聖者の剣

「ふ~、これでよし!」

自室で作業を終えたウィルが一息ついた。


部屋を出て、ソニアの部屋を訪ねた。


「あれ、こんな時間に珍しいですね。」

「どうされましたか?」

時刻は深夜。

パジャマ姿のソニアとカシムが応対する。


「アンデッド対策の目処が立ったんだ。

明日の正午に発動する。

今いるアンデッドは消滅するし、丸1日はアンデッド化も発生しなくなるはずだよ。

各国に朝一に連絡を回して。」

「承知しました。」

「それと、キルアたちにもダンジョンにいるように徹底しといて。

キルア以外は浄化されちゃうから。」

「間違いなく、お伝え致します。」


「それと、カシム、ソニアは街に待機していて。何が起きるかわからないから。」

「「はっ。(はい。)」」


「明日は忙しくなるよ。おやすみ~。」

そう言ってウィルは去って行った。


残されたカシムとソニア。

「何をされるつもりでしょうか?」

「わからないけど、言葉通りなら世界規模の浄化魔法の発動だろうね。」

「バンパイアを浄化できるほどの威力を世界中に、、、」

「ウィル様は常に想像を越えてくるね。」

「でも、今回はいつもより、ちょっとピリッとされています。」

「アンデッド化を行った何者かの存在を意識されているんだろう。」

「どうなるんだろう?」

「わからないけど、ウィル様を全力でお支えするだけだよ。」

「そうね。」



そして、翌朝。

いつものメンバーに今日の予定が発表された。


「今日の正午に世界中のアンデッドを浄化させる。併せてアンデッド化の防止も発動させる。効果は丸1日程度。

急ぎ、準備を進めて欲しい。」


ミルから質問が出た。

「ウィル様、よろしいですか。」

「もちろん。」

「浄化の範囲はどこまでですか?対象外もございますか?」


「陸地はほぼ全域。周辺の海域も含む。

ダンジョン内部は対象外だから、キルアたちにはダンジョン内にいるように伝えて。

他には?」


「アンデッド化防止効果の1日が経過した後はどうなるんだ?

またアンデッド化が再開するのか?」

ディーンも質問する。


「未定だね。

効果が発動している間に原因を突き止めて、解決したいと思ってる。

今回用意した、この『聖者の剣』がアンデッド化防止の切り札なんだけど、使い捨てなんだよね。

だから、解決出来なかった場合はアンデッド化がまた再開してしまうんだ。」


ヘンケン

「各国に依頼する事項はございますか?」


「正午を境に大きく事態が動く可能性がある。最善の備えをお願いする。」

「承知致しました。」


ウィルが他に質問が無いことを確認して、

「ここから事態がどう転がるかわからない。

だが、ベストを尽くす。

だから、信じて待っていてくれ。」


「「「はっ(はい)!!」」」

全員の声がそろった。



慌ただしく午前中の時間は進んだ。


そして昼前。

ウィルはドルマ帝国にいた。

大陸の中心に位置するドルマ帝国。

その人里離れた森の中にウィルが簡易の祭壇を作っていた。


ウィルはただ一人、祭壇の中心に座っていた。

先ほどから集中を高めている。

そして、ウィルは『聖者の剣』を大地に突き立てた。


『聖者の剣』から強烈な光が放たれる。

八方に光が伸びていく。

その光が行き着く先は、また『聖者の剣』であった。

光の届いた『聖者の剣』からは再び八方に光が伸びていく。


大量の『聖者の剣』を用意すること。

そして、その『聖者の剣』を世界中に配置すること。

その準備に時間がかかった。


光は蜘蛛の巣のように広がっていく。

大陸中が光の網に包まれた時、一際大きな光が世界を包み込んだ。


世界が荒々しい光に包まれた時、強烈な浄化が行われた。

ゾンビやスケルトン、ゴースト。

全てが光に包まれ、滅びていった。


強烈な浄化の光が収まった後。

『聖者の剣』は淡く光を放ち続け、光の網はそのまま残った。

この光の網がアンデッド化を防ぐ力を発揮するのである。


こうして、世界からアンデッドが駆逐された。

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