それぞれの戦い ショーカイ

ドルマ帝国内においてもノロイの被害は甚大であった。

ノロイ討伐の軍が派遣された。


ショーカイ将軍も従軍していた。

先日の三連鬼将との戦いで部隊は大きく疲弊した。

死者、重傷者を多数出し、いまだに軍の再編は進んでいない。

そんな中、今回のノロイの襲撃が発生した。


帝国は急ぎ、軍を用意することになった。

そして、戦力が整っていないショーカイ将軍も左翼担当として戦いに参加することになった。



「厳しいな。」

ショーカイ将軍はこぼした。

既に連戦を経ている。


最初にノロイの集団と交戦。

それほど大きな群れではなかったが、アンデッド化のために、戦闘は長期化した。

なんとか討伐を終えた時には、新しい群れの接近情報がもたらされた。


その戦いもなんとか勝利できた。

しかし、兵士は疲弊している。

満足な休みが取れない状況の中、

「後数分で接敵する模様です。」

「そうか。すぐに態勢を整えさせろ。」

「はっ!」


(我が隊はなんとかなるだろう。

しかし、右翼は厳しいだろう。

先ほどの戦闘でも手間取っていた。

次の戦いに耐えられない可能性が高い。

右翼が崩れれば、総崩れの可能性もある。

いや、右翼だけではない。

こちらもどこまで戦えるか、、、)


「見えてきたな。

総員、構えよ!」


再びノロイとの戦いが始まった。

兵士の士気を保つ為にショーカイ将軍は自ら槍を振り回す。


「俺に続け!

雑魚はどれだけいても雑魚だ!

蹴散らすぞ!」

最前線で檄を飛ばすが反応は悪い。

終わりの見えない連戦が兵士の士気を蝕んでいく。


戦いが長引けば戦線が崩壊する。

もはや予感ではなく確信に近い。

このままでは駄目なことはわかっているが打つ手がない。


そこに伝令が来た。

「もうすぐ援軍が来ます!それまで堪えてください!」

「承知した。」


ショーカイ将軍は半信半疑であった。

軍の配備を知るショーカイ将軍には援軍と呼べる戦力が近くに存在しないことは知っている。

鼓舞するためのデマか?

しかし、バレれば致命的なほど士気が落ちる。

そんな悪手、やるとは思えない。


「援軍が来るぞ!

それまで踏ん張れ!」

ショーカイ将軍は兵士たちを鼓舞した。



そして、空から援軍はやって来た。

「ギャャャゴォォォォ!!」

咆哮が響き渡る。

その声につられて、兵士たちが上空を見上げた。


ドラゴンの隊列。

1頭でも珍しいのに、5頭が並んで飛んでいる。


「ドラゴンだと!?」


ドラゴンなど滅多にいない存在だ。

見かけるとしたらダンジョンの奥深く。

それが地上で、しかも隊列を組んで飛んでいる。

あり得ない光景であった。


「何が起きているんだ?」


飛来したドラゴンたちは一斉にブレスを放った。

ドラゴンのブレスは圧倒的な破壊力でノロイたちを飲み込む。

呆気にとられる兵士たち。


いち早く正気に戻ったショーカイ将軍は、

「ドラゴンの狙いはノロイだ!

巻き込まれないように距離を取れ!」

兵士たちに指示を出した。


ドラゴンたちは次々にノロイを焼き払う。

ブレスで死にアンデッド化した者も、即座に焼滅していく。


絶対的王者による、一方的な破壊。

あれほど苦労したノロイたちを瞬く間に減らしていく。


大半のノロイを倒したところでドラゴンは飛び去っていった。


焼け焦げた大地にショーカイ将軍の声が響く。

「勝機だ!

残存ノロイを殲滅せよ!

突撃!!」


もちろん、ショーカイ将軍は知らなかった。

ドラゴンたちが先ほど告げられた『援軍』であることを。。。

当たり前だが、ドラゴンの援軍なんて、普通ならあり得ないし、信じる訳がない。


先刻、ウィルが皇帝アウグスティンに、

「援軍としてドラゴン派遣したから、

よろしく~。」

とだけ告げて去っていった。


そんな意味不明な伝言であるが、皇帝は真実だろう、と判断し、前線で戦う部隊に伝えさせたのである。


苦戦必至と考えていた相手が半分以下に数を減らしていた。

ゴールの見えた戦いは兵士たちを奮起させた。


そして、飛び去ったドラゴンたちはノロイの群れを見つけては次々に倒していった。


帝国軍はノロイの群れを殲滅。

ようやく連戦から解放された帝国軍は安堵のため息をついていた。

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