本選 その2

リングの中心にキルア、キース、ウィルが集まった。

「キース君、お手柔らかに頼むよ。」

「どうせめちゃくちゃ強いんだろ。腕試しのつもりでこっちは全力でいかせてもらうぜ。」

「まぁ私としても手に入れたい賞品があるので、負けるつもりはないよ。好きにかかってきなさい。」


「はじめ!」ウィルが開始を宣言した。

ウィルの言葉と同時にキースは抜刀しながら横に薙いだ。

それは飛ぶ斬撃となりキルアに迫る。

キルアは高くジャンプして避けた。

キースは着地点に向けてダッシュをかけ、下から掬い上げる一撃を放った。

しかし、キルアは上空で停止し降りて来ずに空振りに終わる。

慌ててバックステップで退避するキース。

その隙をつこうともせず、ゆったりと降りてくるキルア。

「なかなか良い連続攻撃だった。次はどうする?」

「これなら!」

キースは爆発的に加速して、その速度を活かした強烈な突きを放つ。

それをかわすキルア。

しかし、それを予測していたキースはそのまま連続攻撃につなげる。

怒濤のキースの攻撃に観覧席はどよめく。

しかし、すべてを難なく捌いていくキルア。

一旦距離を取るキース。


「さすがウィルが鍛えているだけのことはある。今の連続攻撃は見事だった。隙がなかったよ。」

「なら2、3発当たってもいいんだぜ。」

「ハッハッハッ、100年早い。そろそろこちらからいこうか。」

そう言うとキルアの顔が変わる。

身構えるキースに一気に迫る。

キルアの手に闇が集まる。

キルアのパンチを剣で防ごうとするキース。

剣に触れる寸前にキルアの体が闇の粒子となり霧散する。

「ちっ!」

キースは咄嗟に横っ飛びして転がる。

「悪くない判断力だ。」

そう言うとキースの真上に現れたキルアが頭を目掛けて足を踏み降ろす。

キースは跳ね起き、なんとか回避する。

キースの頭があった場所には小さなクレーターが出来上がる。

キースはなんとか体勢を立て直し、剣を構える。

「ブラボー。何度も死線をくぐり抜けた者の動きだよ。その年齢でそこまで動けるのは素晴らしい。自信を持っていい。」

「そりゃどうも。それで今の攻撃は全力の何割だい?」

「私は常に全力だよ。手を抜くような非礼はしないさ。」

「なら、なんで本気で追撃しなかった。」

「倒してしまっては、称賛を送ることができないじゃないか。」

「は~、ならもう少し称賛を得られるように頑張るかね。」

「期待しているよ。」

「ちっ」


キースが剣を上段に構える。

剣が強く輝きだす。

「なかなかの力だが、気負い過ぎだな。」

「ナメるな!」

キースが大技を放つ。4つの斬撃が同時に放たれる。

しかし、キルアの姿は既にそこにはない。

だが、キースは動揺しない。

「それがどうした!」

キースはキルアを見失ったままだが気にせず連撃の構え。

キースはサイドステップで移動し、横薙ぎしながら1回転する。キースを中心に斬撃が円状に広がる。

だがキルアはさっとジャンプする。

「そこか!」

キースはキルアに向け、三段突きを放つ。

しかし、それもキルアには当たらない。

「心意気は良し!だが、未熟!」


キースは大技を連続で放ちながらも隙を作らない。常に動ける体勢を作っている。

しかし、防げない。

キルアのパンチがボディに決まる。

「ガハッ」

キースも懸命に剣を振るう。

しかし、むなしく空を切る。

キルアのパンチは面白いように入っていく。


そして、ウィルがキルアの腕を掴んだ。

キルアの攻撃が止まった瞬間、キースは崩れ落ちた。

「もう意識は無いよ。」

「意識を失くしても構えを解かなかったのか。本当に将来有望な若者だよ。」

「勝者 キルア!」ウィルが宣言する。


「キルア選手、圧倒的です!

強さの底が見えません。」

「キース選手も非常に強かったです。あのスピード、技のキレ、威力、どれも超一流でした。決して弱くはなかった。

キルア選手が強過ぎたということだろうね。」

「そうですね。キルア選手の次の試合が楽しみです。あのキルア選手に勝てる選手は出てくるのでしょうか?

さて、次の第三試合はクラリス王女様対アルガス選手です。

クラリス王女様は天才的な魔法使いとして有名です。今回も華麗な魔法を見せてくださることでしょう。

一方アルガス選手ですが、言わずと知れたエール王国が誇る猛将です。今まで挙げた武勲は数知れず。予選でも他の参加者を圧倒していました。

さて、エリック様、見所はどこでしょうか?」

「アルガス選手が接近できるかどうかでしょうね。魔法は威力が高いが発動に時間がかかります。

クラリス王女様が接近される前にアルガス選手を倒せるのか。

アルガス選手が魔法をしのいで接近戦に持ち込むのか。

それが勝敗を分けると思います。」

「有難うございます。

さぁ、クラリス王女様のお姿が見えました。会場が割れんばかりの拍手で包まれます。

アルガス選手も入場して参りました。

いよいよ試合が始まりそうです。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る