本選 その3

リングの中心にクラリス、アルガス、ウィルが集まる。

「アルガス様、全力でお願い致します。」

「もちろんです。手を抜くような非礼は致しません。全力でいかせて頂きます。」

「私も負けるつもりはございません。勝つつもりで挑戦させて頂きます。」

「お互いベストを尽くしましょう。」

挨拶を済まし、両者が距離を取る。


「はじめ!」ウィルが試合開始を宣言する。

開始と同時にアルガスがクラリスに向けてダッシュする。

そのアルガスに向けてクラリスが炎弾を放つ。

アルガスは華麗なサイドステップで避ける。

アルガスは再び接近を試みる。

しかし、そのアルガスに炎弾が肉薄する。

「なっ!?」

アルガスはなんとか転がりながら回避する。

「早過ぎるだろ!」

起き上がろうとするアルガスに炎弾がもう迫っていた。

「クソッ!」

アルガスが咄嗟にジャンプする。

「チェックメイト。」

クラリスが宣言する。

ジャンプ中のアルガスを突風が襲う。

逃げようの無いアルガスが風で更に巻き上げられる。

上空で錐揉み状態のアルガス。

更にクラリスが風を送り込む。

アルガスは更に高く舞い上がる。


ドサッ

アルガスが落ちたのはリングの外であった。


「アルガスは場外により失格!

勝者、クラリス!」


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観覧席から割れんばかりの拍手が送られる。

「クラリス王女の魔法が華麗に決まりました。アルガス選手を風で持ち上げてそのまま場外まで運んでいきました。

この戦い、いかがだったでしょうか?」

「クラリス王女の詠唱速度が異常に速かった。あんな詠唱速度の速い魔法使いを見たことがありません。あんな魔法の連続使用など普通ならあり得ません。

それに防御力の高いアルガスを場外に落とす作戦も秀逸です。あれなら防御力は関係無いですからね。」

「なるほど、魔法使いとしての実力、それに戦略が加わり、圧倒的な勝利を掴んだ訳ですね。」


アルガスはクラリスに近寄り膝をついた。

「自らの未熟さを恥じ入るばかりです。」

「そんなことはありません。これが本当の戦場ならこのような勝ち方はできませんからね。」

「勿体無い御言葉です。」

「これからもその御力をエール王国の為に御貸しください。」

「御意。」

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再び会場から拍手が沸き上がる。


「素晴らしい試合でした。エール王国の国民として、心強い光景でした。」

「そうですね。

我々ドラクロア家はエール王国の剣。

今後もエール王国を守る為に戦うことを誓いましょう。」

「有難うございます。退場するクラリス王女とアルガス選手に暖かい拍手が送られます。さぁ、準備が整えば第四試合、カシム選手対エリュートロン選手が始まります。

カシム選手はウィリアム氏に忠誠を誓う騎士で、ウィリアム氏の右腕として活躍しています。その人気、実力はウィリアムの街でもトップクラスです。

対するエリュートロン選手ですが、先ほど第二試合に出場したキース選手とパーティーを組む剣士です。こちらもレベル80超えの凄腕です。

さてエリック様、次の試合はどう見ますか?」

「カシム選手もエリュートロン選手もどちらも盾を使う安定した防御力が特徴の戦士です。戦闘スタイルが似ているので、地力の差が出やすい試合と言えるでしょう。エリュートロン選手がどれだけカシム選手相手に戦えるかが見ものですね。」

「なるほど。カシム選手はウィリアムの街でも有名な騎士です。その実力も別格と言われています。若いエリュートロン選手がどこまで迫れるか、注目です。」


リングにカシム、エリュートロン、ウィルが集まる。

カシムには今日一の黄色い声援があがった。

「胸をお借り致しますわ。」

「ともに全力を尽くそう。」

爽やかに微笑むカシム。

両者が距離を取り、構える。


「始め!」ウィルが宣言した。

カシムとエリュートロンがともに盾を構えた状態で接近する。

両者の打ち合いが始まった。

右手に剣、左手に盾。

どちらも堅実に防御しながら戦いを進めていく。ハイレベルな戦い、しかしどちらも大きなダメージはない。

長期戦の様相を呈してきた。

どちらも凄まじいスピードで攻防を繰り返していく。6:4ぐらいの比率でカシムが押し込んでいる。

絶え間無い攻防に観覧席も固唾を飲んで見守っている。


「緊迫の試合展開です。この後の展開はどうなるでしょう?」

「おそらくエリュートロン選手がどこかで仕掛けるでしょう。今の展開を続けるとエリュートロン選手が先に力尽きるのは明白です。どこかでリスクを取って仕掛けるしか勝機はありません。」

「なるほど、いつエリュートロン選手が仕掛けるか目が離せません。この後の試合展開に注目です!」

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