キリクのその後

迫りくる光をウィルが剣で受け止める。

「ハァァァァァァ!!」


気合と共にウィルが叫ぶ。

ウィルにも余裕はない。

集中を切らさず、全力で光の波動と対峙する。


最初に限界を迎えたのは、ウィルの剣だった。

『魔剣ガルガイア』は世界最強の剣と言っても過言ではない。

ウィルの実力も相まって、オリハルコンすら断つ、異常な攻撃力と耐久性を誇っている。

それが折れたのだ。

まだ光はおさまらない。


ウィルは折れた剣を手放し、両手で受け止める。


そして、ようやく光が終わった。

ウィルは片膝をつき、肩で息をしている。

そんな状態であっても、ウィルはすかさず、ダンジョンコアに炎弾を放った。


炎弾はダンジョンコアに当たり破裂する。

ドゴォォォォン

ダンジョンコアは砕かれ、地面に落ちた。


「はぁ、はぁ、はぁ、なかなか厄介な相手だったね。」

「今のはなんだったんだ?」

「う~ん、正確にはわかんないけど、当たった相手を変質させてしまうような力を持っていたね。」

「変質?」

「そうそう。多分、人間ではない何かにされるんじゃないかな。

少なくとも、こんな悪趣味なダンジョンを作った相手の攻撃だからね。当たったら悪い結果しか待ってないと思うよ。」

「確かにな。これからどうするんだ?」

「さすがに疲れたから、さっさとダンジョンを出て家に帰るよ。

キリクはどうするの?」

「ダンジョンはさっさと出たいな。これからのことはダンジョンを出てから考えることにするさ。」


「じゃあ、行こうか。」

「あぁ」



「・・・おい、これはなんだ?」

「私の家だよ。」

「いや、そういうことじゃなくて。」

「あぁ、転移だよ。便利でしょ。」

「そんなこともできるのか。」

「まあね。とりあえず、お風呂とごはんの用意をさせるから、それから今後のことは考えたらいいよ。」

「ああ、ありがとう。厚意に甘えるよ。」


「うう、気持ちいい、、、」

お風呂からはキリクのすすり泣く声が聞こえてきた。


「うう、旨い、、、」

涙を流しながら、爆食するキリク。


食後のティータイム。

「みんなに紹介するね。

キリクさんだ。

見捨てられた地のダンジョン『深淵』の最深部に囚われてたところで出会ったんだ。」

「キリクだ。宜しく頼む。」


「ちょっといいか。」

ディーンが声をかける。

「何?」

「確認したいポイントが山のようにあるんだが、、、どこまで質問していいんだ?」


「私から事情を話したいがいいか?」

「そうだね。私もダンジョンで軽く聞いただけだから、落ち着いて話をしてもらえると助かるよ。」

「ありがとう。」


そしてキリクは話し始めた。

「・・・」


初めて知ったけど、キリクは勇者だった。

魔王を倒した後、政争に巻き込まれてしまったらしい。モンスターを相手にしている方が気楽だったらしい。

それが嫌で全てを捨てて冒険者になった。

そして、見捨てられた地へ行き、ダンジョンを発見した。

それからは前に聞いたのと同じだった。

延々と無限の時間を戦い続けていたらしい。


キリクが話し終えると沈黙が訪れた。


ミレーヌが口火を切る。

「ところでキリクさんはいつの時代の方なのですか?」

「10年や20年では済まないだろうな。

私はロンム王国出身だが、当時はサラジェス陛下の治世であった。」


するとタチアナが、

「サラジェス様は今から約80年前に亡くなられています。」

ヘンケンが後をついで、

「確か、その20年ほど前に魔王討伐がなされたはずです。」


「つまり100年前か。」

「俺は100年も囚われていたのか。。。」

キリクがつぶやく。


「よく頑張ったね。

しばらくウチの屋敷でゆっくりすればいいよ。それで何かやりたいことが決まればやればいい。」

「ありがとう。しかし、そんなに甘えてしまっていいのか。」

「大丈夫だよ。こう見えて、この街の領主やってるからね。部屋も余裕があるし、お金にも余裕があるからね。」

「すまない。」

「気にしないで。ここにいるメンバーは私の信頼できる仲間だから、色々頼ってよ。今の世の中のかこととか、知らないと判断できないでしょ。」

「何から何まですまない。」

「気にしないで。ソニア、後で部屋に案内してあげて。」

「承知しました。」


こうしてキリクの新しい生活が始まった。

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