幕間 ウィルっていったい?
翌朝。
「キリク様、朝食の後、少しお時間を頂いても宜しいですか?」
「ええ、もちろんです。」
ヘンケンがキリクに声をかけた。
キリクの部屋に移動すると。
「急に申し訳ございません。ウィル様から、今の社会情勢を教えて差し上げるようにご依頼頂きました。」
「ありがとうございます。助かります。」
そして、授業が始まった。
「100年前と国のバランスが変わっています。ロンム王国、エール王国、フィガロ王国、ドルマ帝国はそのままですが、カンロ連合王国は分割されカンロ王国とカンロ共和国に割れています。」
「なるほど。」
「更に魔王も存在しています。勇者様もいらっしゃいます。」
「勇者はどこの国についてるんだ?」
「勇者様はエール王国の出身です。ですが、ウィル様の庇護下にいらっしゃいますので、どこの国の命令も受けていません。」
「ウィリアム様のあの戦闘力を考えれば、どの国も口出しをできまい。」
「フフフ、キリク様、ウィル様は戦闘だけが得意な訳ではないんですよ。」
「どういうことですか。」
「ウィル様は個人としても最強ですが、ウィル様の手足として働く騎士団も世界最強と勇名を馳せています。」
「なるほど。
あの実力だ。ウィリアム様なら最強の騎士団を育てることも容易でしょう。」
「私は軍事面は専門外ですが、そのようです。」
「ウィリアム様とその最強の騎士団。
そこに逆らう愚か者はいないだろうな。
圧倒的な力だ。」
「ウィル様は軍事的な力で他を押さえつけている訳ではございません。
ウィル様は世界最大の商会のオーナーという顔もお持ちです。
潤沢な資金、広大な情報網、世界規模の物流。
全てがウィル様のお力です。」
「凄まじいな。どう見ても商人には見えないが。」
「直接商売をしなくても、優秀な部下をお持ちです。」
「なるほど。確かに不思議な魅力を持っている。従う者も多いだろう。
しかし、それほどの力を持っているとなると国との軋轢も多いんじゃないか?」
「ゼロとは言いませんが、非常に少ないですよ。なにせ、エール王国、ロンム王国、フィガロ王国、ロンム王国の4ヶ国同盟の盟主のようなお立場です。
更にドルマ帝国の皇帝にも深い繋がりを持ってらっしゃいます。」
「本当なのか!?それではまるで、この世界の王ではないか!」
「そうですね。ですがウィル様は世界への干渉は最小限にしたいとお考えです。
表に出るのは魔王侵攻などの人類の危機だけです。」
「凄い男だとは思っていたが想像を遥かに越えているな。」
「ウィル様は常に想像の範囲外のことをされますので。。。
今日はこれぐらいにしておきましょう。
何か気になることがあれば、なんなりとおっしゃってください。」
「ありがとうございます。」
そして、昼食後。
「はじめまして、キリク様。
冒険者ギルド、ウィリアム支部の支部長をしております、トーマスと申します。」
「キリクだ。よろしく頼む。
しかし、支部長自ら来られるとは。」
「ハハハ、ウィル様のご依頼とあれば、可能な限り、お応えしますよ。」
「この街の領主だからな。」
「それもありますが、ウィル様は冒険者ギルドにとっても、私個人にとっても、特別な方です。多少の無理はしますよ。」
「特別な方、か。
ちなみに、どう特別なんだ?」
「そうですね~。私の個人的な話は割愛しますね。冒険者ギルドの立場でお話致します。
このドラクロアダンジョンは、ウィル様が発見し、管理されています。
そして、ドラクロアダンジョンは世界一の人気とドロップアイテムの産出量を誇ります。
そのため、大量の冒険者と商人がこのウィリアムの街を目指してやってきます。
今では冒険者ギルドの中でも最重要拠点の1つとなっていますよ。」
「なるほどな。もし私が冒険者になりたいと思ったら、どうしたらいい?」
「私に言って頂ければ、手続きはすぐに終わらせますよ。
ウィル様のお仲間ですから、実力は問題無いでしょうし、このドラクロアダンジョンで働けば、かなり稼げると思いますよ。」
「そうか。ただここにずっといる訳ではなく、世界を見て回りたいんだが。」
「それでしたらミレーヌさんに相談してみてはいかがですか。
彼女は商売に詳しい方です。
冒険者が世界を回るなら商人の護衛を受けるのが王道ですからね。」
「アドバイスをありがとう。考えてみるよ。」
「そうしてください。私はだいたい冒険者ギルドにおりますので、いつでもお越しください。それでは、失礼致します。」
「助かるよ。」
ウィリアムの庇護下にいるか、
自由気ままに旅をするか、
どうするかな。。。
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