女神・邪神・魔神編

変革

ウィルが朝起きると事件がおきていた。

「なんじゃこりゃ~!!」


「どうされました?」

ソニアが駆けつけた。


「あっ、いや、その、、、

ちょっとした問題が発生したんだ。

朝食後出かけるから、午前中の予定はキャンセルしておいて。」

「大丈夫ですか?何かお手伝い致しましょうか?」


「大丈夫。

落ち着いて考えれば、だいたいの予想はつくから。

それに解決する為に出かけるんだしね。」


「そうですか。何かあればなんなりとおっしゃってくださいね。」

「ありがとう。」



何がおきたのか。

ステータスの職業が空白になっていたのだ。

最近、忘れがちだけど、ウィルの職業は「フリーター」である。毎日職業が変わるのだ。

『変わる』のであって、『無くなる』のは初めてだった。


朝食後、ウィルは問題を解決する為に、ある場所に向かった。


「どうされました?」

女神エルカレナが声をかけた。


ここは女神エルカレナのいる神域。

ここに来られるのはウィルぐらいである。他にも転移を使える人間はいるが、そうそう進入できるエリアではない。


「実は、、、」

ウィルが事情を説明すると、


「職業が空白に、、、

さすがウィリアムですね。

前代未聞ですよ。

ただ、ある程度理由はわかります。」


「教えてください。」


「私の推測ですが、

貴方の力がシステムを上回ったことが原因だと思います。」

「システムを上回った?」


「はい。

ご承知の通り『職業』というのは私たちがこの世界にもたらしたシステムです。もともと存在していたものではございません。

人間に『職業』を振り分け、レベルを上げることで『スキル』を身につけ、モンスターに対抗する。

そういう目的で作られたシステムです。

そして、貴方の力が大きくなり過ぎた為に、システムが対応出来なくなったのでしょう。

私たちもシステムの対象外です。

私も別に職業が『女神』という訳ではございませんから。」

そう言ってニッコリと微笑んだ。


「じゃあ、今後、ずっと職業は空白のままになっちゃうの?」


「基本的には。

もしウィリアムが更に成長してシステムに干渉して書き換えるぐらいの力を持てば強引に変更できると思いますよ。

ただ、それをする意味があるかどうかはわかりませんが。」


「まぁ、そこまでして何か表記したい訳じゃないけど。」


「『フリーター』から『無職』に転職したと思えばいいんじゃないかしら。」

エルカレナの笑顔がまぶしい。


「『フリーター』から『無職』への転職、、、

なんか、言っててむなしくなってくるよ。」


「それにしても、ウィリアムの力は異常です。転生者であったとしても、ここまで力を持つというのは聞いたことがありません。」

「そうなの?

普通にしているだけなんだけどな~。」


「このペースでいくと、存在としての力が私たちの中でも上位に達するかもしれません。」

「でも私はまだ人間であることを捨ててませんよ。」

「わかっています。

ですが、だからこそいびつなのです。

人間を遥かに超える力を持ち、人間という器では納まりきらない力になっています。

本来なら人間を超えた存在になるところを無理矢理人間で在り続けている。

そんな感じですよ。」

「今のところは特に問題もおきてないし、これでいいかな、って思ってます。」


「私から特に言うことはございません。

これからは『無職』として思うままに生きてください。」

「『無職』、、、なんか慣れないな~。

まぁ特にやることが変わる訳でもないし。

エルカレナ様、色々と教えて頂いて、ありがとうございます。

また来ますね。」


「いつでも遊びに来てください。

貴方ぐらいしか来られる人間はいませんから。」

エルカレナは手を振り、ウィルは転移した。

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