王様の呼び出し
今日はエール王国の王宮。
王様の招きに応じて参内した。
「ウィリアム=ドラクロア、参りました。」
ウィルが丁寧に挨拶をする。
目の前には、国王とヘンリー王子、フルブライト公爵、オデロが待っていた。
「ウィルよ、挨拶は丁寧なんだが、いきなり王宮の一室に現れるのはどうかと思うぞ。」
ヘンリー王子が頭を押さえた。
「ハハハ、申し訳ございません。
王宮の入口からやり直しましょうか?」
「かまわん。時間の無駄だ。
ウィルよ、そこに座ってくれ。」
ウィルは国王の対面に座った。
ウィルの右手にヘンリー王子、左手にフルブライト公爵とオデロが座っている。
「今日は呼び立てすまなかった。」
「陛下の招きであれば、すぐに馳せ参じますよ。」
「そう言ってくれると助かる。
今日はウィルに頼みたいことがあってな。」
「なんでしょうか?」
「爵位をもらって欲しい。」
「どうしてですか?」
「今のウィルは公式にはドラクロア伯爵の息子というだけの立場なのだ。」
国王の続きをフルブライト公爵が話した。
「ただの伯爵の三男とするにはウィルは影響力が大き過ぎる。エール王国としても放置できない状況になってきたのだ。」
「どういうこと?」
ヘンリー王子が続ける。
「いいかウィル。
君はフィガロ王国、ロンム王国、カンロ王国という大国に対して、絶大な関係性を持つ。
更に教皇とも懇意にしている。
国内で好き勝手にやっている分には父上のお力でどうにかできた。
だが、今のウィリアム=ドラクロアという存在は国際問題なんだよ。
各国の国王に直接会って、好き勝手に発言する存在がただの『伯爵の息子』では体裁が悪いんだ。」
「それだけではない。
ウィルのことを聞きかじった程度の輩がお前を取り込もうと暗躍したりしている。オデロやリカルドが抑えているが、ロンムやフィガロ、カンロの人間までもが手を出そうとしている。
そういう輩を国際問題にならないように排除するのは骨が折れるんだぞ。」
「フルブライト卿や父上に守って頂いてたのですね。有難うございます。
でも、爵位を受けることが解決になるのですか?」
「なる。ウィルはオデロが他国から勧誘されているところを想像できるか?」
「できませんね。」
「国王陛下に忠誠を誓い、その代わりに爵位を授かる。それが国の根幹だ。ウィルはまだ爵位を受けていないため、他国につけ入る隙があると思われてしまうんだ。」
「わかりました。お受け致します。」
「ありがとう。後日、正式に授与式を行う。これで晴れてウィルも伯爵になる。」
「伯爵?!」
「そうだ。」
「父上と同じ爵位などおそれ多い。もう少し下にできませんか?」
「ウィルの功績を考えれば伯爵は妥当だ。」
「ウィルよ。謹んでお受けしなさい。」
「父上がそうおっしゃるのでしたら、、、」
「決まりだな。なお領地についてはドラクロア伯爵領を半分に割ろうと考えている。」
「陛下、それはお断り致します。ウィリアムの街だけで十分です。」
「しかし、伯爵にはそれに見合った領地が必要だ。さすがに街1つというのは小さ過ぎるだろう。」
「それでしたら領地の希望を申し上げてもよろしいですか。」
「かまわん。」
国王がそう言うと、フルブライト公爵が地図を持ってきて広げた。
「このセイロード島を頂けませんか。」
ウィルが指差したのは海にポツンと浮かぶ離れ島。
広さはほどほどにあるが、エール王国の本土からはかなり離れている。
「ちょっと待ってくれ。」
ヘンリー王子がそう言って資料を調べだした。
「セイロード島は確かに広いが真水がなく、土地も畑に向かないために誰も住んでいない無人島だ。
そんなところでいいのか?」
「ウィリアムの街とセイロード島の領主ってことでどうですか?
ウィリアムの街は内陸部なので海上の拠点が手に入れば有難いんです。」
「わかった。ウィルが希望するなら、それでいいだろう。」
「有難うございます。」
「授与式の日時は調整でき次第連絡しよう。」
「宜しくお願い致します。すぐに島の整備を始めたいので、授与式前に動いても問題ありませんか?」
「かまわん。完全な孤島だ。好きにしてくれ。」
「承知致しました。では失礼致します。」
ウィルの姿が忽然と消える。
「父上、セイロード島は大丈夫でしょうか?」
「目の届かない離島をウィルが好きにする、、、考えただけで頭は痛い。」
ヘンリー王子が心配し、国王は頭を押さえている。
「そのうち島が空を飛ぶかもしれませんな、ハハハ。」
「フルブライト卿、何を呑気な。
ウィルなら実現しそうで恐ろしいです。」
「夢物語に聞こえんな。リカルド、ウィルの前では言うなよ。」
「我が息子が申し訳ない。」
「気にするな、オデロ。
頭痛のタネではあるが、もたらした恩恵は絶大だ。ここにいる皆、ウィルを好いているよ。」
「有難うございます。」
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