海王ディープシー

勝てた。

サクッと倒せました。


海王ディープシーは邪龍ガルガイアたちと同じぐらいの強さを持っていた。

世の中的には世界最強クラスだが、ウィルからすると毎日ルーティンで倒しているモンスターと同じ。

水中というハンデはあるが、複数の魔法を同時発動できるウィルにとっては、面倒くさい、というだけ。

あっという間に戦闘終了でした。


「さてと、最深部にはどんなダンジョンマスターがいるのかな?」

ウィルは期待に胸を膨らませ、最深部へと降りて行った。



最深部へ出ると、

「おっ!空だ。空気もある。」

そこは海面から島々が顔を出していた。

ダンジョンに入ってから初めての空だった。

「さてと、奥に進んでみるかな。」

ウィルは空中に浮かびながら進み始めた。


「何かいるな。」

水中からの視線を感じる。

しかも複数だ。

殺気は感じない。

おそれ、不安とか、興味なんかが入り交じった感じかな。


とりあえず陸地に降り立ち、しばらくゆっくり待ってみた。

すると、

ザバッ

海の中から数人が出てきた。

いや、人ではない。

人魚だった。

男3人、女3人の合計6人。


上半身は人間、下半身は魚。

だが、陸地に上がった途端、下半身も人間に変わった。

しかも美男美女。

街ですれ違ったら振り返るレベルだね。


ゆっくり待っていると、

中心にいた女性が前に出た。

美しい茶色髪。海から出たばかりなのにサラサラしている。そういうスキルがあるのかな。

お姉さん系の美人。

露出多めで目のやり場に困るね。


「あなたは何者なのですか?ダンジョンを突破してきたのですか?」

「突然失礼しました。

私はウィリアムと言います。

ダンジョンを突破した冒険者です。

あなた方は?」

「私たちはこのダンジョンを住みかにしている人魚なのです。私はダンジョンマスターをしていますアロアと言うのです。」

「はじめまして、アロアさん。

失礼ながら、あのダンジョンを突破できるほど強そうには見えないんだけど?」

「私たちはダンジョンを通ったことはないのです。私たちの先祖がダンジョンを攻略し、ここを安住の地としたのです。」

「じゃあ、ここにいるみんなはダンジョン生まれなの?」

「その通りなのです。私は生まれてから一度も外に出たことはないのです。」


「そうなんだ。でもなんでダンジョンの中で生活しているの?」

「それは、、、人間のせいなのです。」

「えっ?」

「かつて私たちの先祖は人間に乱獲されたのです。

聞いた話ですが、

人魚の心臓は不老長寿の薬になるとか、

愛玩用に捕らえたりとか、

そうして数を減らしたのです。」

「そうだったんだ。。。」

「そこで人間と戦う道を選ぶ者と隠れ住むことを選ぶ者とに別れたのです。

隠れ住むことを選んだ者の末裔が私たちなのです。」

地表に出てきた6人が代表といったところかな。水中から様子を伺う気配が沢山いる。

「でもよくダンジョンを攻略できたね。」

「当時の勇者が協力してくださったらしいのです。」

「なるほどね。人間と戦う道を選んだ人魚はどうなったの?」

「残念ながらわからないのです。

このダンジョン最深部は外に出られる転移陣はあるのですが、ここに戻るにはダンジョンを再び突破しないといけないのです。

そして、それを成しえた人魚は未だにいないのです。」

「外の世界はどうなっているのだ?」

横にいたイケメン人魚が訊いてきた。

「どうって言われても説明が難しいな~。」

「エレン、待つのです。

ウィリアムさん、失礼したのです。

ここにいるみんなはダンジョンで生まれ、一度も外に出ることなく死んでいくのです。

時折、好奇心に駆られて外に出る者もおりますが、戻ってくることはないので、どうなったのかはわからないのです。」


「なるほどね。安全だけど出られない、そういうもどかしさがあるんだね。

ただ、私も世界中旅をしているけど、まだ人魚に会ったことはないから、外の世界で繁栄しているってことはないかな。」

「・・・そうか。」

エレンと呼ばれた男は静かに下を向いた。


「確かに一生ここで暮らすってのは不満を持つ人も出てくるよね。」

「はい。ですが、ここより安全な場所はないのです。外敵は無く、食糧は潤沢にとれる。私たちはここで生き、ここで死ぬさだめなのです。」

「なるほどね。そう言えば人魚って寿命はどれぐらいなの?」

「だいたい80年ぐらいでしょうか。

ただ人間より成長が早く、老化は緩やかです。生まれて5年ほどで大人になり、そのままほとんど見た目は変わらずに寿命を終えるのです。」

「そうなんだ。確かに6人の誰が年上で誰が年下なのか、見た目では全然わかんないね。」

「ふふふ、人魚同士なら多少はわかるものなのですが、ウィリアムさんには難しいかもしれないのです。

ちなみに私が60歳で最年長なのです。

最年少はそこのエレンが22歳なのです。」

「同い年ぐらいにしか見えないな。」


ウィルがそう言うと、

「婆さんと一緒にしないでくれ。」

エレンが不満な顔をした。

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