準備してあります。

ごゆっくりと疲れを癒してください。」


ウィリアムとその仲間たちは全員、無事に帰宅することができたのだった。

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