深淵
ウィルは続けて言った。
「こんな牢獄のようなダンジョン壊してやろうよ。」
「ダンジョンを壊す?
だが、ダンジョンコアも見当たらない。」
「大丈夫だよ。コアが無いなら、ダンジョンそのものを破壊すればいい。」
「そんなことができるのか?」
「たぶんね。」
「信じられん、、、」
「とりあえず、食事休憩にしようか。
キリクもダンジョンに囚われて、まともな食事してないんでしょ?」
「飯を食ったのが何年前かもわからない。飲まず食わずで戦い続けていたからな。」
「ダンジョン内だから、食べやすいサンドイッチぐらいだけどいいかな。」
「そんな物を持っているのか!?」
「常に美味しいごはんを食べたいじゃん。」
ウィルは2つのサンドイッチをアイテムボックスから取り出す。
「後、ドリンクもいるよね。フルーツジュース。」
サンドイッチとコップをキリクに渡した。
サンドイッチにかじりつくキリク。
そして、涙を流しながら、無心にがっつく。
瞬く間に食べ終え、ジュースを飲み干した。
「う、、、旨かった、、、
こんなに旨いと感じたのは初めてだ、、、
ありがとう、ウィリアム。」
「喜んでもらえて良かったよ。
食べ終わるまで、ちょっと待っててね。」
ウィルがサンドイッチを食べ終えると、
「よし、お腹も膨らんだし、そろそろやるか。」
「どうするんだ?」
「あっ!?そう言えば忘れてた。」
「何をだ?」
「キリクは長い間、このダンジョンに囚われて、不老不死にされているんだよね。」
「そうだ。」
「そうすると、もしかしたら、ダンジョンを破壊したら、その反動で死ぬ可能性もあるんじゃないかな。」
「、、、そうかもしれんな。だが、このダンジョンが破壊できるならかまわん。」
「了解。もちろん、そんなことにならないように手は打つけどね。」
「で、どうするんだ?」
「簡単だよ。ダンジョンを攻撃するんだよ。キリクは余波で死なないように防御に集中してて。」
「・・・わかった。試してみてくれ。」
キリクはウィルの考えを無謀だと思った。
ダンジョンを攻撃するなど無意味だと。
だが、それでウィルの気持ちの整理が出来るならいい。その程度の認識だった。
キリクが防御姿勢を取ると、キリクの周りに結界が張られた。
ウィルが集中していく。
「スー、ハー、スー、ハー」
極限まで集中していく。
キリクは目を見開いた。
自分は最強に限りなく近いと、
ウィルとの差も少しだと、
そんな自分の認識が甘かったと痛感していた。
圧倒的な力の集中。
こんなことは見たことがない。
ウィルの力が極限まで高まる。
「『断理』」
ウィルが剣を振り抜く。
形容し難い何かが、漆黒の刃となり、全てを斬り貫く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ダンジョン内に不吉な音が鳴り響く。
「なるほどね。逃がさないよ。
『断理』」
ウィルは今度は別の方向に技を放つ。
再び、壁を斬り貫く。
ギギギギググガガガァァァ
悲鳴?のような音が鳴り響く。
ウィルが開けた穴を中心に壁がボロボロと崩れていく。
それは通路のように奥へとつながっている。
「さぁ、ご対面といきましょうか。」
ウィルはぐいぐいと奥に入っていく。
キリクも一瞬迷ったものの、ウィルに追随する。
そして奥には小さな小部屋があった。
そこには大きなダンジョンコアが浮かんでいる。
しかし、そのコアには大きな斬り傷がついていた。
「お前がこのダンジョンのコアだな。」
『はい。そうです。』
「何故、ダンジョンクリアした者を閉じ込めた?」
『このダンジョンはそのように作られています。』
「誰が作ったんだ?」
『不明です。』
「何故、このダンジョンの噂が世間に広まったんだ?クリアしたら出られないんだから、噂が広がる訳がないだろ。」
『不明です。』
「お前はいつから存在している?」
『不明です。』
不明ばっかりで会話にならないな~。
「お前を作ったか、変容させたかした相手に関する情報はないのか?」
『1件ございます。』
「教えてくれ。」
『再生します。「よくここまで来られたね。これで君も最強の人間になれたんじゃないかな。じゃあね~。」』
子供の声だった。
「悪趣味だな。」
『これより最終プログラムを起動します。』
「なんだ!?」
キリクが驚きの声をあげる。
「わかんないけど、ろくでもないと思うよ。」
ダンジョンコアが輝きだす。
「キリク!私の後ろに来い!」
キリクがウィルの後ろに移動する。
ダンジョンコアから光の波動が撃ち出された。
凄まじい光を放ちながらウィルとキリクに迫ってくる。
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