新しい仕組み
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ
祈り子リンカの言葉に部屋中に困惑が広がった。
「どういうことですか?」
「私はもう『祈り子』ではありません。
いえ、『祈り子』が必要無くなったと言った方がいいかもしれません。こちらにいるウィリアム様が女神様と交信するための魔道具を造られます。女神様から材料も与えられています。それがあればもう『祈り子』は必要無いでしょう。
私も女神様から新しい職業を与えられました。」
「それは本当か?」
「私が女神様の御言葉を偽って伝えているとでも?」
「いや、そういうつもりで言ったのではない。ただの確認だ。」
困惑する教皇と祈り子とのやり取りにしびれを切らしたザライド枢機卿が発言をした。
「ウィリアムよ、女神様より頂いた材料で魔道具を作るのにどれぐらいの日数がかかるんだ?」
「そうだね。明日には完成させられるよ。制作にとりかかっていいかな?」
「ウィリアム、少し待ってくれ。
教皇、まずは女神様の御言葉に従う手順を打合せ致しませんか。」
「わかった。その通りだな。よし、取り急ぎ会議を開く。」
結局、会議は夜まで続き、
・女神様の御言葉に従うということ。
・ウィリアムに魔道具を作成依頼すること。
・その魔道具が使えることを確認してから、祈り子が廃止になることを公表すること。
それが決まった。
ウィルはさっさと家に帰り、魔道具の作成に取り掛かった。
そして一晩で完成させた。
2つで1組の黒板みたいな魔道具。
その1つをエルカレナに届けに行った。
「あっさり来ますね~。」
「一度来たからね。」
「今日はどうされました?」
「魔道具を届けに来ました。」
「これですか、、、もうちょっと威厳ある感じになりませんでしたか?」
「実用性重視なんで。」
「は~、どういう道具なんですか?」
「2つで1組になってて、どっちに書いても両方に表示されるっていうだけの単純な魔道具だよ。超長距離対応ってところが特徴かな。」
「わかりました。性能は問題無さそうですね。では、もう1つを大聖堂に設置してきてください。」
「オッケー。後でテストするから女神っぽいコメントお願いね。」
「えっ!?女神っぽいコメントってなんですか!?」
「じゃあね~。」
「ちょ、ちょっと~」
その後、大聖堂に戻って魔道具を設置。
「こ、これが女神様と交信するための魔道具ですか、、、」
「そうです。これに書けば女神様に伝わるし、女神様が何かを伝えようと思うと、ここに表示されます。」
「な、なるほど。」
黒板を前に教皇や枢機卿たちがウィルの説明を聞いている。
「じゃあ、ちょっと書きますね。」
『魔道具設置完了致しました。』
ウィルがさらさらと書いた。
しばらく待つと文字が消え、代わりに、
『魔道具の作成と設置に感謝致します。』
との文字が浮かび上がった。
「「「おぉぉぉぉ!!」」」
感嘆の声が洩れる。
「書いた内容はすべて女神様に筒抜けです。勝手に書いたり、消したりできないように警備態勢をお願い致します。」
「もちろんだ。すぐに警備態勢を整えよ。」
「それじゃあ、私は女神様からのご指示は果たしましたので行きますね。」
「少し待ってくれ。この魔道具の整備や修理はどうすればいいんだ?」
「構造は通常の通信用魔道具と変わりません。違いは女神様に頂いた宝石を使用している点だけです。取り扱い説明書を置いておきますので、それを確認してください。それでも困った場合は私はエール王国のウィリアムの街におりますので、お呼びください。整備できる者を手配致します。」
「わかった。今までの協力に感謝する。世話になった。」
「女神様のお役に立てて良かったです。それでは失礼致します。」
そう言ってウィルは去っていった。
こうして邪教徒による魔人騒動は解決し、教会は祈り子を置かない新しい仕組みで活動を続けていくことになった。
その後、祈り子ではなくなったリンカの職業が確認され、『聖女』となっていたことが教会内で衝撃が走った。
元祈り子、現聖女。
その肩書きは教会内部で非常に大きな力を持った。
祈り子のように誰とも接触を許されないということはないが、枢機卿並の影響力を持つ存在となってしまったのはまた別の話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます