幕間 護衛ソニア
時はさかのぼる。
襲撃を受けたドラクロア邸。
対応に東奔西走するウィルに屋敷の護衛を任されたソニアのお話。
「父さん、怪我は大丈夫なの?」
「ウィリアム様の治療のおかげで後遺症も何もないよ。あえて言えば長年悩んでいた膝の痛みまで消えて、襲撃前より元気になってるよ。」
「もう年なんだから無理をしちゃダメよ。」
「わかってるよ。ただ目の前でマリアンヌ様やローザリア様、ガラリア様が戦うのを黙って見ていることなどできんよ。」
「それはわかるけど、昔みたいには動けないんだからね。私が護衛をしている間は私に頼ってよ。」
「ウィリアム様が任せるのだから大丈夫だと思うが、、、お前に護衛が務まるのか?
お前はメイドで戦闘職じゃないだろう。さすがに装備が良くても、あれほどの敵が襲ってくれば対応できないだろ。」
「問題ございません。相手のデータを見る限り、勝負になりません。」
「騎士たちが数人がかりで戦う相手だぞ。」
「大丈夫だよ。想像できないと思うけど、本気出したら魔王軍の幹部とでも互角ぐらいには戦えるんだからね。」
「ふ~、慢心は隙を生むぞ。」
「大丈夫、油断はしないから。ウィル様が留守の間はしっかり私が守るから。」
「わかった。信じよう。
それにしてもウィリアム様の実力は抜群だな。エリック様やアルガス様もお強いが比べ物にならない。底が見えない。」
「今回の相手はウィリアム様の逆鱗に触れちゃったからね。瞬殺されるのは仕方ないよ。魔王だってウィリアム様を怒らせたら一貫の終わりじゃないかな。」
「ウィリアム様はいったいどれ程の力を持っているんだ?」
「凡人には測りきれないわよ。」
「それもそうだな。」
「さてとそろそろメイドの仕事をしようかな。」
「護衛に専念してもいいんだぞ。」
「メイドが何もせずにお世話をされてたらおかしいでしょ。それにメイドの仕事をしている方が落ち着くのよ。」
「わかった。ただマリアンヌ様から離れないように仕事内容を調整するようにカリーナに話をしておこう。」
「助かるわ。ご家族にケガでもさせたら、ウィリアム様会わせる顔が無いもの。」
そして食事の時間。
参加者はマリアンヌ、ローザリア、ガラリア、クルツ。
クルツにはローザリアが横に座りごはんを食べさせている。
貴族の家では赤ちゃんの食事の世話も乳母などを用意して委託するケースも多い。ドラクロア家では実母が行っているが。
「ソニア、警護ありがとう。
ウィルに振り回されてない?」
「マリアンヌ様、お気遣いありがとうございます。ウィリアム様は突飛ですが、お優しい方です。」
「あの子は優しいけど、非常識の塊みたいなものでしょう。あの子が動けば周囲は振り回されちゃうじゃない。」
「フフフ、確かにウィリアム様は常識の遥か彼方にいらっしゃる方ですものね。」
ローザリアは楽しそうに微笑んだ。
「ウィリアム様の強さは凄まじいものでした。私もいくつもの戦場を見てきましたが、他の戦士とは次元が違いました。」
「ウィリアム様は学園を圧倒的な成績で首席卒業されていらっしゃいますからね。」
「エリックも首席卒業だったけど、そういう次元じゃないわね。ウィリアムの強さは別格だわ。ソニアも強いでしょ。ソニアから見てウィリアムの強さはどうかしら?」
「残念ながら私の感想も同じです。強過ぎて比較ができません。今の勇者パーティーが全員で挑んでも手も足も出ないのは確かです。」
「今ウィリアムはどんな動きをしているの?」
「飛び回ってらっしゃいます。あの方を追いかけるのは不可能です。呼ばれた時に最善を尽くすだけです。」
「ソニアのような娘がウィリアムをサポートしてくれて頼もしいわ。ありがとうね。」
「勿体ない御言葉です。では仕事をしないといけませんね。」
「何かあったの?」
食事中の部屋に緊張感が走る。
「少し掃除をして参ります。」
そう言うとソニアは駆け出し窓から飛び出した。
「ここは3階よ!!」
窓から飛び出したソニア。
両手に構えた銃が火を吹く。
メイドが窓から飛び出して銃を撃ちまくる。
あり得ない光景だがその結果、侵入してきた魔人を次々と撃ち抜いていく。
ソニアはスタッと着地する。
周囲を警戒し、他に敵がいないことを確認する。
「他はいないようね。」
ソニアは壁をトントンと駆け上がる。
部屋に戻ると、
「侵入を試みた魔人は始末しました。他にも潜んでいる可能性があります。警戒するように警備の騎士たちに伝えてください。」
「わかった。すぐに伝えよう。」
執事のバルデスが騎士たちに伝えて警戒態勢を取り、残党がいないかを確認して回ったがいなかった。
これによりドラクロア邸の安全は確保された。
なお、目撃者からはドラクロア家最強はメイドなのでは?という噂が流れたという。
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