武器が欲しい

「は~、気に入ってたのにな~。」

「仕方ありませんよ。どんな物でも壊れる時は壊れます。」


折れた魔剣ガルガイアを見ながらため息をつくウィルと慰めるカシム。


「まぁ、折れたのがショックなのもあるけど、それよりも一撃で簡単に剣を折ってしまう敵が存在する。その事の方がショックかな。」

「それは敵なのでしょうか?」


「まぁ、正確に言えば敵というよりも、圧倒的な不条理って感じかな。感覚的には神さまってのに近いかも。」


「女神様がされた、ということですか?」

「いや、女神様よりも強力で厄介な存在って感じかな。」


「女神様よりも強力な存在、、、」


「そうそう。それも人間を守る気がないから厄介だよ。人間を積極的に滅ぼす気も無さそうだけど。」


「もう私の理解が及びませんね。」


「カシムだけじゃなく、私も理解はできないよ。ただ理解できないだけに、敵対するリスクは考えておかないとね。」


「どうにか出来るものなんですか?」


「いや、たぶん無理だね。だから憂うつになるんじゃん。

まぁ、考えても仕方ないね。

気晴らしに装備を一新しようかと思ってるんだ。」


「修理ではなく、一新ですか?」


「最近物足りなさは感じてたからね。

と、言うことで今日から武器と防具の製作に入るんで、よろしく。」

「承知致しました。」



1週間。

ウィルはほぼ部屋に籠って作業をしていた。

そして、、、


「完成したぞ~。」

早速、夕食後にお披露目をすることになった。


「みんな、期待していいよ♪

けっこうな自信作が出来たからね。」

ウィルが嬉しそうに言った。


それに比べて、

「はぁ、ウィル様の自信作、、、

見るのがこわいわ、、、

でも見てみたい。」

ミレーヌは微妙な表情をしていた。


「前の剣も相当な代物だったぞ。」

ディーンがそう言うと、

「超伝説級と呼ぶべき剣でした。今までの伝説級の武器が霞んでしまう、そんな剣でした。」

キャナルが続けた。


「一剣士として、見てみたいですね。」

カシムも楽しみにしているのが伝わってくる。


「あんまり焦らすのも良くないからね。

これだよ!」

ウィルがアイテムボックスから一振りの長剣を取り出した。

うっすら紫がかった刀身は美しくもあり、気品を感じさせる。

みんなが剣に見とれていた。


「『ウィリアムの剣』だよ。」


「・・・そのままの名前だな。」

「仕方ないだろ。鑑定したら、そんな名前になってたんだから。」

「えっ!?鑑定結果がその名前なの!?」

ミレーヌが驚きの声をあげた。


「それって珍しいの?」

ミルの質問にミレーヌが答えた。

「前代未聞よ。『鉄の剣』は誰が作っても『鉄の剣』なの。作った人の名前がつくなんて聞いたことないわ。」


「鑑定してみる?」

ウィルが剣をミレーヌに渡した。


ミレーヌがじっと剣を見つめる。

「どうだった?」

「・・・なんでなの??」

「やっぱりウィリアムの剣だった?」

「鑑定不能よ。私、鑑定のスキルレベルMAX なのに。」

「「「ええっ!?」」」


「それなら、これを使ってみて。」

ウィルがアイテムボックスから眼鏡を取り出した。

「『女教師の眼鏡』。鑑定スキル+3してくれるアクセサリーだよ。」

「それも破格の性能ね。お借りします。」


ミレーヌが眼鏡をかけて、剣を見つめる。


「確かに『ウィリアムの剣』ね。

鑑定結果を読み上げるわね。

『ウィリアムの剣。

本来、この世界には存在し得ない剣。異次元の破壊力をもつ。ウィリアムが作り、ウィリアムが使う。名前には量産しないで、という女神の願いが込められている。』」


「「「・・・」」」

静寂が訪れた。


「女神様も大変ね。」

「確かに、、、」


「ちなみに、どれぐらいの攻撃力があるのですか?」

リクソンが尋ねると、

「私にはわからないわ。」

ミレーヌがお手上げのジェスチャーをした。


「オリハルコンがミスリルみたいに簡単に斬れるよ。」

ウィルが説明をした。


「なんちゅう説明だよ、、、

ウィル様、言っとくがミスリルも一般の冒険者からは憧れの存在なんだよ。

決して弱くないからな。」

「ごめんごめん。でも、実際そんな感じだよ。本気で斬りにいけば、大抵斬れるよ。」


「そりゃ、女神様も止めるわ。」

「は~、なんか疲れたわ。」

「同感。」


「え~、この後『ウィリアムの鎧』『ウィリアムの兜』『ウィリアムの盾』って続くのに~。」

「装備を全て一新されたんですか?」

「そうそう、全て『ウィリアム』シリーズにしたよ。

攻撃力も防御力もかなりアップしたね。」


さすがに1つ1つは見てられないので、防具は一気に披露された。

こうして唯一無二のウィリアムの装備が完成した。

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