幕間 ハンスの苦悩
「なに死にそうな顔をしているんですか?」
コロネがハンスの顔を見ながら話しかけた。
「ドラゴンの背中で平然としてるお前の方が異常だと思うぞ。」
「いいかげん慣れてください。何回乗っているんですか。」
「慣れねぇよ。ドラゴンの背中なんて慣れたくねぇよ。」
「前回の海底と違って、今回は雪原だからマシじゃないですか。ウィリアム様のアイテムのおかげで寒くないですし。」
「海底と比較すりゃ、だいたいどこでも快適だろうな!こんな生活もうやだ~。」
「泣き言ばっかり言ってないで、しっかり役目を果たしましょう。それともウィリアム様のご命令に従わないつもりですか?」
「そんなことはねぇけど。愚痴ぐらい言わせてくれよ。」
「愚痴は心の中で言ってください。さあ到着しますよ。」
こんな会話を交わすのも何度目だろうか。
勇者の塔を攻略後、ハンスたちは女神の羅針盤に従い、各地に残る勇者用のダンジョンまで移動を繰り返していた。
ダンジョンまでハンスとコロネがドラゴンで移動。到着すると転移陣でカレンたちを呼び出し、カレンたちが攻略している間は留守番。
カレンたちはウィルの育成により、とんでもないスピードでダンジョンを攻略してくる。
ハンスからすると、ほとんど休憩無しに飛び回っているような感覚に陥る。
普通の勇者なら年単位の時間がかかるような工程を大幅短縮して終わらせていっている。
「カレン様、ダンジョンに到着しましたよ。」
「ありがとうございます、ハンスさん。じゃあ時間も中途半端だし、明日からダンジョンに挑みますか。」
「そうね。今度はどんなダンジョンかしら。少しは歯ごたえがあるといいんだけど。」
「とにかく全力で挑みましょう。」
「少しはゆっくり攻略してもいいんだぜ。」
「お気遣いありがとうございます。私たちは大丈夫ですわ。皆の期待に応えられるように手を抜くようなことはしません。」
「常に全力!さっさとクリアするよ~。」
勇者パーティーのやる気に今回も休養期間は短くなることを覚悟するハンスであった。
そして翌日、
勇者パーティーを送り出した後。
「しっかし、女神様も厳しいところにダンジョンを作るよな。雪原、海底、火山、もっと便利なところにダンジョン作ってくれたら楽なのにな。」
「そういった過酷な環境も試練の1つなのでしょう。」
「女神様もスパルタだな。簡単にレベルアップできるダンジョンを1つ用意しといてくれりゃいいのにな。」
「女神様に代わってウィリアム様が用意してくださっています。」
「ハックション!
あ~、ダメだ。寒くないはずなのに、この雪景色の中にポツンといると、寒い気分になってくるぜ。次は暖かいところがいいな。」
「ハンスさん、そういう発言をフラグと言うんですよ。」
「まぁ、どんなところにダンジョンがあろうが、ウィル様が行けるようにしてくれるから問題無いんだけど、色んなところにポンポン行かされるのも問題がある訳で。」
「もう、何を言っているのか意味がわからないですよ。ウィル様に従っていれば問題無いんです。」
「コロネ、良いことを教えてやろう。ウィル様は考えることを放棄して従えばいい、なんて考え方は好きじゃないはずだぜ。」
「はっ!そうですね。私としたことが。
考えに考え抜いた結果、ウィリアム様と同じ考えになれるように精進しなければ。」
「なんかズレてないか??」
「あ~あ、早くカレン様たちが魔王を倒してくれないかな。さすがにこう移動ばかりだと疲れるぜ。」
「何を言っているんですか。歴代の勇者様に比べれば格段に早いはずですよ。ウィリアム様が支援されているのですから。」
「まあ、そうだろうな。ドラゴンで飛び回る勇者様なんて聞いたこともないからな。」
「ウィリアム様が新しい歴史を作られたのです。」
確かにウィル様だから成立しているところはあるな。
普通の勇者なら、こんな雪原を踏破してくるのは相当大変だろう。馬も使えないだろうから徒歩でここまで来るなんて並大抵のことではない。
その苦労を考えると、カレンたちは特殊な勇者だよな。苦労してないとは言わないが従来の勇者とはまったく違うルートを歩んでいる。これがどんな影響が出るのか。すべてウィル様の存在が変えている。
本当にウィル様は世界を変えるのかもしれない。
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