タチアナの提案

「聞かせてよ。」

ウィルが促すとタチアナが話始めた。


「まず、最初に確認をさせてください。」

「どうぞ。」


「ウィル様は結婚される意思はあるのですね?」

「もちろん。」


「しかし、誰を選んで良いかわからない。

しかも、影響が大きいという話を聞いて、余計に悩んでいらっしゃる。」

「その通り。」


「わかりました。

ちなみに、ウィル様は複数の女性をお嫁に迎えることは考えていらっしゃいますか?」

「母上からはそれも検討するように言われているよ。

実感としては、よくわからないけど、相手さえ良ければいいんじゃない。」


「それでは、ウィル様の結婚相手を募集しませんか?」

「募集?」


「そうです。

応募してきた、ということは『結婚したい』または『結婚してもいい』と考えているということです。

そして、応募してきた女性を私たちが審査します。そこで危険人物はふるい落とします。

私たちの審査を通過した女性のリストをウィル様にお渡し致します。

そのリストに載っている女性、何人と結婚して頂いても問題ございません。

かなり単純化できると思いますが?」


「でもさ~、それで募集がゼロだったらどうするの?

恥ずかしいじゃん。」

「大丈夫です。

万が一にも募集ゼロということは無いと思います。

仮にウィル様のところにたどり着く女性がゼロだったとしても、私たちの審査を通過できなかっただけ、ということになります。」


「なるほど。

ちなみに審査するのは誰がやるの?」

「私、ミレーヌ、ミルの3人を考えています。応募した女性の個人情報を知ることになりますから、少人数で行おうと思っています。

いかがでしょうか?」

「やってみようか。

どんな結果になるか楽しみだね。」



そうして、タチアナ主導でウィルの結婚相手探しがスタートした。

世界中に告知がなされた。

世界の主要都市に魔道具の投票箱が設置された。

この投票箱に紙を入れるとウィリアムの街の『結婚相手選定対策室』に届くようになっている。

誰が投票したのかはタチアナたち3人しか知らない。


エントリーのルール。

エントリー期間は3週間。

本人が投票すること。他人が投票すると無効。

身分は問わない。

締め切り後、3ヵ月以内に連絡が無ければ落選となる。


そして、続々とエントリーが集まってきた。

エール王国だけではなく、ロンム王国、フィガロ王国、カンロ王国、などなど。

各国の王族、貴族、豪商、その他諸々。


ウィルの存在を知る者たちはこぞってエントリーをした。

大国の国王を一瞬で動かす影響力。

世界最大のウラドラ商会のオーナー。

世界最強のウィリアム騎士団。

世界一豊かな街『ウィリアムの街』の領主。

その氷山の一角を知るだけでも魅力的だ。


ウィルの結婚相手になりたい。

あるいは、娘や親族を結婚相手にして、ウィルと親族になりたい。

そんな思惑を持って大量のエントリーが寄せられた。


・・・もちろん、そんな思惑が強い相手はタチアナたちによって、ふるい落とされるのだが。。。


ワンチャン狙いのエントリーが多数あった。

しかもウィルを知る者は、

『ウィリアムには常識は通じない。非常識な判断をする可能性もある。とりあえず、数打ちゃ当たるかも。』

なんてことを考えて、バンバン応募してきた。



ウィルの結婚相手探しは、オデロが想像もしていなかった方向に進んでいった。

『ウィリアム=ドラクロア伯爵の嫁探し』は世界的なイベントとして拡散していった。

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