幕間 女子会(ミル・ミレーヌ・タチアナ)
ある日の夜。
ウィリアムの街、ダンジョン内の執務室にミル、ミレーヌ、タチアナの3人が集まっていた。
「ムラーノの新作ズコットよ。」
ミルが嬉しそうに出してきた。
「お茶も用意したわ。」
ミレーヌは紅茶を用意している。
4種のベリーのズコットと紅茶を女子3人で楽しんでいる。
「さすがムラーノ、甘酸っぱいベリーと濃厚なのに後味スッキリのクリームの相性がいいわ。」
「この街でしか食べられない味ですね。この紅茶も非常に香りがいいですね。カンロ産ですか?」
「ウィル様がカンロで仕入れた種をダンジョンで育てたの。」
「なるほど、輸送の間に劣化することもないですから、最高級の味と香りをそのまま楽しめる訳ですね。」
「この街以外では味わえない組合せね。」
「原料の調達だけでも目が飛び出るぐらいの費用がかかるわ。まぁ、どれだけお金をかけてもこのクオリティには届かないと思うけど。」
ひとしきりズコットを堪能した後、
「最近街の状況はどうなの?」
「ある程度安定してきたわ。既に国内トップクラスの大都市になっているから、多少増えても落ち着いて対応できるわね。政治的にもタチアナがよくやってくれてるし。」
「この街に安易に手を出す愚か者はもういませんよ。最近は取り入ろうとする連中を追い払うだけなので楽ですよ。」
「そういうことにサラッと対応できるタチアナはすごいわよ。」
「最近街の収益も更に上がってますよね。何があったんですか?」
「中級職の冒険者が増えたのよ。以前は標準職のレベル30ぐらいが限界だったけど、ドラクロアダンジョンはレベルを上げやすいし、他の街よりも優秀な装備を手に入れやすいから、今まででは考えられないスピードでレベル30になれるようになったの。だから積極的に転職をして中級職になるし、能力が上がるから1人あたりの稼ぎがどんどん良くなっているのよ。それを聞きつけて冒険者が更に集まるって流れができているわ。」
「人が増えればバカなことをする者もでてくるから、ディーンたちは忙しそうよ。」
「ディーンさんはいつも大変そうですよね。そう言えばウラドラ商会はどうなったんですか?そちらも忙しいでしょ。」
「最初は私が指揮したけど、今はキャナルに任せてるわ。だから私は解放されたわ。」
「キャナルって確か孤児院にいた娘よね。」
「そうそう。商売に興味あるって言うから色々教えたらメキメキ芽が出てきて、今じゃ私の右腕って感じに育ってくれたわ。」
「凄いですね。孤児から商会を任されるまで育つなんて。」
「でも気をつけた方がいいわよ。孤児院出身者はウィル様のことになると盲信的なところがあるから、ブレーキ役にはならないからね。」
「ミル、言うのが遅いよ。もうウィル様と暴走した後よ。」
「今度は何をやらかしたんですか?」
「もの凄くまともに熱心に商売をしたのよ。ウィル様と協力して。」
「あちゃ~、どこまでやっちゃったの?」
「今じゃ、4ヶ国を股にかける巨大商会に成長しつつあるわ。ロンム王国に本拠を置いて、カンロ連合王国、フィガロ王国、エール王国との交易を熱心にやってるわ。
ウィル様の用意した船とディーンが手配してくれた護衛のおかげで安全に速く、大量の荷物を運べるから、運送コストで他の商会に大きく差をつけているの。ダンジョンの中町で活躍の場が無くて燻っていた職業の『船長』とか『運び屋』なんかが参加しているから、差は広がる一方よ。」
「他の商人からのやっかみが凄いんじゃない?」
「そうでもないのよ。
ロンム王国では新国王と懇意の商会として有名だから、誰も手を出してこないわ。
フィガロ王国では商売よりも復興支援をしている感じだから、感謝されても恨まれることはないし。
カンロ連合王国でもオンドル商会が仕入れる額が大幅に減ったから、その分を埋めてくれているウラドラ商会の評判は悪くないの。
エール王国でも商人の街コーナーに支店を構えて順調に商売しているわ。領主様にもウィル様が話を通しているから、最初から友好的な関係よ。」
「あっという間に世界規模の商会が出来上がるってあり得ないわね。」
「ウィル様以外には考えられないです。」
「おかげで収支は真っ黒。今は利益をフィガロ王国復興に回しているけど、この先どこまでいくのか恐ろしいわ。」
「人材は足りてるの?」
「そこがネックね。幹部はウィリアムの住人で構成して、他は現地採用をしているわ。おかげで変なのも混じってくるから、身元チェックは日々行ってるわ。だいたい使えそうな人材は他の商会の回し者だったりするのよね。」
「ウィル様の影響力って既に凄まじいことになってない?」
「小国の王は遥かに超える影響力を持ってらっしゃいます。もしかしたら5大国の王並の影響力かもしれません。」
「だよね~。」
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