魔神戦 5

ウィルは魔神の変化を察知した。


(ヤバイな~。

自爆かよ!?)


「また大技を撃ってくれるのかい?

当たると思ってんの♪」


軽い挑発で行動を変えようと画策するが。


「感謝して受け止めろ!

俺の渾身の一撃だ!

避ければこの空間も耐えられんぞ!」


(だろうね。

魔神の全身全霊を込めた一撃をまともに受ければ、この神域は破壊される。

受け止めたら、私も無事とは思えないけど。)


「この空間がどうなろうと知ったこっちゃないよ。」


「ならば放置すればいい!

この空間が破壊されれば、元の世界にどれ程の影響が出るか、わからん貴様ではないだろう。」


(妙に冷静だな~。

『この神域ごと破壊』

想定していた中でも、最悪のパターンの1つだね。

・・・そう想定していた中で、ね。)


「ありがたいね。

私のことをそこまで責任感のある男と評価してくれて。」


ニヤリと笑うウィル。


「もう会話は不要だ!

この一撃を貴様が受け止められるか、どうか。

それだけだ!」


「後悔するなよ。」


「この一撃に俺の全てを賭ける。

受け取れ!!!」


ウィルの声を魔神の叫びがかき消す。


闇がすべてを塗り潰す。

力の奔流がすべてを呑み込む。

先ほどとは比べ物にならない巨大な力。

圧倒的な破壊が空間を埋め尽くす。



「転魔鏡システム起動!」

ウィルの声をきっかけに無数の鏡が空に浮かぶ。


「無駄だ!

俺の全力を受け止められる道具など存在しない!」


その通り。

魔神の圧倒的な力に耐えられる物質など無い。

オリハルコンでも瞬時に折れるだろう。

しかし、、、

転魔鏡は受け止める訳ではない。

転送するのだ。

1000枚近い転魔鏡が闇を転送する。

転送先はドルマ帝国のダンジョン。

ダンジョンはかなりの強度を持つ異界だ。

仮に壊れたところで、こちらには影響は無い。


凄まじいスピードで転魔鏡が闇を転送していく。


パリーン!

しかし、耐えられずに壊れていく転魔鏡も多数出てくる。


パリーン!パリーン!パリーン!

次々に転魔鏡が割れていく。


「ハアアアァァァァ!!」

ウィルも全力で闇を受け止める。

ウィルの全身が眩い光に包まれる。


光と闇の激突!

空間が軋む。


「ウオオオオォォォォ!!」

「ハアアアァァァァァ!!」


2人の叫び声も力の激突にかき消されていく。


勝負はすぐに動き出した。

転魔鏡は次々に割れながらも、着々と闇を転送していく。

転魔鏡は1枚でも相当の魔力を転送できる。

ウィルが撃ちまくっていた雷撃も転送できる程だ。

それが約1000枚。

その効果は劇的だ。

闇はみるみる目減りしていく。



驚がくを隠せない魔神。


何故?


世界すらも破壊する一撃なのだ。


何故?


敵は健在なのに。


何故?


もう撃つ力は残っていない。


何故?


俺は魔神だぞ。

魔神の命がけの攻撃だぞ。


何故?何故?何故?


「お前は未熟だったのさ。」

ウィルの声が響く。


魔神には反論する力も残っていない。


「実力は大差なかった。

十分強かった。

でもお前は無防備過ぎた。

私は勝つために最善の準備をした。

その差だよ。」


立つこともままならない魔神に歩み寄る。


「俺は負けるのか、、、」


「そうだよ。逃がす気はない。

・・・さよなら。」


ウィルは魔神の命を刈り取る。

ウィルの剣は魔神の首を斬り落とす。


魔神はそのまま光の粒になり、徐々に消えていく。




「終わったか、、、

邪神、見てたんだろ?」


パチパチパチパチパチパチ

「さすがだね。

まさか、ここまで圧勝とは思わなかったよ。」


ウィルの声に反応して、1人の少年が拍手をしながら現れた。


「そりゃ、こっちはわざわざ女神エルカレナの神域を借りて、人間の連合軍に時間を稼いでもらって、万全の準備を整えたからね。

これで負けたらカッコ悪過ぎでしょ。」


「魔神も不甲斐ないね。

そういう準備を全て無駄にさせるのが『神』の醍醐味なのに。」


「あんたと魔神じゃあ、格が違い過ぎる。

まぁ、同格の存在なんて簡単には作れないだろうけどさ。」


「あの魔神も作るの苦労したんだよ。」


「魔王を唆して、卵を埋め込んだんだろ。」


「更に経験値が集まるようにも細工したし。モンスターも放ったしさ。

全部あっさり倒しちゃうんだから。

困ったもんだよ。」


少年はふ~、という顔をして両手を広げた。

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