スケルトンメーカー
少し時をさかのぼる。
ウィルが『聖者の剣』を発動させた瞬間。
その圧倒的な浄化の広がりに驚がくした存在がいた。
魔王ダースダルダムである。
魔王は浄化の光が到達する前に感知できた。
大いに慌てた。
浄化の範囲が広過ぎる。
まさか大陸中だとは思っていなかったが、どこなら安全とも判断出来なかった。
魔王はアンデッドではない。
浄化されることもない。
しかし、スケルトンメーカーは違う。
この光に触れれば即座に浄化されてしまうだろう。
スケルトンメーカーは弱い。
戦闘能力は皆無で、転移による逃亡しか出来ない。
しかし、超広範囲の浄化では、転移先で浄化されてしまうおそれがある。
魔王はスケルトンメーカーのもとに駆け寄り、結界を張った。
バンパイアを浄化してしまうような強烈な浄化である。
しかし、さすがは魔王。
結界を張って浄化の光を防いだ。
「ふ~、間に合ったな。
範囲は途轍もなく広かったが、威力は私なら十分防げる程度だったな。
しかし、何者なんだ、、、
こんな反撃など想定外だ。
・・・ん?」
魔王は違和感を感じた。
だが、その正体はわからなかった。
次の瞬間。
スケルトンメーカーは光の柱に飲み込まれた。
「なっ!?」
驚がくの声をあげる魔王。
光の柱が消えさると、
そこにいたのはウィルだった。
「何者だ!」
魔王が叫ぶ。
「知ってどうするの?ダダダ魔王。」
ウィルが軽く応える。
「そのふざけた呼び方!
あの時の声の主か!」
「こうして顔を合わせるのは初めてだね。
まぁ、魔王とよろしくするつもりは無いからいいけど。」
「お前は何者なんだ!
勇者か!?」
「そうだな~。
ダダダ魔王が誰の力を借りたのかを教えてくれたら、教えるよ。」
「な!?」
声を詰まらせる魔王。
「今回の一件、ダダダ魔王には無理だよ。
今までの配下と能力の桁が違い過ぎる。
誰かの手を借りたんでしょ?」
「それをお前に教えてやる必要は無い!」
「そう。
じゃあ、喋りたくなるようにしてあげるよ。」
ウィルが拳を握る。
魔王はウィルから発せられた殺気に一瞬息を飲む。
だが、
ウィルがいきなり横っ飛びをして転がる。
ウィルの今までいた空間が歪んだ。
いきなりの展開に呆気に取られる魔王。
「ハハハハ、凄いね。避けられるんだ♪」
無邪気な子どもの笑い声が響いた。
ウィルは声のした方を見据える。
楽しそうに立つ子どもがいた。
中性的な見た目の男の子。
かわいらしい見た目に反して、本能的な恐怖が止まらない。
理由はわからない。
ただ、今すぐ逃げだしたい。
そして理性は、逃げても無駄だと判断している。
「何者だ?」
ウィルが誰何する。
平静を装うが冷や汗が止まらない。
「みんなからは邪神って呼ばれてるよ。
よろしくね♪」
邪神。
女神エルカレナを遥かに凌ぐ存在だ。
圧倒的だ。
今回の一件にはヤバイ存在が裏にいるとは思っていた。
しかし、想像を遥かに上回っていた。
おそらく瞬殺。。。
邪神がその気になればこちらに拒否権は無い。
「ふ~。」
ウィルはため息をついた。
おそらく、いや、間違いなく、何を考えているかも全て筒抜けだろう。
芝居は無意味だろう。
しかし、まぁ、多少の意地はある。
いくら恐ろしくても、
今すぐ逃げ出したくても、
そんな素振りを見せるつもりは無い!
「何が目的なの?」
ウィルが尋ねた。
「面白くするために決まってるじゃん♪」
ニッコリ笑う姿は無邪気そのものだ。
しかし、やっていることはえげつない。
「なるほどね。
じゃあ、あんたの基準でいけば、ここで私が魔王に手を出すのは『面白くない』ってことか?」
「ピンポーン♪」
邪神は楽しそうに笑った。
「あんたの『面白い』『面白くない』の基準が知りたいんだけど?」
「その質問は『面白くない』ね。
お前ごときが僕を理解出来る訳がないだろ。」
「あっそ。なら私が生きている限りはあんたの許容範囲内にいると思っとくよ。」
「フフフ、
いつ一線を越えて殺されるかわからない。
その方がドキドキして楽しいだろ?」
「まったく楽しくはないよ。
さてと、あんたの近くにいるといつ殺されるかわからないから、そろそろ退散させてもらうよ。」
「いずれ、また会えるよ。」
ニッコリ笑う邪神。
「出来れば遠慮させてもらいたいね。」
そう言い残しウィルは消えた。
残された魔王に対して、
「じゃあ僕も行くよ。
この場所は人間に知られたから早く移動した方がいいよ。
じゃあね~♪」
邪神は明るく手を振りながら消えていった。
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