カンロ決戦 その2

●キョーイ将軍サイド

「敵は寄せ集めだ!

戦線を拡大しろ!

戦える兵士は少ないはずだ。

乱戦に持ち込め!」

キョーイの檄が飛ぶ。


帝国軍は隊列を広げ、カンロ王国正規軍との戦いを広げた。

ブルーノ国王周辺はウィリアム騎士団が固めているが、それ以外は連敗続きの正規軍や即席の義勇兵などだ。

帝国軍の方が有利だ。

だが、隊列を広げればブルーノ国王率いる精鋭を抑えられない。

ブルーノ国王が縦横無尽に暴れ回る。



「キョーイ様、どうされますか?」

副官の1人が小声で話しかける。

「英雄部隊を圧倒する部隊が相手にいるんだぞ。こちらに勝ち目はない。

だが兵士の質が低いのも確か。

乱戦に持ち込み、その混乱に乗じて離脱するぞ。

準備をしておけ。」

「承知しました。」


そしてキョーイの目論見通り、戦いは混乱。

キョーイは直轄の部隊を率いて離脱を計る。


しかし、

「おいおい、こっちは通れんぞ。」

「なっ!?貴様は!!」


怒気を放つキョーイ。

ニヤニヤとしているロンゾには通じない。


赤獅子傭兵団が進路を阻む。

キョーイたちもさすがに突破できない。

キョーイは怒りながらも冷静に退路を探す。


「逃げられると思うなよ。」

赤獅子傭兵団がキョーイたちに迫る。


「こっちだ!」

赤獅子傭兵団を避け、進路を変える。

追撃に部下の数を大きく減らす。

「後ろは見るな!駆け抜けよ!」



赤獅子傭兵団の追撃を振り切って、

「振り切ったか?」


「残念ながらまだ私の掌の上ですよ。」


「誰だ!?」


「あなたは知る必要ありません。」


キョーイたちの前にリクソンが立ち塞がる。


「はっ、貴様はリクソン!

何故貴様がこんなところにいる?

エール王国侵攻作戦を失敗して失踪した男が何故こんなところにいる?

傭兵にでもなったのか?」


「教える義理は無いでしょう。

あぁ、そうだ。

同郷のよしみとして1つお教えしましょう。

ダスモン将軍は一切参加していませんよ。

あなたが納得しそうな名前を用意しただけです。」


「ククク、そうか。

そういうことか。

すべて貴様の策略か!」


「まさか。

私はただの参謀です。

あなたが相手にしていたのはもっと大きな存在ですよ。

あなたごときが勝てるはずがないんです。」


「誰だ、ソイツは!?」


「教えてあげる義理がありますか?

もうすぐ死ぬので知る必要もないでしょ。」


「ナメるなよ!

俺はまだ終わらない!

何が何でも逃げてやる!

生き恥でも何でも晒してやる!」


「逃がすとでも?」


最早、隊列も何もあったものではない。

遮二無二逃げるキョーイ一行。

敵軍を避け逃げに専念する。



そしてようやくたどり着いた先は、、、

ブルーノ国王の面前だった。


「なっ!?」

「わざわざ首を斬られに出てきたか!」

「貴様は!ブルーノか!?」


キョーイはブルーノを睨み付ける。

だが、ボロボロのキョーイと金色の装備を纏い悠然と馬上で構えるブルーノ。

勝者と敗者は明確だった。


「その首、もらい受けるぞ!」

「ふざけるな!

貴様を地獄へ道連れにしてやる!」


キョーイたちは剣を抜き、ブルーノ目掛けて襲いかかる。


しかし、ウィリアム騎士団がキョーイの取り巻きを瞬く間に排除する。

キョーイは背中で感じる。

圧倒的な敗北を。

だが振り返らない。

単身ブルーノに突貫する。

キョーイは剣を振り上げる。

しかし、振り下ろすことはなかった。

どこから飛来したかわからない銃弾がキョーイの両腕を吹き飛ばす。

敵の大将の面前で突然両腕を失い、棒立ちしかできないキョーイ。

声を出すこともできない。


次の瞬間にはブルーノの槍が体を貫いた。


「ドルマ帝国軍将軍、キョーイ、討ち取ったぞ!勝鬨をあげよ!」

「「「「おおぉぉぉぉ!!」」」」


もはや勝敗は明確だった。


そしてカンロ王国に伝説が生まれた瞬間でもあった。国王が最前列で軍を率いて戦い、敵の大将を自ら討ち取る。

そのインパクトは絶大だった。

カンロ王国軍の勢いは止まらない。

残った帝国軍は瞬く間に飲み込まれていった。

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