ダンジョンマスター

『冥府之王ジュデッカ』を倒し、更に奥に進む。

そこにはダンジョンマスターがいるはず。


ウィルが降りて行くと1人の男がいた。

その男もウィルの姿を確認した。


「ついに、、、ついに来たのか!」

「こんにちは。」

「挨拶などいい!剣を抜け!!」


ヤバイ

目がバキバキだ。

挨拶抜きに剣を抜けって、どんだけ戦闘狂だよ。


「剣を抜く前に、少し話をしたいんだけど、、、」

「俺はもう待てん!

早く剣を抜け!

これ以上待たせるなら、こちらから行くぞ!」


会話にならないね。

ゲオルグも相当な戦闘狂だけど、ここまでじゃない。

相当こじらせてるね。

とりあえず無力化しよう。


ウィルもようやく心を決め、剣を抜く。


「さぁ、かかって来い!」

男の声に合わせて、ウィルが一気に距離を詰める。


キーン

剣と剣が合わさる。


それから数合。


強い。狂気を感じる。

荒々しい。

しかし、隙はない。


「いいぞぉぉぉ!

もっとだ!

もっと力を見せろぉぉぉ!」

歓喜の声をあげながら激しく打ち合う。


狂ってる。


ウィルは一気に後ろに飛び、雷撃を放つ。

しかし、男は駆けながら雷を全て切り払う。

「やる!」

「もっと力をぉぉぉ!!」


そのまま切り結ぶ。

力も強い。スピードもテクニックもある。

おそらく、レベル200相当。

人間の限界に達しているんじゃないか。

世界最強クラスなのは間違いない。


ウィルが前世で達した域まで来ている。


しかし、今のウィルには及ばない。

『人間の限界』を超えなければウィルの相手は務まらないだろう。


ウィルがギアを上げていく。

男も必死についていく。

しかし、追いつけない。

徐々に男に傷が増えていく。

ついに男の右腕を切り落とす。

ウィルは返す刀で男の首を狙う。


剣が首に達する直前。

男は穏やかな笑みを浮かべた。


ぴたりと首の直前で剣が止まる。

「なっ!?」

男から驚がくの声が漏れる。


「何故だぁぁぁ!

何故止めたぁぁぁ!!」


再び男が剣を振るう。

怒りが爆発している。


しかし、ウィルには届かない。

ボディブロー。

からの、ワンツー。

男の体がくの字に折れる。

アッパー。

顎を砕き。

意識を砕く。



「気がついたか?」

男が目覚めると、目の前にウィルがいた。

体の傷は完治している。


妙にスッキリしている。

久しぶりに意識を手放したからかもしれない。


「私はウィリアム=ドラクロアだ。名前は?」

「キリクだ。ウィリアムは強いな。

手も足も出ないなんて初めてだ。」

「ハハハ、キリクも相当強かったよ。

ようやく落ち着いて話が出来るね。」

「そうだな。1つだけ頼みを聞いてくれるなら、なんでも話そう。」

「そりゃ、頼みによるよ。何なの?」

「俺を殺してくれ。」


「・・・なんで?」

「このダンジョンは出られないんだ。」

「え?」

「どこにも脱出用の転移陣がないだろ。」

「このダンジョンはな。

生き地獄なんだ。

ダンジョンマスターに選ばれたら最期、

死ぬことも出来ず戦い続けることを強いられるんだ。

そして解放されるには新しいダンジョン踏破者に負けるしかないんだ。

しかも、手を抜いて負けることは許されない。

全力で戦い、その上で負けるしかないんだ。」


「もう少し細かく教えてくれない。

意味がわかんないよ。」

「そうだな。少し長くなるぞ。」

「お願いします。」


「まず、このダンジョンは『深淵』と呼ばれていた。

このダンジョンをクリアした者は最強になれる。そんな噂が流れていた。

そして、愚かにも俺はダンジョンに挑戦してしまった。

最深部には狂った男がいた。強かったがどうにか勝利できた。

しかし、それが地獄の始まりだった。

ダンジョンからは出られない。

そして1時間に1回ボスが出て戦いを強いられる。

しかも、、、不老不死にされてしまったんだ。

休むことも許されず、死ぬことも許されない。

ただ戦うことだけを強いられる。

確かに『最強』になれるダンジョンかもしれないがな。

それ以外を全て奪われるんだ。」


「なるほどね。だから戦って死ぬことを望んでたのか。」

「そうだ。それしか解放される方法がないからな。」

「それじゃあ、この最悪のダンジョンを倒そうか。」

「は?」

ウィルがニヤリと笑った。

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