ミライ侯爵
「いったい何がおきているんだ!?
誰かマシな報告はできんのか!!」
ミライ侯爵は並ぶ部下を叱責する。
だが誰も口を開かない。
当然である。
事実を報告したのに一方的に叱責されるのだ。
オンドル商会が経営危機、主力の貿易が大赤字で立ち行かない。
街の冒険者から大量のドロップアイテムの持ち込みが続き、類を見ない値崩れがおきて、冒険者が街を出ている。
残っている冒険者がいるのにお金を一切使わない。
すべて事実である。
だが誰にも理由がわからない。
もちろんミライ侯爵も理由がわからない。だから、そのイライラをぶつけているだけなのだ。
「報告はもういい!現状を改善するための対策は無いのか!」
やはり沈黙、、、、、
「役立たずたちが!
よし、冒険者ギルドのギルドマスターを呼べ。ワシ自ら話をする。」
そして、冒険者ギルドのギルドマスターが呼び出された。
ギルドマスターの見た目はは中年小太りのおじさん。脂汗を拭きながら、ミライ侯爵の追求を受けている。
「よく来た。お前を呼び出した理由はわかるな。」
「何の件でございますか?」
「そんなこともわからんのか!
フン、そんなだから冒険者たちに出て行かれるんだ!
冒険者たちを呼び戻せ!」
「も、申し訳ございません。そ、そのようなことはできません。命令する権限がございません。」
「ならダンジョンのアイテムの値段を元に戻せばいいだろう!そうすれば戻ってくる!」
「む、無茶です。支部が破綻します。お金が足りません。」
「ならば、残っている冒険者に街で金を使わせろ。それだけ稼いでいるならお金を持っているだろう。」
「そ、そんな、、、どこでお金を使うかを強制するなんて、できるはずございません。」
「できない、できないと連呼をするな!自らの無能をそんなに晒したいのか!」
「ひぃっ、、私はただ、正直にお応えしただけでございます。」
「もういい!この無能をさっさと帰らせろ!」
部下に指示して、ギルドマスターを帰らせた。
次にオンドル商会の会頭を呼び出した。
でっぷりとしたおじさんだ。体型に似合わず顔色は悪い。その原因が経営不振なのか、ミライ侯爵の呼び出しなのかはわからない。
「よく来た。お前には期待していたのだが見当違いだったようだな。」
「ご期待に添えず申し訳ございません。」
「なぜこんな失態を晒したんだ?もう少しできる男だと思っていたんだがな。」
「重ねてお詫び申し上げます。自らの不明を恥じるばかりです。」
「フン。まぁいい。立て直しの目処は立っているのか?」
「一度事業を縮小し、再起を計りたいと考えております。」
「オンドル商会が規模を縮小すれば、我が街の税収が落ちるではないか!お前の商売を邪魔した相手を叩き潰せばいいではないか!何を弱気になっている!」
「相手が悪過ぎます。一介の商人が戦える相手ではございません。」
「なに!!
貴様!相手の正体がわかっているのか!?」
「おそらく、、、ですが。」
「誰だ?教えろ!」
「ウィリアム王子です。」
「なんだと!?証拠はあるのか!」
「証拠はございませんが、そう考えるに至った根拠はございます。」
「聞かせろ!」
「はっ、仰せのままに。
私も王都でされるがままに指を咥えていた訳ではございません。色々と手を打ちました。ですが私の策はすべて防がれてしまいました。それができるのはウィリアム王子だけです。」
「もっと詳しく聞かせろ!」
「まず、格安に輸入をできたのは軍船を利用して演習などの名目で行っているのでしょう。だから輸送費無しでカンロ連合王国の品を手に入れられたのです。
それだけではございません。
ごろつきを雇っても返り討ちにあったのも、本職の軍人なら当然です。
それにライラ王女様の権力で潰して頂こうとしても、逆に防がれてしまいました。
軍を自由に動かせて、ライラ王女様並の権力を持っている人物。それはウィリアム王子しかあり得ません。」
「・・・確かに筋は通る。
・・・しかしそんなことをウィリアム王子がやるか?」
「ウィリアム王子のイメージとは違いますが、他に条件に合う人物はおりません。」
「お前の考えはわかった。馬車を用意しろ。王都へ行く準備をしろ!」
ミライ侯爵は王都に向けて馬車を出す。
ウィリアム王子が主犯かどうかはわからない。だが、深く関係しているのは間違い無いだろう。王都で決戦がある、という予感はしている。
自身の孫を王にできるか、一族全て滅亡するか、そのどちらかしかない。
ミライ侯爵は決意とともに自領を出た。
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