幕間 女子会は続く
3人はいつの間にか紅茶からお酒に飲み物を変えていた。ダンジョン製のワインは濃厚な味わいとフルーティーな香りで評判だった。
ツマミはムラーノ特製の海老と茸のアヒージョ、白身魚のブルスケッタ、ナッツ盛り合わせ。この世界では考えられないぐらいの豪華メニューだ。
「は~、最高のお酒に最高のおつまみ。たまらないわ。」
「ムラーノさんと結婚すれば毎日食べられるんじゃない。」
「ダメですよ。ムラーノさんはお付き合いされている方がいらっしゃいますから。」
「えっ、そうなの。料理にしか興味ないって顔して、やることはやってるんだ。」
「私はムラーノさんが付き合ってることより、それを知ってるタチアナにびっくりしたわ。」
「情報収集は乙女のたしなみです。」
「じゃあさ、彼女のいない優良物件はいないの?」
「そうですね~。ハンスさんとか、バーナードさんとかですかね。」
「ハンスさんは無いわ。あの人はなぜか残念な感じがするのよね。残すはバーナードさんか。」
「ウィリアムの街の筆頭錬金術師だからね。将来は安泰よ。」
「でも、ちょっと頼りないのよね。」
「わかるわ~。他にはいないの?」
「超大物が残ってますよ。」
「あ~、ウィル様ね。」
「はい、そうです。最上の独身男性ですよ。」
「でも競争が激し過ぎるわよ。私たちにつけ入る隙は無いわ。」
「確かに。ウィル様の奥さま候補はものすごい人だらけだから。」
「ウィル様もそろそろ結婚してもおかしくない年頃よね。誰と結婚するのかしら?」
「本命はクラリス王女でしょう。陛下は本気のようですよ。」
「それってほぼ決まりじゃない。」
「ウィル様が王様の命令に簡単に従うと思う?」
「確かに。何物にも縛られないのがウィル様よね。クラリス様の対抗候補は誰なの?」
「カレン様ですね。」
「確か勇者の女の子だよね。そうか!魔王討伐を成功させた勇者となると、その影響力は絶大よね。それならあり得るわ。」
「タチアナの洞察力は関心するわ。」
「それほどでもありませんよ。」
「他にも候補はいるの?」
「そうですね。ミリアさんやメルさんも可能性はあると思っています。」
「えっ、お姉ちゃんも!?」
「確かにウィル様はメルちゃんの歌が好きよね。それに絶対に男ウケするスタイルだし。」
3人は自分の胸元を見てため息をついた。
そして、何事もなかったかのように、
「ミリアさんは正統派の美人よね。王女様からの求愛を断って、一介のシスターと結婚。ウィル様ならありそうな気がするわ。」
「ウィル様が孤児の問題に積極的なのもミリアさんの影響が大きいと思いますよ。」
「あ~~、どこかにいい男いないかな~。近寄ってくる男が皆私の地位目当てなのよね。純粋な恋愛がしたいわ。」
「あら、ミレーヌってけっこう乙女なのね。」
「私は貴族生まれじゃないからね。家のためのお見合いとかじゃなくて、恋愛結婚が当たり前と思っていたからね。」
「そうか~、私は私の地位を狙って来てくれてもいいのよ。ただ、それに見合った能力があるならね。」
「ミルが求める能力のハードルは高そうですね。」
「そうでもないわよ。この街の発展にプラスになる人物なら基本的にウェルカムよ。タチアナこそ、マイガング家の令嬢なんだから良い縁談も沢山きてるんじゃない?」
「縁談の申し込みは沢山来ますが、父は断り続けてます。」
「マイガング卿は理想が高いの?」
「ある意味そうです。父は私をウィル様の側室にしたいようです。」
「ええ~!マイガング家の令嬢が側室でいいわけ?」
「正妻がクラリス王女なら私が側室でも問題無いでしょう。父の狙いはそれです。」
「確かにそれなら、王家の顔を立てながらウィル様とも関係を強められるわね。内務卿も思いきったことを考えるわね。」
「ですが、うまくいくでしょうか?ウィル様の性格を考えるとクラリス王女を正妻、私を側室なんてことはしないと思うんですよね。」
「ちょっとハードル高そうね。そんな未来が想像できないもの。」
考え込んでいたミルがニヤリと笑う。
「ねぇ、タチアナの応援してあげようか。」
「ミル、その笑い方は応援する人の顔じゃないわよ。」
「いいこと思いついたのよ。聞いてくれる?」
「もちろん。聞かせてください。」
ミルにミレーヌとタチアナがぐっと近寄る。
「みんなで側室になりましょう。」
「「えっ!?」」
「イメージしてみて、私たち3人を含めて数人で側室になるの。それで和気あいあいとやってるって方がウィル様っぽくない?」
「確かに。想像の斜め上って感じがウィル様よね。」
「私1人だけが側室なんて想像できなかったですけど、それならいけそうな気がします。」
「これはタイミングが大事よ。入念に準備をして根回しバッチリの状態で仕掛けるわよ。」
「よ~し、面白くなってきた♪」
「頑張りましょう。」
3人の女子会は夜更けまで続いた。
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