作戦会議

各国の王との打ち合わせを終えて。


「ソニア、1時間後に緊急会議を始める。主要メンバーを集めてくれ。」

「承知しました。」


ウィルはソニアに緊急召集を依頼し、自身は転移した。



転移した先は、、、

「突然の訪問、非礼をお詫び致します。」

恭しく礼をするウィル。


「そう思うなら、突然出てくるのを止めてくれ。」

「申し訳ございません。緊急事態ですので、ご容赦ください。」


ここはドルマ帝国、王宮の謁見の間。

皇帝が玉座に座り、何者かの謁見を受けていた。

そんな最中にウィルが突然登場。

一部の衛兵がウィルを取り押さえようと動き出したが、皇帝が制止したため、混乱は最小限で収まっている。


「時間が無いので、早速本題に入ります。

アンデッド化とノロイの大量発生、どちらも帝国国内でも発生していますか?」


「・・・ああ、大きな問題になっている。」

一瞬の沈黙。

他国の者に国の内情をバラす行為。

本来はするべきではないが、ウィルに隠しても意味が無い、そう判断したのだ。


「各国から要請を受け、私が解決に尽力することになりました。

そこでドルマ帝国にも足並みを揃えて頂きたい。」


「・・・要求に従うメリットはあるのか?」


「私と敵対しない、です。」

ウィルは不敵にニヤリと笑った。


「・・・具体的には何を求める?」


「問題が落ち着くまでは他国を侵攻しない。自国の問題解決に専念する。それだけです。」


「わかった。約束しよう。」


「ご英断に感謝致します。

こちらはほんの気持ちです。

それでは失礼致します。」

そう言うと、ウィルは消えてしまった。

小さな箱だけが残されていた。


「その箱を確認せよ。」

皇帝の指示に従い、衛兵が箱を調べた。

「アイテムが多数入っています。

これは『浄化の風』です。

アンデッドを広範囲に浄化するアイテムです。」

衛兵が報告した。


「今一番欲しいアイテム、ということか。

扱いに困る男だ。。。

そのアイテムは中身を確認し、討伐任務にあたっている部隊に持たせろ。」

「はっ!」


・・・謁見中だった男は怒涛の展開の中、1人跪いたまま、取り残されていた。



ドルマ帝国から戻ったウィルはすぐに緊急会議を始めた。


「みんな、よく集まってくれた。

ありがとう。

緊急事案だ。

まずは現状を報告するね。」


全員が頷く。


「現在、世界中で死んだ人間やモンスターがアンデッド化して暴れだすという事態が起きている。

それと並行して、ノロイと呼ばれる謎のモンスターが大量発生している。

アンデッド化の影響もあり、簡単に討伐できない状況のようだ。

エール王国、ロンム王国、フィガロ王国、カンロ王国からの協力要請を受けている。

なお、ドルマ帝国にも足並みを揃えるように釘を刺して来たから、そこは問題無いと思う。

現状説明は以上だ。

何か質問は?」


ミルから質問が出た。

「ウィリアムの街ではアンデッド化が発生していません。理由はわかりますか?」


「外の街を作る段階で、強い浄化能力を持つように設計してある。弱いアンデッドなら一瞬で浄化される。

それと、おそらくダンジョンの中は対象外だ。

だからウィリアムの街では影響が出ていないと考えている。」


続いてリクソン。

「大量発生しているノロイの戦闘能力は?」

「不明だ。

一般兵でも戦えているとの情報もあるが、安易に考えない方がいいだろう。

情報収集を頼む。」


「他にあるか?」

特に質問は出ない。

「よし。

じゃあこれからのことだけど、

ミル、タチアナ。

ウィリアムの街への避難を希望する人間も出てくるだろう。混乱のないようにしてくれ。

人命第一だ。」

「承知しました。」


「ミレーヌ、キャナル。

広範囲浄化系のアイテムを大量生産してくれ。利益よりも問題への対処を優先だ。

併せて情報収集も頼む。」

「わかったわ。」


「ディーン。

警戒エリアを拡大。父上の領地も巡回範囲に入れてくれ。」

「わかった。」


「リクソン。

各国の救援に向かう可能性が高い。いつでも動けるように準備を頼む。

装備の拡充はミレーヌに相談してくれ。」

「承知しました。」


「メル。」

「へっ?」

こういう場では特に呼ばれることのないメルが間の抜けた返事をした。

「メルとミリア、リンカは広範囲の浄化が出来るだろ。今回のアンデッド化への切り札になる。協力を頼む。」

「わ、わかりました!」

メルが握り拳を作って、やる気を見せる。


「頼りにしてるよ。

さてと、今からする話は他言無用だ。」

再びみんながコクリと頷く。


「今回の事件だが、魔王に出来る範囲を逸脱している。今までの四天王や三連鬼将などと比較しても規模が違い過ぎる。

魔王よりも強大な存在が手を出している可能性がある。

常に不測の事態を想定しておいてくれ。」


「魔王よりも強大な存在など聞いたことがありません。何者ですか?」

ヘンケンの質問に対して、


「わからない。

ただ魔王が無理をしただけって可能性もあるからね。

それでも、最悪の事態を想定しておくことは大切だからね。

いいかな。」


「「「「はい。」」」」

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